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番外編 前世の物語

*エステルの前世の夫の物語です(*^-^*)。好みが分かれると思いますので、苦手かもと思ったら回避推奨です。


*千歳が前世のエステルの名前です。



雄介は病院の白い天井に目を向けた。


彼の痩せこけた腕は多くの管に繋がり、枕元の機械が時折耳障りな音を立てる。


(もう長くないな……)


自分の寿命が尽きる瞬間を想像して、ようやく解放されるという安堵と、後に残していく妻の千歳の行く末への不安を覚える。


矛盾する二つの感情にふと苦笑すると、小さなノックの音が聞こえて、たった今頭に思い描いたばかりの千歳が雄介の着替えを持って現れた。


「あなた、目を覚ましたのね。良かったわ。看護師さんを呼んでくるわね」


目尻を和らげる千歳に雄介が微かに首を横に振った。


「いや、それより……傍に居てほしい」


掠れた声で告げると千歳は訝しげな表情をしながらも、枕元の近くに椅子を運んでそこにちょこんと腰をかけた。


小柄な彼女のそういった仕草はいつも小動物を思い起こさせる。雄介の頬が緩んだ。


「あなた……なんですの?」


千歳とは見合い結婚だったが、喧嘩をしたこともない平穏な夫婦関係だったと思う。


(……というより、夫婦ではなかったから熱い激情を含む喧嘩も起こらなかったのか?)


雄介は自分の身勝手な結婚に彼女の生涯を巻き込んでしまったことに罪悪感を覚えていた。


しかし、それを口に出そうとすると千歳はいつも穏やかな笑顔を浮かべた。


『あなたと結婚できて、私は幸せだったわ』


そんな彼女の優しさに甘えていたのは自分だったと死ぬ間際になって痛感する。


謝罪したかった。


千歳のことを妻として愛していたと死ぬ前に伝えたい。


しかし、本音を言ってしまうと彼女に何か起こってしまうかもしれない。


(……迷信なんて信じる人間じゃなかっただろう)


我ながら呆れてしまう。


千歳の穏やかな笑顔に救われた人生だった。


そして、千歳とは正反対だった前妻の暁美あけみのことを思い出す。


暁美との恋は激しく……苦しいものだった。


***


日本は戦後十数年。


経済は急速に復興し消費生活も活性化した。戦後の混乱の中、巧みに機会を捉えて成り上がる人間もいた時代だ。


暁美の父親、工藤もそんな人物だった。戦後、事業を立ち上げ成功した工藤は空気のいい高原に壮大な屋敷を構え、妻と一人娘の三人で暮らしていた。


成金、守銭奴などと中傷されることもあったが、暁美の父親は戦争で孤児となった子供たちを何人も引き取り、自邸の使用人として育てるという慈善も行っていた。


雄介もそんな風に救われた孤児の一人だった。


幼い頃戦争で家族を亡くし、工藤に引き取られた雄介は二十歳になっていた。


雄介は工藤の秘書の一人として抜擢されたが、実際のビジネス関係を担当する立派な秘書は別にいる。雄介は工藤の雑用担当、いや、より正確に言うと工藤の妻や娘の細々した要望を叶える役割を押しつけられていた。


工藤の娘の暁美は当時十六歳。大人びた容貌に若干高慢な要素はあったが、とびきりの美女であったことは間違いない。また、生まれつき病弱で結核を患い二十歳まで生きるのは無理だろうと医師から宣告されていた。当時、結核は不治の病だったのだ。


まだ若い雄介がそんな彼女に庇護欲を搔き立てられ、恋心に繋がる憧れを抱いたとしても不思議ではない。


そして、雄介の精悍な顔立ちや病弱な彼女を常に気遣ってくれる優しさに暁美も惹かれていた。


彼女の両親はどうせ長くない命なら、と彼女の言うことは何でも叶える覚悟でいた。


だから、ひっそりと初恋を育んだ二人が結婚したいと言った時にも、両親は反対しなかった。ただ、唯一の条件は雄介が婿養子に入ることだったが身よりのない雄介には何の問題もない。


身内だけでひっそりと結婚式を挙げた雄介と暁美は幸せの絶頂にいた。


密かに恋焦がれていた暁美に好意を持たれていたと分かった時、雄介は天にも昇る心地であった。


数年後、暁美が亡くなるまで二人は激しい恋の炎を燃やし続けた。


しかし、暁美は異常に嫉妬深く独占欲が強かった。


雄介が他の女と話をしているだけで許せない。たとえそれが自分の母親であっても。


そして、彼女は自分が死んだ後も一生涯雄介を束縛するつもりだった。


死ぬ前に暁美は繰り返した。


「私が死んだ後も、絶対に、絶対に妻は私だけよ!再婚なんてしたら呪い殺してやるから」


そう言う時の彼女はスーッと真顔になり幽鬼のように見える。雄介の背中を冷や汗が伝った。


「まさか。俺の妻は暁美だけだ。絶対に再婚なんてしない」


雄介は真剣にそう思っていた。こんなに激しく恋することはもう一生ないという確信があった。


「絶対!絶対によ!もし、再婚なんてしたら相手の女を祟ってやる!呪い殺してやるからね!」

「俺は再婚しないから大丈夫だ。無用の心配だよ」


優しく微笑んで、彼女の頬を撫でる。


「……絶対よ。その女を絶対呪い殺してやるから……」


そう言いながら大量の血を吐いて暁美は死んだ。


***


後に残された雄介は、胸にポッカリと穴が開いたような空虚を抱えたまま生き続けなければならなった。


周囲が心配して再婚を勧めても頑として暁美のことを想い続け二十年が経過した。


暁美の父の工藤は、暁美の二十三回忌に参列した雄介に「すまないな……」と肩に手を置いた。


「ここまで思われて暁美も本望だろう。お前も再婚を考えたらどうだ?」

「いえ、俺は再婚はしないと暁美さんに約束したので・・・」

「でも、お前ももう四十過ぎだ。一人で老後を過ごすのは寂しいぞ」


雄介は現在も工藤の秘書として働いている。二十年以上も前に亡くなった娘に操を立て、恋人も作らず遊ぶこともしない雄介を工藤は真剣に心配していた。


「実は知り合いの娘さんなんだが……困った状況にあるらしい。助けると思って会ってみないか?市役所にお勤めの真面目なお嬢さんらしいぞ。嫌だったら断ればいい」


気が進まない雄介だったが、上司に強引に見合いを設定されてはすっぽかす訳にもいかない。


仕方なく休日に窮屈なスーツを着て、ホテルのラウンジに足を運んだ。


そこで紹介されたのが千歳だった。


千歳は三十二歳だと聞いていたが、見た目はそれよりもずっと若く見える。


リスのようなくりくりした瞳と大人しそうな落ち着いた仕草に好感が持てた。


二人きりにされた後「初めまして」と自己紹介から始めた会話は思いがけなく楽しくて、雄介は久しぶりに胸が弾んだ。


彼女は真面目で努力家らしい。女性が働くのが珍しい時代に市役所での仕事を十年以上続けているという。


弟が結婚することになり、家を出たいのだが弟が一人暮らしを許してくれない、と困ったように首を傾げた。


「普通に考えて、小姑が家に居たら嫌でしょう?だから、家を出て一人で暮らすって言ってもどうしても許してもらえなくて……」


一人暮らしで働く女性がまだ珍しかった時代のことだ。


世間体もあったのだろう。


だから、一生懸命お見合いをしているのだが、なかなか成果に結びつかない、と仕事のことを話すように彼女は語った。


「男性が結婚したいと思う女性になるにはどうしたらいいですかねぇ。やっぱりお色気でしょうか?」


真面目な顔で雄介に尋ねる千歳に、彼は思わず噴き出してしまった。


「いや……千歳さんは普通の男だったら十分に結婚したいと思うくらい魅力的ですよ」


まんざらお世辞でもなく雄介が言うと、赤くなってはにかむ様子が可愛いと思った。


しかし、雄介には暁美がいる。裏切る訳にはいかないし、万が一千歳が呪われたら大変だ、などという非科学的なことを考えて、雄介は苦笑した。


「大変申し訳ありません。実は前妻との約束で……」


雄介は正直に自らの事情を説明した。女性の方から断ってくれた方がいいだろうと暗にこの話を断って欲しいと伝えたつもりだった。


しかし、千歳と別れた後も爽やかな気持ちが残り、足取りが軽くなった自分に気がついた雄介は『もし千歳と結婚したら……?』と想像してみた。


その日の夜、夢の中に悪鬼のような形相で怒り狂う暁美が現れた。


「絶対に!絶対に!再婚しないと誓ったくせに!相手の女を殺してやる!」


血まみれで泣き叫ぶ暁美。


「違う!再婚なんてしない!」


真夜中にハッと覚醒すると、汗びっしょりでゼエゼエ荒い息を吐いていた。


(再婚は……無理だな)


***


それなのに仲人から、是非話を進めて欲しいと千歳から連絡があったと聞き、雄介は驚いた。


下手に断ると彼女を傷つけてしまうかもしれない。


もう一度会って、彼女のせいではなく、あくまで自分の事情のために誰とも結婚は考えられないのだ、と説明した方がいいだろう。そんな事情があるのに見合いをした不誠実も謝罪しなくてはならない。


彼女との連絡は仲人を通してするのが決まりなので、連絡先を知らない。だが、仲人にはあまり詳しい事情を説明したくない。


(彼女に会うには……職場に直接行ってみるか?)


そう思った雄介は彼女の勤めている市役所に業務受付時間が終わる頃に行ってみた。


待合室のベンチに座ると、複数ある窓口の一つに座る千歳の様子が良く見えた。


背筋を真っ直ぐに伸ばして、窓口で説明する彼女は誰に対しても笑顔で丁寧に対応している。その横顔は真面目で誠実だ。


中には口汚く文句を言う市民もいるが、彼女は辛抱強く話を聞いてひたすら頭を下げる。それでも客が帰る時には笑顔で「ありがとうございました」と深く頭を下げる千歳は嫌な顔や疲れた顔一つ見せない。


(我慢強い……というより芯が強いんだな)


感心して眺めていた時、待合室に目を向けた千歳とバチっと目が合った。


しまった、と思っていると、千歳はメモに何かを書いている。


「お客様。お待たせしました。こちらにご用意できましたので二番窓口までお越しください」


爽やかな笑顔で雄介に向かってそう呼びかける。


「お待たせして申し訳ありませんでした」


恐る恐る窓口に行った雄介に、千歳はメモを渡して微笑みながら頭を下げた。


雄介は千歳のお辞儀も綺麗だなと思った。


渡されたメモを開くと近くの喫茶店の簡単な地図と『あと十五分ほどで仕事が終わるので、ここで待っていて頂けますか?』と達筆な文字で書いてある。


指示通りに喫茶店で待っていると十五分も経たないうちに息を切らした千歳が現れた。


「はぁ、お待たせして申し訳ありません」


頭を下げながら向かいの席に座る千歳。


「いえ、こちらこそ事前に連絡もせずにいきなり来てしまってすみません。走ってくることなかったのに……」

「お待たせするのが申し訳なくて……。あ、すみません。アイスコーヒーを下さい」


水を持って来たウェイトレスに注文を済ませると、千歳は息を整えながら水を飲み干した。


「それで、今日はどんな……?」


首を傾げる千歳に雄介はもう一度自分の事情を詳しく説明し、今度はハッキリと千歳の方から断って欲しいとお願いした。


「前妻のことが忘れられないのに見合いをした俺が不誠実でした。俺は相手が誰であろうと再婚するつもりがないんです。本当に申し訳ありません。だから、君の方から見合いを断ってくれませんか?君はとても素敵な女性だから喜んで結婚したいという男は沢山いると思います」


心の底から謝罪して、深く頭を下げた。


たっぷり三十秒は頭を下げた後、顔を上げると千歳の両眼からポロポロと涙が溢れていた。


雄介はぎょっとした。周囲の客も二人を好奇心丸出しで見つめている。


(ま、マズイ……)


「本当に申し訳ありません。結婚する気もないのに見合いなんて、まったく酷い話だ。君が怒るのも無理はない。君の気のすむように何発でも殴って構わない……って、いや、そんなんじゃダメか……でも、金銭的な慰謝料は物凄く失礼な気がする……ど、どうしたら君の気が済むか教えてもらえないか?」


千歳も取り乱して恥ずかしいと思ったのだろう。赤い顔をしてハンカチで涙を拭くと、もう泣き止んでいる。


「いえ、工藤さんは全く悪くありません。ただ……」


彼女はしばらく俯いていたが、思い切ったように顔を上げた。


「実はお見合いはこれで八度目なんです!」

「はちどめ・・・?八?」

「はい。これまで七人の男性にお会いして全てお断りされました。もっと若い子がいいとか、私が地味だとか、女のくせに働くなんて生意気だとか……。特に、私は結婚後も仕事を続けたいと思っています。それが面白くない男性が多いようですね」


悲しげな表情を見て雄介は猛烈に腹が立ってきた。


「そいつらはバカですよ!結婚しても仕事をしてくれる女性なんて素晴らしいじゃないですか?それだけ仕事にやりがいを感じているのでしょう?それに、さっきの市役所での千歳さんの対応は素晴らしいものでした。仕事を辞めるなんて勿体ないですよ」


それを聞いた千歳の瞳が再び潤みだす。


「あ、ありがとうございます……そんな風に言って下さる方は初めてです。それに、私は持参金もありませんし、私なんかと結婚しても何の得もないんです。昔からモテませんし……」


「それはおかしい!君はとても魅力的だ。色も白いし肌もきれいだ。目もパッチリしていて愛らしいし、真っ直ぐでサラサラな黒髪が好ましいという男は多いだろう。なによりも姿勢がいい。仕草も落ち着いていて綺麗だ。さっき窓口で座っていた時も、俺はつい見惚れて……」


夢中になって言いかけて雄介は慌てて口を塞いだ。


千歳は顔だけでなく耳や首まで真っ赤になっている。


「あ、ああああありがとうございます」

「いや、すまない……つい……その……」


思春期カップルのように照れる二人。


「お待たせしました~」


その時アイスコーヒーが届き、気まずさが多少緩和された。


雄介はコホンと咳払いした。


「だから、千歳さんはとても魅力的なことは俺が保証する。君には何の問題もない。俺が問題アリ物件なんだ。だから、君の方から断ってもらって……」


そう言いかけると千歳はブルブルと首を振った。


「私はずっと断られ通しで仲人さんからも叱られています。私の方からお断りなんてすると仲人さんからも弟からも『贅沢言うな!』と叱られます。ですから、工藤さんの方からお断りして頂かないと……」


上目遣いでハムスターのようにつぶらな瞳に見つめられると雄介は弱い。


「いや。でも俺から断るなんて……」


自分の心の中に『断りたくない』という気持ちが芽生えていることに雄介は驚いた。


「あの……私は工藤さんが奥様を今でも心から愛していらっしゃることを理解しています。それをお邪魔するつもりはありません。私はこれまでお付き合いした男性もおらず、どうしたら男性に好意を持って頂けるのかが分かりません。工藤さんは少なくとも私に生理的嫌悪感を覚えたり、一緒に居るのが嫌だと思ったりしている訳ではないですよね?」


「もちろん!君と話をしているのは楽しいと思う。生理的嫌悪なんて感じるはずがない!」


「……でしたら……あの、結婚してみませんか?私は工藤さんが奥様を想う気持ちを決して邪魔しません。それに……どうやら、仲人さんたちは無理やりにでも工藤さんを結婚させようと、私の後も沢山の女性を紹介する準備をしているそうですよ」


それを聞いて雄介は『やっぱり……』と暗澹たる思いになった。


雄介の舅で上司でもある工藤社長は、何故か雄介を結婚させることに力を入れ始めた。千歳との見合いのことも根掘り葉掘り聞いてくるし、『もし断ったら次は~』などと鼻歌まじりに言っている。


次々に見合いに行かされる自分を想像してゾッとした。


確かに四十過ぎて独身の男は何か問題がある、という偏見がその頃の日本社会には存在した。


深く溜息をついて顔を上げると、不安そうに彼の顔を見つめる千歳と目が合った。


「ごめんなさいっ!今のは忘れて下さい!大変失礼なことを申し上げました。奥様にも申し訳ないです!ただ、あの、もし本当に結婚する気がないのであれば、強く仲人さんにそれをお伝えした方がいいと思いますっ」


真っ赤な顔で涙目になっている千歳を見て『やっぱり可愛いな』と雄介は思った。


「いや、もし、まだ有効だったらその話に乗りたい。結婚しよう。……ただ、俺は君を女性として幸せには出来ないよ?」


戸籍上の結婚はしても実態の伴わない夫婦であったなら暁美は許してくれるかもしれない。


「女として愛してもらおうなんておこがましいことは全く、これっぽっちも考えていません!ただ……その、私には居場所がないので、居場所を作って下さる方がいれば……すみません、本当に打算的ですね、私……。でも、もちろん、工藤さんが素敵な方だなとは思ったんですよ」


落ち込む千歳に雄介は微笑みかけた。


「俺が君の居場所を作るよ。生涯君が困らないようにしよう。ただ、俺が妻の墓参りに行くのを許して欲しい。一人で行きたいんだ」


墓参りで暁美に弁明しよう。千歳との結婚はあくまで慈善事業のようなもので、彼女のことは妹としか思っていないと。妻は生涯暁美だけだと誓えば……千歳は無事でいられるかもしれない。


「それは全く問題ありません。大変有難い話です。どうしたらいいかと本当に途方にくれていました。自分勝手なことばかり言って本当に申し訳ありません!」


「自分勝手なのは俺の方だ。じゃ、そういうことで。宜しく、奥さん?」


そう言って雄介は千歳に握手を求めた。


*****


二人は結婚式を挙げないことにした。


雄介は千歳に謝った。だが、花嫁衣裳の千歳が隣に並んだだけで暁美の怒りの形相が想像できる。


呪い殺すなんて迷信だと分かっている。


それでも万が一、ほんの少しでも千歳に禍が降りかかったら嫌だ。


たまにどうしても触れたくなる瞬間があったが、一般常識内で仲の良い妹に対するスキンシップの域を超えるものはなかった。


千歳はいつも穏やかに微笑んで隣に居てくれる。


そんな彼女に支えられた一生だった。


男女の関係はなかったが、彼女のおかげで日々の穏やかな幸せを噛みしめることが出来る人生だったと思う。


(俺は千歳に酷いことをした。死んだら地獄行きだろう。君は何一つ悪いことをしていない。俺の人生に彩りをくれた。俺を幸せにしてくれた。それなのに、俺は君に何もあげられなかった。子供も与えてあげられなかった。千歳。どうか君はまた人間に生まれ変わって、今度こそ男女として愛し愛される豊かな一生を送って欲しい。子供好きな君が満足できるくらいの子沢山に恵まれて欲しい)


千歳の頬を撫でながら雄介は微笑んだ。


「ありがとう……千歳。君は俺の恩人だ」


最後まで千歳に感謝しながら雄介は息を引き取った。


目を閉じる前にボロボロ泣きじゃくる千歳の顔が見えた。


こんな俺との別れを悲しんでくれるんだな……愛しい千歳。ありがとう。


どうか幸せに。

*次回はココとミアの学院生活の話を投稿する予定です(*^-^*)

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