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セシル

*本日四話目です!


ジョゼフとセシルが並んで会場の方に近づいてくる。


セシルは顔を真っ赤にして怒っているようだ。ジョセフを睨みつけながら、ふくれっ面で歩いている。


エステルとフレデリックが出迎えて挨拶すると、セシルはエステルを無視してフレデリックに駆け寄った。


「あ、あの、ご招待いただいて光栄です。初めまして!フレデリック様でいらっしゃいますよね?」


と長い睫毛をパチパチと高速で瞬きながら、馴れ馴れしくフレデリックの胸や腕に触れるセシル。


(いきなり名前呼び!?しかもベタベタと触って・・・この子の馴れ馴れしさは今に始まったことじゃないけど)


昔、ロランにも同じように近づいていたセシルを思い出すが、その時とは違うズキンという胸の痛みを感じてエステルは戸惑った。


「ずっとお会いしたいと思っていました。ご相談したいことがあるんです。ぜひ今度二人で会って頂けませんか?お茶でも飲みながらご相談させて下さい」


上目遣いで迫るセシル。彼女の手はべったりとフレデリックの腕と胸にくっついている。


「相談ごとってなんだい?」


と言うフレデリックの眩しすぎる美貌に見惚れてセシルの顔が真っ赤になった。


「え・・・あの、ここでは言えません」


そう言って、セシルはチラリと勝ち誇るような顔をエステルに向けた。


エステルは思わず唇を噛む。



(フレデリックもセシルに奪われてしまうの?!そんなの嫌!!!止めて!彼に触らないで!彼は・・・・彼は・・・私の・・・)



その時フレデリックの冷たい声が聞こえてきた。


「へぇ、でも、僕の大切な婚約者にちゃんと挨拶もできないような礼儀知らずとは話もしたくないね。君、臭いよ。香水つけすぎ。鼻が曲がりそうだ」


フレデリックはセシルに触られた胸や腕を汚いものでも触ったかのように手ではらっている。


「え・・なに・・・?なんの冗談・・・?」


セシルの声は震えているがフレデリックは気にする素振りも見せない。


「それに馴れ馴れしく触らないでもらえるか?気持ち悪い」


そう言って彼はエステルを抱き寄せた。


「僕はエステルしか目に入らない。彼女のためなら喜んで何でもしよう。しかし、君は・・・」


呆然とするセシルにフレデリックは


「まったく魅力がない。そばに寄らないでほしい」


と追い打ちをかけた。


「ちょ、ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!!」


セシルが大声で叫び、同窓会の参加者が何事かと注目している。


「貴方がエステルなんかと一緒にいるのはこいつが王太女になるからでしょ!?じゃなかったらどうしてそんなおばさんと!?」


エステルと同じ年のセシルが叫んだ。


「・・・僕は王家とか権力とかどうでもいい。僕が欲しいのはエステルだけだ。年齢なんて関係ない。彼女がたとえ平民だったとしても、どんな身分でどんな境遇にあったとしても、僕はエステルしか選ばない」


「な、ななによ!なんなのよ!この世界は全部おかしいのよ!あんたなんか悪役令嬢のくせに!」


セシルが何か訳の分からないことをエステルに向かって叫んだ。その不穏な雰囲気に周囲が不安に陥る。


「だってズルい!悪役令嬢は怠惰で男好きで遊ぶことしか考えてなくて、エロい体で男とヤリまくってて、ロランだけじゃなくてクラスメートからも女王からも超嫌われてるはずなのよ!」



「「「「「「「は?」」」」」」」



その場にいた全員の声が揃った。みんなが呆然と見守る中セシルが喚き続ける。


「婚約破棄だって女王が支持してくれるはずだったし、クラスメートからも祝福されて結婚するはずだったのに!」


セシルが子供のように地団太を踏み始めた。


「攻略キャラのジョゼフだって何故かあんたのことを気に入ってるし!犬猿の仲のはずでしょ!?あんたが虐待するはずのダニエルともうまくやってるのはなんでよ?!フ、フレデリックだって・・・フレデリックがあんたに襲われて女にトラウマができたところを私が癒してあげるはずだったのよ!」


顔を真っ赤にして喚きながら地団太を踏む二十四歳。


「しかも!あんたが優秀過ぎて、ロランが劣等感で変なナルシストになっちゃったのよ!本当はあんたが反面教師になって『あんな風になっちゃいけない』ってロランが奮起して超優秀な王太子になるはずだったのに!なんてったって最強キャラなんだから!魔法だってシェイプシフターで百年に一人の逸材って言われてたの!それで女王に喜ばれて素直で可愛い私と幸せになるはずだったの!全部ぶち壊したのはあんたよ!!!全部あんたのせいよ!ズルいわよ!なんであんたばっかり。ちょっとは私にも幸せを分けなさいよ!!!」


エステルに向かってそう叫んだセシルに


「なに訳の分からないことを言ってんの?あんたバカじゃないの?!エステル様はね、常に努力して周囲の人を助けてきたわ。努力しないあんたが一番悪いんでしょ!あんたのせいで婚約破棄されて国外追放なんて酷い目に遭ったのに恨み言一つ言わないエステル様と自分みたいな怠け者を比べるんじゃないわよ!!!」


とルイーズが吠え、それに対して周囲がパチパチと拍手を送った。


セシルはブルブルと全身を震わせて


「なによ!あんただって悪役令嬢の取巻きのくせに!エステルが破滅したら見捨ててさっさと逃げ出したのは誰よ!?」


と叫ぶ。


「おい!なに意味不明なことを言ってるんだ!?おかしいぞ、お前!」


とジョゼフがセシルを宥めるために近づいた。


それを振り払うように


「今に見てなさいよ!絶対にあんたを不幸にしてやるから!!!」


そう捨て台詞を吐いてセシルは走り去




・・・・ろうとした。




しかし、屈強なラファイエット公爵家の騎士達がそれを阻みセシルを捕える。


「な、なによ!?あんたたち!貴族の令嬢に対する無礼は許されないわよ!!!」


エラそうに叫ぶセシルの前にフレデリックがすっと立った。


「・・・君は頭が悪いね」


「な、なによ!?あんた頭おかしいんじゃないの!?放しなさいよ!私にこんなことしてただで済むと思ってるの!?」


「その台詞をそっくりそのままお返ししよう。君は僕の婚約者が正式に女王陛下の養女になったことを知っているね。街でも大きな噂になっている。耳に届いていないとは言わせない」


「そ、そりゃ、聞いたわよ。それがどうしたのよ!?」


「ああ、君は本当に頭が悪い。つまり、僕の婚約者はエステル・ド・ラ・ヴァリエール王女殿下でいらっしゃる。王族への罵詈雑言には不敬罪が適用されるんだ。立派な犯罪行為なんだよ。そして、数多くの証人がいる。君はもう言い逃れできないね」


それを聞いたセシルの顔が紙のように真っ白になった。


「・・・え、あ・・・と、ちょっと・・ちょっと待って。ねぇ、なに言ってんの。ははっ。あんなの冗談に決まって・・・ねぇ、みんなも聞いてたでしょ?冗談よねぇ。そんな友達同士の内輪の冗談で逮捕とか・・・犯罪とか・・・あり得ないでしょ・・・・」


弱々しく言葉を続けるセシルを無視してフレデリックは


「連れて行け!」


と騎士達に指示を出した。


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