世界の色 そして、色術。
仮登録とはいえ、とりあえずリバティワーカーズへの登録はできた。
「一旦マリのとこ戻るか。」
色々とごちゃごちゃした登録だったし、自分の中で一つ整理をするように独り言を漏らす。
座り心地が良すぎて座りが悪いソファに無言の別れを告げ、落ち着かないほど綺麗な部屋から廊下に出る。
階段は…こっちか。さっき案内されて来た道をもど…
「おいコラァ!そこの阿呆!」
…ろうとしたら、強面でゴツい髭面のオッサンに絡まれた。
「新人いびりですか?こんなに堂々と建物内で…偉い人呼びますよ?」
内心ビビりながら、ハッタリでも冷静に対処する。お金とか持ってないんです。すみません。
俺の言葉を聞いて髭面のオッサンは、ポリポリと頭をかきながら大きくため息をつく。
「呼ばなくても来てんだよ…。オレはリルム支部の支部長だ。」
手には黒いリバープレート。白抜きの文字で、ゲイナーという名前の上に金文字で支部長と書いてある。
…あぁ。一番偉い人だった。
「支部長とは知らず、失礼しました。それで、この新人の阿呆に何の御用でしょうか。」
このオッサンが支部長なら、初手から罵倒されたのは納得がいかない。
それこそ、その失礼な言動はどういった意図があるのか聞かせてもらおうじゃないの。
「その返し、いい性格してんな。嫌いじゃないぜ。けど挨拶は後だ。ちょっと来い。」
そう言って支部長は、踵を返して歩き出す。
こちらの話も聞かずスタスタと歩く失礼なオッサン。俺は釈然としないまま、仕方なく支部長について行った。
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連れられて向かった先はリバティワーカーズ敷地内にある、屋外の広場…とは言っても、地面はそれなりに荒れている。
「ここはホーム内にある屋外修練場だ。リバーなら誰でも使えるから、今後必要ならお前も使うといい。」
支部長はそう言って俺に向き合う。
「ホーム…?」
「ここのリバーはみんな、このリルム支部のことをホームって呼んでる。誰が呼び始めたかは知らねぇけどな。長いだろ?リバティワーカーズって。」
なるほど。確かに長い。俺が学生なら、無駄に連発して文字数稼ぎに使いそうだ。
「さて本題だ。お前、色術使いこなせてないだろ。」
使いこなすも何も、使い方知らないっす。
「その…色術がどんなものなのかすら正直知らないです。」
それを聞いて、支部長はまた頭をポリポリと掻く。
「そのレベルか…わかった。俺が全部教えてやる。」
非常にありがたい…しかも支部長直々に。マリの説明じゃ絶対に習得できないからな。
「是非、よろしくお願いします。」
俺は支部長に色術のイロハを教えてもらうことになった。
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色術とは
○世界を構成する色(元素のようなもの)を使役し、流用した術のこと。
○色術には適性があり、色術自体を使えない人の方が割合が多い。
○使用の際に纏うオーラのようなものを纏色といい、使う色術によって色が異なる。
○源色術と特異色術の二種類に分類される。
ーーー源色術ーーー
一般的な色術。適性があるのは十人に一人ほど。
赤
火や熱を操る色術。攻撃特化色。
青
水や氷を操る色術。補助特化色。
緑
風や雷を操る色術。攻撃補助共に優秀。
ーーー特異色術ーーー
特異色術に適性があるのは、色術を使える人間の百人に一人とされている。
白
聖なる力とされているが詳しくは不明。
万能で、攻撃や回復など用途は様々。
黒
混合色と呼ばれ、黒特有の色術の他に、源色術全てを使えるが、効果は各源色術に少し劣る。どの色術を使っても纏色は黒。
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支部長の話をまとめるとこんな感じだ。
正直なところ、急に詰め込みすぎて理解度は高くない。
あらかた概要を話し終えた支部長が、
「んじゃ、お待ちかねの使い方だが」
待ってました。難しくないといいんだが。
「目を瞑って、深呼吸。そのまま、自分の周りに色が存在してるってのを、頭の中で意識しろ。意識できたら、その集中を保ったまま目を開けろ。」
思ったより簡単そうだ。
言われた通り、深呼吸して、目を瞑る。
自分の周囲に、色が存在する…それを無理やり自分の頭に認識させる。
そのまま、ふぅっと息を吐いてゆっくり目を開けてみる。するとそこには…
「うわっ、すげぇっ…!これが…!」
赤、青、緑、白、黒…
無数の色のついた光の粒のような物が、自分の周囲…いや、修練場全体に漂っている。
世界には、色が溢れていた。