同窓会
*本日二話目です!
*料理の雰囲気を味わって頂けるかしらと思い、写真をつけます。興味のない方は遠慮なく無視して下さい。また、あくまで素人の手作りなのでどうか優しい目で見て頂けると嬉しいです<m(__)m>。
王都にあるラファイエット公爵邸は広大な屋敷だ。敷地も広く幾つもの庭園がある。
公爵領にある城に比べたら大したことはないとフレデリックは言うが、それでも他の貴族のタウンハウスなどと比べたら大きな違いがある。
(私が育った屋敷よりも大きいわ。お父さま達がやっかんでラファイエット公爵家の悪口を言う理由が分かる気がする)
門扉から屋敷の間に大きな芝生のエリアがあり、そこで同窓会を開催することになった。
フレデリックは警備上の理由から公爵邸の奥深くにまで客を入れたくないし、入口に近い芝生のエリアなら騎士たちも警護がしやすい。
同窓会会場では朝から使用人がテントを張り、テーブルや椅子を並べている。
その日、エステルは朝早くから屋敷の厨房を借りて、参加者をもてなすための料理を作っていた。
公爵邸の庭師から朝摘みのイチゴを分けてもらったので、新鮮な生クリームを泡立ててイチゴのショートケーキを作る。
チョコレートのマッドケーキ。生クリームとカスタードのプロフィトロール。
様々な種類のカップケーキ、ビスケット、ショートブレッド。
塩気があるものも必要だろう。バゲットの上に潰したアボカドをたっぷり乗せ、こんがり焼き目を付けたハルミチーズと刻んだトマトを乗せる。
また、クリームチーズと胡桃を混ぜてベーグルに塗った後シナモンシュガーを軽く振りかけた。
種々のミニサンドイッチやカナッペも用意した。
フルーツプレートには、イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックカラント、チェリー、メロン、ブドウ、マンゴーと豪華なフルーツが山ほど載せられている。
それらを美しく盛り付けて後で会場に運ぶよう使用人にお願いした。
エステルは軽食の準備が終わった後、手早く身支度を整えた。
「今日はたくさんお客さんがくるのね?」
「ねぇねぇ、あたしたちも行っていい?」
ココもミアは興奮してエステルにまとわりつく。
「そうね。最初に皆さんにご挨拶しましょうね。その後は、またダフニーと一緒に待っていてくれる?」
エステルが忙しい時は侍女のダフニーが面倒を見てくれている。ダフニーは弟妹が多いらしく子供の世話も手慣れたもので、双子も彼女に懐いているのだ。
「ココ様、ミア様、また昨日の続きをしましょうね?」
「「は~い」」
楽しそうな会話に
「あら、何をしているの?」
とエステルが尋ねると、三人はニヤッと笑って
「内緒です」
「「ひみつ」」
という。
(なにかしら・・・?楽しそうなのはいいけど)
と思いながら赤いドレスに腕を通すエステル。
派手な髪色のせいで清楚な色のドレスが似合わないとエステルはずっと不満に思っているが、その分赤系のドレスは良く似合う。
今回のドレスは臙脂色で胸元が隠れている。袖の裾が少し広がった八分丈なので少し大人しい印象だ。
今日はフレデリックも主人として挨拶する予定で、更には『自分がエステルの婚約者だ』と参加者を牽制するつもりらしい。
(まったく・・・そんなこと必要ないのに。私はそんなにモテないから)
と思うのだが、フレデリックは心配性なのでしたいようにさせてあげようとエステルは考えている。
***
予定時間が近くなり、フレデリックがエステルたちを呼びに来た。
髪をアップにしてシンプルな髪飾りをつけたエステルを見てフレデリックは大きな溜息を吐いた。
「・・・エステル。きれいすぎる。もっと抑えられなかったのか?ジョゼフなんかに見せたくない」
「相変わらずお世辞がお上手ね」
クスクス笑うエステルに
「お世辞じゃない」
と耳元で囁くフレデリック。
少しかすれたセクシーな声にエステルの心臓は跳ね上がった。
そういうフレデリックも今日は準礼装のディレクターズスーツでビシッと決めている。姿勢が良いので立ち姿がとても美しい。サラサラのプラチナブロンドを緩く結んだフレデリックは今日も輝くように麗しかった。
「ココ、ミア。今日も可愛いぞ。ドレスも髪型もよく似合っている」
フレデリックに抱き上げられて双子はきゃーっと歓声をあげた。
二人も今日はお洒落をさせてもらっているので、褒められてとても嬉しそうだ。
一緒に会場まで歩いていると、仲の良い四人家族で歩いているような錯覚を覚える。
(フレデリックは私にとってもう家族のような存在なのかも)
そう思いながら彼の横顔をじっと見つめた。
彫りの深い鼻梁、形の良い顎から喉仏につながる男らしいラインについ見惚れてしまう。
会場に到着すると既にジョセフが待っていた。
「エステル・・・綺麗だ。言葉も出ないよ」
そう言ってジョセフは彼女の手をとって跪くとそっと手の甲に唇を寄せた。
「おい!彼女に触るな!」
とエステルを引き寄せるフレデリックに
「相変わらず猫の額より心が狭い」
とジョゼフは笑った。




