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冒険者と少女



王都の深夜、南東端にある真っ暗な倉庫内。


何処の誰の所有する倉庫かも分からない。現在も使用されているかどうかすら分からない。



そんな倉庫の中で、息を潜めてマリとクーの二人は先行潜入したシンの帰りを待つ。



「ごめんね。ウチのアホが迷惑かけて。」



クーは苦笑いしながら、マリへと謝罪の言葉を口にした。


マリも同じような苦笑いを浮かべながら答える。



「気にしないで。ウチにいるのも似たようなのだから。」




〜〜〜


「作戦を伝えるわね。シンは、姿と気配を隠して単独で先行して潜入。必要な情報は、アジト内の地形と人質の位置、敵の数の把握よ。私とクーはここで待機。」



「ほんでシンが戻ってき次第、取ってきた情報を元に三人で再突入、救出と殲滅の開始っちゅう感じやな。」


「……追いつかずにゆっくり来るべきだったか…」



「何か言った?」

「はよ行け。」



「はい…。」



〜〜〜




そんなやりとりの後、雑多な倉庫端の床下にあったアジトへの入り口からシンを内部へ送り出した。


つくづく、軽口や相方からの扱われ方などツウとよく似ている。




潜入開始から少し経って、おもむろにクーが話を切り出した。


「そう言えば…ツウ、だっけ?固有名色パーソナルカラーを知ってる間柄だし、やっぱり…良い仲なの?」



慣れない急な女子トークに困惑するマリ。

クーはニヤニヤといやらしい表情で返事を待っている。



「そんなんじゃ…ないわよ。固有名色は成り行きで知っただけで、向こうは私の固有名色を知らないし。」


マリは一瞬だけ浮かんでしまったツウの姿を、慌てて頭の中から蹴り飛ばしながら、しどろもどろに返答する。



それを聞いたクーが


「ふぅん。その反応だと、満更でもなさそうだけどねぇ〜。そう言うことにしといてあげる。」



ニヤニヤとした表情を崩さずにそう言った。




それなら、とマリも話を振る。


「そっちこそ、あんなに想ってくれる彼氏がいて随分と幸せそうだけど?」


さぁ反撃開始だ。




「固有名色も教えてないのに、ある程度の距離なら、何処にいるのかを何故か察知できる変態よ?ただのストーカーよ。」



それなら、とニヤニヤしながらマリ。


「付き纏うなってハッキリ言ったらいいじゃない。でも一緒に行動してるんでしょ?」



クーは少し間を置いて、伏し目がちに答える


「それは…他の冒険者リバーと比べて遥かに強いし、紫の私と並んで戦えるヤツなんてそういないから。」


それはマリにも良くわかるでしょ?と。




正直その通りだ。

その辺の冒険者では、まず単純に足手まといでしかない。


それに紫を公表する訳にも行かない。秘匿しなければならない、という理由もあるが、単純に面倒事が増えすぎるのだ。


クランやギルドの勧誘、依頼への同行依頼、ワーカーズ側からの指名依頼…



手練だと分かると、目の色を変えて甘い汁を吸おうとする有象無象。



だから私は、冷酷でソロを好む、近寄り難い空気を纏う冒険者を演じてきた。



「そうね。よく分かるわ…。それに、そういう境遇だったからこそ…バカなヤツほど気楽に居られる、自分を自分として見てもらえる、出していけるのもね…。」



伏し目がちにそう語るマリ。



そして二人は目を合わせ、緊張や不安が切れたように、ふふっ、と笑った。






そのとき、床下から物音。

二人で瞬時に戦闘モードへ切り替わる。


床下の入口が開き、涼し気な顔でシンが出てきた。



「なによ、シンだったのね…。間違えて切りかかるところだったわ。」


マリがそう言うと



「それ、ええやん。今度使わせてもらうわ。」


と、クーが言い、二人はコロコロと笑う。




それを見たシンは、不機嫌そうな表情を浮かべる。


「俺が居ない間に随分と仲良くなったな…。マリさんよ、何されようと幾ら積まれようと、クーはあげないからな?」





少し間をおいてマリ


「…どうする?やっぱ斬っといた方が良い?」



それに続いてクー


「悪いんだけど頼んでも良い?報酬は後で払うからさ。」




分かった分かった、悪かった、と、シンは焦って謝罪する。


俺を斬ったら取ってきた情報パーだろ?

と必死の命乞い。



それもそうだ。シンの処遇については置いておいて、本題にかかろう。




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