剣術?指南
「なっ…!剣が…っ!」
何とも不思議な光景。自分の剣が、シルヴァの指の動きに合わせてくるくると空中で踊っている。
驚きを隠せない俺に、シルヴァは笑いながら
「これが、この剣の使い方。というかコイツは、剣の形をした『色術』なんだけどね。」
また訳のわからないことを言い出した。
纏うことはできても、色術、色には実体が無いはず。
「もちろん、剣としても使える…筈だよ。俺はほとんど使ったことないけどね!」
ワハハ、と笑うシルヴァ。そのまま続けて、呆気に取られている俺へ説明に入る。
「コイツは、色術の通りが他の武器と比べてケタ違いに高くてね。紫を使うほどの色値があれば、手に持つ必要すらないんだ。」
続けて
「今のツウにできるかって言うとちょっと難しいかもしれないけど、剣の扱いに困ってそうだったし。助言に来てあげたってわけ。」
シルヴァは少し恩着せがましくそう言って笑った。
そこで俺に、一つの疑問が浮かんでくる。
「でも、この剣は俺が色術を込めて作った…というか、この形になったのに、何でシルヴァが使い方を?」
この剣はシゲルの店で作った、唯一無二の一振りの筈だ。その剣の使い方を、10世紀も前の英雄であるシルヴァがなぜ知っているのだろう。
そう問いかけると、シルヴァはため息を一つ吐いて
「武器を作る時に、纏色して棒っきれに流し込んだでしょ?纏色した色術は、基本的に性質が個人のものに変化するから。」
やれやれ、と言った感じにシルヴァは、俺の剣を自分の周辺で振り回しつつそう説明する。
「ツウには俺の色術を受け継いでもらってるからね。だから、ツウの色術は俺と性質がほぼ同じ。何本作っても、同じものに形が変わるんだ。」
なるほど。そういえば、1度自分を通して術の形に加工するのが纏色ってマリも言ってたな。
その過程で、性質が個人のものに変化するなら納得がいく。
「まさか二刀になってるとは思わなかったけど。その辺は誤差の範囲だし、ツウの能力に呼応して剣が形を変えたんだろうね。」
俺に説明を続けながら、剣はまるで糸が付いて操られているかのように踊っている。
両手を前に突き出し、自分の正面を防御するように剣を出し
右腕を頭の上で一回転させると、自分の周囲を薙ぎ払うように
そして最後は半身になり、俺と相対したシルヴァ。右肘を上げ、腕を構えた。
剣はシルヴァの顔の真横で静止している。
ふっ、と大きく息を吐いてシルヴァが前に手を突き出した瞬間。剣が消え、鋭い斬撃音が五回。
気がついた時は俺の目の前に、剣の切っ先が突きつけられていた。
「デモンストレーションはこのくらいかな?大事なのはイメージ。それに、それをコントロールする膨大な色値と集中力。」
とんでもない技術だ。
自分に纏色して維持するだけでも必死なのに、あの精度と速度で、触れてもいない剣を自在に操るなんて。
「ま、こんなことできたら白金待ったなしだけどね。剣術に不安があっても、こういう戦い方を目指すこともできるって話。」
今の時点で剣術が使えなくても、色術に集中すれば此処に至れる、という手本を示してくれた。
「ありがとう、シルヴァ。想像の数百倍は色術に可能性を見出せた。色々と試して考えてみるよ。」
そうお礼を伝えると、シルヴァは少し照れくさそうに笑った。
「さて、ツウはそろそろ起きる時間かな。迎えが来てるよ。」
迎え?何の話だ…?
「次に会った時の、ツウの成長を楽しみにしてるよ。それじゃ!」
シルヴァがそう言うと、少しずつ紫色の光に世界が包まれていく。俺の意識が遠のいて行く。
最後に、シルヴァは嬉しそうに、少し寂しそうに、一言付け加えた。
「マテリスのこと、頼んだよ」




