モテ期
*本日二度目の更新です!
顔を赤くしたエステルに
「大丈夫か?顔が赤いぞ?」
とジョゼフが声を掛けた。
「だ、だだだだだいじょうぶ!ごめんなさい。ちょっと色んなことが起こり過ぎて混乱しちゃって・・・」
「そうだよなぁ。いきなり王太女になれって言われたら誰だって動揺するさ」
「フレデリック様は陛下のお気持ちが変わるよう説得して下さると・・・私は自分が王太女の重責に耐えられるとはとても思えなくて・・・」
「ああ、それでフレデリックは今日、女王陛下との話し合いに行っているんだ?」
「そうなんです。私が行くと絆されそうだからってお一人で・・・」
エステルは自分に王太女が務まるとは思えないが、お世話になった女王と王太后に泣いて頼まれたら否と言えるかどうか分からない。
『僕には泣き落としは効かないからね』
と笑って出かけていったフレデリックには感謝の気持ちしかない。
「ところで・・・」
とジョゼフが話を変えた。
「君が帰ってきたことを知って、学院時代のクラスで集まって同窓会をしようという話が出ているんだ。君と久しぶりに会いたいというクラスメートも多い。どうかな?」
それを聞いてエステルの胸は躍った。昔の友人達に会えるなんて諦めていたことだったから。
「嬉しい!私も久しぶりにみんなに会いたいわ」
「了解。じゃあ、俺が手配するから」
「ありがとう。あ・・・でも、フレデリック様の許可をまず得ないといけないので、ちょっと待って下さる?」
「なんで?君は彼の婚約者のふりをしただけだろう?彼の許可なんか必要ないよ」
同じ部屋には『絶対にエステルとジョゼフを二人きりにするな』という厳命を受けた侍女が控えている。
彼女にも聞かれていると思うと恥ずかしかったが、エステルはフレデリックに告白されたことを伝えた。
だから彼の気持ちを尊重して勝手な行動をしたくないと説明したのである。
それを聞いたジョゼフは愕然とした。
「いや、それはフレデリックがずるいな。そんな風に外堀を埋めてくるなんて。俺にもチャンスが欲しいと言っていたのを忘れた?」
と問われるとエステルは何と答えて良いのか分からない。
「えっと、あの、私は恋愛に疎くて・・・。その、フレデリック様にはとても良くして頂いて、ココとミアもお世話になってるし・・・」
たどたどしく説明するとジョゼフは苦笑した。
「君はフレデリックが好きなのかい?」
エステルの顔が赤く染まった。
(好きか嫌いかと聞かれたら・・・)
「はい。好きです。フレデリック様は私の気持ちに寄り添って下さって、とても感謝しています。ココとミアのことも大切にして下さっていますし・・・」
「でも、恋しているわけじゃない。だろ?君にとって一番大切な存在はココとミアだ。フレデリックは君の攻略法をよく分かってる・・・」
「恋、してないですか?」
戸惑うエステルにジョゼフは苦笑した。
「ところで、君は今この国で一番モテる女性になった自覚はあるかい?」
「は!?モテる?!私が?」
動揺するエステルを見てジョゼフはクスクス笑う。
(ああ、彼女は本当に可愛い。みすみすフレデリックに奪われてしまうのは悔しいな)
「君は元々魅力的なんだ。その上に未来の女王になるというおまけがついた。愚かで欲深い連中はそのおまけにも惹きつけられるだろうね。聞いた話だとものすごい数の恋文らしき手紙が届いているそうだよ。フレデリックが全部排除しているようだけどね」
「そうだったんですか。それは有難いです。そんな欲のために近づいてこられても困るだけなので・・・」
「それに君の元実家のリオンヌ公爵家からも、しつこくしつこく、そりゃもうしつこ~く連絡がきているそうだ」
「え!?お父さまたちから?・・・でも、私をずっと疎んじていらしたはずなのに。最後にお会いした時も怒っていたし・・・。本音を言うと、もし女王陛下の養女にして頂いた場合、一番嬉しいのは実家との縁が完全に切れることですわ」
「リオンヌ公爵もパスカルも野心家だからね」
「正直、もう放っておいて欲しいです。ダニエル以外の家族とは昔からうまくいっていませんでしたし・・・」
「フレデリックがリオンヌ公爵家からの連絡も断ち切っているそうだ」
「配慮して頂いて感謝してもしきれません」
「そうだね。フレデリックは君と双子を守るために一生懸命だ。ただ、まだ勝負は決まったわけじゃない。それを覚えておいてね」
ジョセフはエステルに笑いかけた。




