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ルイーズ

*本日三話目です!


徐々に同窓会に懐かしい顔ぶれが集まりだした。


笑い声が響く和やかな雰囲気で、みんな楽し気に軽食をつまみながら親交を深めている。


そんな様子を嬉しそうに眺めていたエステルに


「エステルさまっっっ!!!!!」


とものすごい勢いで飛びついてきたのはルイーズ・ド・コリニー伯爵令嬢だ。


「お会いしたかったですっ!!!ずっとずっとずっと心配しておりましたっ!!!ご無事で良かったっ!!!」


目に涙を一杯に溜めてエステルの首にしがみつくルイーズの背中をポンポン叩き


「ルイーズさま、ありがとう。卒業パーティの時も私を庇って下さったのを嬉しく思っていました」


そう言った途端にルイーズの瞳からボロボロと涙がこぼれ落ちた。


「あの!あの!大バカ野郎のせいで!!!あのロランとかいう元王太子を私は一生許しません!!!廃太子になったのもザマーミロって感じですわ!!!」


(昔からルイーズはロランを嫌っていたからなぁ)


何と言ったらいいか分からず曖昧に微笑みながらエステルは、ルイーズの頭を軽くぽんぽんと撫でた。


ようやく落ち着いたルイーズが我に返ったように周囲を見回すと、ココとミアが目をまん丸くしてルイーズを見上げていた。


「・・・・・」


「「・・・・・」」


言葉もなく、ただじっと互いを見つめ合うルイーズと双子。


「あ、あの。この子たちは私の娘なの。ココとミアというのよ」


と紹介すると


「えええええ!?も、もうラファイエット公爵とのお子さんがいらっしゃるんですか!?」


とルイーズが奇声を発した。


そして不躾なことを言ってしまったと反省したのだろう、慌ててココとミアに向かって


「ココさま、ミアさま、初めまして。ルイーズ・ド・コリニーと申します。お会いできて嬉しいですわ」


と丁寧にお辞儀をした。


ココとミアはようやく笑顔を見せて、ルイーズに可愛らしいお辞儀を返す。


(あ・・・そうか、ココとミアのプラチナブロンド。顔も似ているからフレデリックの子供だと勘違いされたのかな・・・)


「えっと、フレデリックの子供じゃなくて・・・」


と説明しかけたところでフレデリックがスッと会話に入ってきた。さりげなくエステルの肩を抱いて自己紹介する。


「僕がエステルの婚約者、フレデリック・ラファイエットです」


ルイーズが一瞬言葉を失ってフレデリックの美貌に見惚れたことが分かった。


「え?あ?そ、そうなんですね。エステルさま、素敵な婚約者がいらして、お幸せそうで良かったです~。ほほほ~」


と言いながらルイーズは離れて行く。


「色々と説明が面倒くさいからいいんじゃない?どうせ、結婚したらココとミアは僕の娘になるんだし」


(・・・いいのか?それで?)


と思ったが、これまでに数々の修羅場を経たエステルは


(なんとかなるか~)


と遠い目をするのだった。


フレデリックは他の参加者にも『エステルの婚約者』ということを名乗って回る。


特に男性陣に自己紹介する時にはエステルの肩を抱き、顔を寄せ、親しさを最大限に強調する念の入れようだ。


「ね、ねぇ、フレデリック。私はモテないからそんなに心配しなくても大丈夫よ」


二人になった時に囁くとフレデリックは苦笑した。


「君は自分の魅力を分かっていない。僕が君の婚約者だと紹介した時にがっかりした顔をした男は結構いたよ。それに、僕は君より年下で頼りないと思われたくない。ここに居るのはみんなエステルと同じ年の男ばかりだから・・・負けられないんだ」


俯くフレデリックの姿が愛おしくてギュッと彼の手を握ると、驚いたように彼が顔を上げた。


ココとミアは人見知りせず物怖じしない。気がついたら参加者の中心に居座ってその場を盛り上げていた。


(でも、そろそろ大人だけの時間ね)


タイミングよくダフニーが姿を見せて、ココとミアは大きく手を振りながら退出していった。


愛らしい双子に癒されて、大人はみんなほっこりした気持ちになった。


エステルは懐かしいクラスメートとの交流を楽しんだ。参加者も大盛り上がりで、エステルは昔を懐かしく思い出す。


その様子を見守っていたフレデリックだったが、


「僕もそろそろ退散かな。君はゆっくりと同窓会を楽しんだらいい」


そう言った時、突然門扉の方で騒動が起こった。


「だから!!!私も招待されてるって言ってるでしょう!!!!!」


と叫ぶ甲高い女性の声が聞こえて、エステルは嫌な予感がした。


参加者のみんなが不安そうに顔を見合わせる。


同窓会の場所から門扉の方角を見ると、門のところで警護の騎士に止められている男爵令嬢のセシルの姿が見えた。


セシルは甲高い声でずっと喚いている。


ジョゼフが来て


「マジか・・・・。悪いがセシルは招待しなかったんだ。セシルが昔エステルにしたことを考えれば、招待してもらえると思う方がおかしいだろう?」


と説明した。


「でも・・・同窓会で自分だけ呼ばれなかったら、やっぱり哀しいわ。彼女も入れてあげたらどうかしら?」


というエステルの言葉にジョゼフとフレデリックは難しい顔をしたが、最終的に


「まぁ、確かに同窓会に呼ばなかった俺が悪かった。謝って連れて来るよ。それでいいか?フレデリック?」


とジョゼフが言うと、フレデリックが憮然としながらも頷いた。


「僕は退散するつもりだったけど、彼女が来るなら君の側にいてもいいかい?彼女がまた君を傷つけるんじゃないかと心配なんだ」


「大丈夫よ。だって、あれは私がたまたまロランの婚約者だったから起こったことで・・・」


「いや、違う。君が姿を消した後に一時期だけど君の悪評が広まったんだ。その出所でどころはあのセシルだと僕は疑っている。彼女は君に対して悪意を持っているよ」


フレデリックが眉間にしわを寄せて真剣に説くが、エステルは


「まさか・・・そんなこと・・・」


と信じられなかった。

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