三者三様三色の笑み
ビリビリと周囲の空気が震える。
解放した色が、巨大なオーラのように己の身体に纏わりつく。
そして溢れた色は、赤、青、緑、白の、四色の美しい光となって己の周囲を埋め尽くす。
長い年月、紫を隠すために己の色術を二色に制限し、コントロールした上で“白炎姫”と呼ばれるほど名を上げたマリ。
全身に溢れ出し、駆け巡る、普段の数十倍にもなる途轍もない力。自然とマリの口端が上がる。
が、久々に全てを解放したマリはその感覚が懐かしくもあるのと同時に、ついに“その時”が来てしまったことを憂いた。
「それ全色解放か?そこまでしなくても…。」
シンが驚きながらそうマリに聞いた。
全色解放…自分の持つ色値の最大まで解放し、纏色する技術。
途方もない鍛錬とそれ相応の色値が求められるが、個人で編み出す技とは違い、色の種類を問わず色術を扱える者ならば誰でも習得可能だ。
「ま、久々に使う色もあるし…慣らさないとね。」
うーーん、と両腕を上げ全身で伸びをするマリ。
「付いて来られなかったら、ゆっくり来ても良いわよ?獲物はもう無くなってるかもしれないけど。」
挑発するようにニヤリと笑って振り返り、二人へそう告げた。
すると
「誰に言うてんねん。ええで。付き合うたるわ。」
クーはそう言うとニヤリと笑って、マリと同等の色を即座に展開してマリの横に並び立つ。
全てを飲み込む荒波のようなオーラを放つマリに対し、クーの纏う色は全てを包み込む大海のような静かなオーラを放つ。
しかしその中には、どこか洗練された…静かすぎる恐ろしさを孕んでいた。
「付いていけねぇっての…。一般人の俺が、そんな魑魅魍魎の跳梁跋扈する世界へようこそ、なんてされて堪るか。」
お先にどうぞ。と、諦めたように二人に向かって手をひらひらと振るシン。
「なにそれ。意味分かんないんだけど。」
「あぁ、たまに訳わかんないこと言い出すのよコイツ。」
美少女二人に怪訝な目で見られ、なんとも居心地の悪いシン。
分からんだろうから態とそんな言い方をしていることは黙っておこう。
「じゃ、行くわよ」
マリのそれを合図に、二人の姿が消える。
とんでもない速度で街の建物の屋根を渡り、跳んでいく。
たった数秒で見えなくなってしまった二人に呆れながら、シンはおてんば娘達の“色の残滓”を辿り、屋根を渡って行く。
「夜中とはいえ、誰かに見られてたらどうすんのかねぇ…はぁ…。」
厄災クラスの色術を使い、厄災クラスの殺気を放ちながら夜の街を飛び回る美少女二人。
こりゃ王様や宰相が今から気の毒だ。
「とはいえ、獲物全取りされて俺だけ報酬無しってのも癪だな。」
シンは立ち止まり少し考えた後、これまたニヤリと笑った。
今は夜だ。俺には見られる心配がない。
“天”に感謝だな。
「…全色解放」
そう小さく呟き、跳躍。
目指すは王都の南東、“カラス”のアジト。
シンは二人を追って“色”も“光”も無く、美しい漆黒の闇夜を静かに、そして凄まじい速度で飛翔んでいった。




