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鈍感力=殺傷力

*本日二度目の更新です!宜しくお願いします!


ロランは目をまん丸に見開いて、ふっと笑った。金髪碧眼の美青年の微笑みはかなりの破壊力がある。


「・・・エステルの言う通りだな。俺は傲慢で我儘で自己中の最低のナルシストだった。今考えると恥ずかしいよ。それに・・・俺のことを好きなわけじゃなかったのか・・・そうか・・・そうだったんだな」


そう呟きながら何故か意気消沈してズーンと肩を落とす。死力を尽くした戦いに敗れた兵士のような顔つきに暗い翳が差してロランはガックリと項垂れた。


「ようやく自分のことが分かるようになったのね!おめでとう!」


エステルは明るく言う。


「うっ・・・追い打ちか・・・殺傷力が半端ない・・・」


と呟き、ロランは頭を抱えたまま動かなくなった。


(・・・・・・・・・・・・・・?)


よく分からないながらも心配そうに見守るエステル。


しばらく待つと、ロランは毅然と顔を上げた。


「しかし・・俺の心は折れないっ!」


謎の雄叫びをあげるロラン。


(・・・辺境で何があったのかしら?)



そして、何事もなかったかのようにロランは会話を再開させた。


「お前は全然変わらないな。国外追放されて消息不明になったお前を母上は必死で探していたぞ」


「見つからないように偽名を使って生活していたのよ」


「苦労したんだろうな・・・」


ロランは辛そうに顔をゆがめて、今度はテーブルに額がつくくらい頭を下げた。


「本当に悪かった。すまないなんていう言葉では言い尽くせない。公爵令嬢が独りで生きていくのはさぞかし大変だったろうと思う」


「・・・いいのよ。私は国外追放してもらって良かったなと思ってるの。本当よ」


バッと顔をあげたロランの目はお月様のようにまん丸だった。


「本当か?!」


「ええ。私は今二人の子供を育てているの。とても幸せよ。あの時追放されなかったら子供たちには出会えなかった。ロランと結婚したくなかったし、王妃にだってなりたかった訳じゃない。婚約破棄されて私はとても嬉しかった。だから、ロランが心配する必要はないし、罪悪感を覚える必要もないわ」


アッサリしたエステルの言葉にロランは拍子抜けしたようだ。


同時に、どこか痛むかのような表情で「傷に塩が・・・」と呻いている。


「そ、そうか。婚約破棄して嬉しかった・・・のか。それにお子さんが・・・。号外にはラファイエット公爵と婚約したって書かれてたけど・・・今度はちゃんと好きな人と結ばれるんだな。うん・・・良かった。おめでとう」


といって悄然と俯いた。目が潤んでいるような気さえする。


(何をしょげることがあるのかしら・・・?)



そこにマットとサリーがロランに食事を運んできた。


ホカホカと湯気のたつ鍋焼きうどんを持って来てくれた二人に


(しばらく食べてない人には最適!さすがのチョイスね!)


とサムズアップをする。


ロランは自分の目の前に置かれた食事にいたく感動したらしい。


「こ、ここここんなご馳走を・・・かたじけない!」


と立ち上がって直角にお辞儀をした後、声を震わせながらフォークを手に取った。


この居酒屋の常連なら箸の使い方が分かっているが、初心者にはフォークを出すのがこの店の慣習だ。


目に涙をにじませながら、それでも品よく食事をするロラン。


うどんをフォークにクルクルと絡めて上品に食べられるなんてさすが王族だ!とエステルは変なところに感心していた。


(ロランは軍を逃げ出してこれからどうするつもりなのかしら?女王陛下の怒りは解ける?・・・無理かな?ああ、フレデリック様にも報告しないと)


脳内は色々な考えがグルグル巡って忙しなかったが、表面上は穏やかな笑みを浮かべるエステルに


「エマさん、今夜は彼を泊めてあげるの?」


とサリーが小声で問いかけた。


(ああ、そうだ。まさか追い出せないし。警護の騎士たちと一緒に寝てもらおう)


完食したロランは眠そうに瞬きをしている。


子供みたいな表情に


(こんな顔、昔は見たことなかったな)


としみじみとした気持ちになった。


昔グレていた孫が更生して戻ってきたら、こんな感じなんだろうか?


エステルは警護の騎士達が交代で眠る部屋にロランを案内して、一緒に寝かせてもらうようお願いした。


みんな疲れているのかロランに気づいたのは団長だけで、苦み走ったイケメンの顔に緊張が走る。


エステルが「大丈夫!」というように目配せすると、団長は何も言わずに頷いた。


マットとサリーは既に一緒に住んでいるそうで、二人で手をつないで帰っていく。


彼らを見送った後、エステルは急いで自分の部屋に戻った。もう明け方に近い。


(女王陛下とフレデリック様に急いで連絡をしないと。緊急連絡用の魔道具を使った方がいいわね)


高価なので普段は使わない便箋を取り出した。


ちなみに緊急連絡用の魔道具とは書いた手紙が、自動的に紙飛行機型になり飛んでいくというものである。


どこかの映画で見たことがあると言ってはいけない。


エステルは自室に戻ると早速二人に手紙を書き始めた。

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