ツウの能力
「では、まずステ板を両手で持ってみてください。」
リバティワーカーズリルム支部の一室。
俺はここでリバーの適正があるかの審査を受けていた。
「こう…でいいのかな?」
ステ板の両端を掴む。意外と重い。…なんか緊張するなぁ。
「そのまま、ステ板に意識を集中してみて下さい。数字が浮かび上がってきたら成功です。」
受付嬢のアズサさんに言われた通り、意識を集中すると、すぐに数字が浮かび上がってきた。
【50 40 150 100 1】
…わからん。どれが何で、高いのか低いのかも。
「はい、ありがとうございます!確認しますのでステ板をこちらへ。」
言われた通り、アズサさんに謎の数字の羅列が刻まれたプレートを渡す。すると、アズサさんの顔色がみるみると変わっていく。
「こ、これは…こんなの…!」
驚きを隠せていない様子だ。お決まりの異世界転移ボーナスでもあったのだろうか。ワクワクが止まらない。
「どうですか?適正、あります?数字だけ書いてあってよく分かんなくて。」
ちょっと誇らしげに聞いてみる。結果が楽しみだ。
するとアズサさんは、お待ちくださいと一言残し、慌ただしく部屋を出てどこかへ行ってしまった。
もうこれは間違い無いだろう。マリにもいい報告ができそうで良かった。
暫くして、アズサさんが部屋へ戻ってきた。
「すみません、お待たせしました。…では、数値の説明と結果をお伝えしますね。」
困惑した表情である。そうだろう、そうだろう。最強格の新人が現れたんだ。困惑して当然。
「まず数値の説明ですが、左から体力、力、俊敏性、色値、扱える色術の数、です。」
ふむふむ。
「一般的なリバーの数値が、体力150、力100、俊敏性80、色値20、色術1、くらいです。」
なるほどなるほど。…ん?つまり…
「ツウさんの基礎能力ですが、俊敏性150に加えて色値が100と異常に高いですが、体力50に力40なので…正直、俗に言う『紙耐久』です…。」
誇らしげだった数分前の俺を思い切り殴りたい。
「体力も力も一般人より低いレベルなので…上と掛け合った結果マリさんの紹介ということで、仮登録として扱うことになりました。」
「そうですか…ありがとうございます…。」
明らかにさっきとテンションが違う俺の言葉に居た堪れなくなったのか、
アズサさんはフォローを入れてくれる。
「で、でも!色値100って見たことない数字だし、実際に依頼をこなしてみて評価がガラッと変わることもありますから!基礎能力もまだ上がりますし!」
「はぁ…がんばります…。」
急に不安になってきた。モンスターと戦うこともあるだろうに、紙耐久とは…
俯く俺に、重い部屋の空気。そんな雰囲気を払うように、アズサさんが快活な声に戻って次の行程に話を進める。
「まぁ仮登録とはいえ、改めて!ようこそリバティワーカーズへ!次はこちらの『リバープレート』作成に入りますね!」
アズサさんは俺に、テーブルに残った一枚のプレートを渡してくる。
「先程と同じように、両手で持って意識を集中してみて下さい!プレートが、能力に応じたクラスの色に変わり、自動的にクラスが決まります!そちらはそのままツウさんがお持ちになって結構です!」
言われた通り、ステ板の時と同様、リバープレートなるものに意識を集中すると、俺のプレートの色が変わっていく。これは…金?
すると、アズサさんの顔色がみるみると変わっていく。
「こ、これは…こんなの…!」
驚きを隠せていない様子だ。全く同じリアクションをありがとう。今度は一体何だ。
「ツウさんのクラスは…ゴールド、です…。」
基礎能力は散々だったのになんか豪華そうだ。でもそんなことではもう騙されんぞ。
「く、クラスは…ブロンズ、シルバー、ゴールドと三段階あって、能力に応じてクラス分けされます。クラスが上がると受けられる依頼が増えますが、危険度も跳ね上がります。」
能力に応じろよ!
紙耐久だぞ!?ペラッペラだぞ!?
危険度跳ね上がんなよ!
「はい!これで終了となります!これからのツウさんのリバーとしての活躍をお祈りします!では!」
あれは思考を放棄した人の目だ。
…なんかチグハグでよくわかんないけど。
とりあえず登録できたし、結果報告と今後の予定とかを立てるために一旦マリのところに戻るか。
「とりあえず仕事に関しての不安はこれで解消…か?」
こうして、俺は無事?リバティワーカーズへの登録が終わったのである。