続、真っ白な世界
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ここは、どこまでも何もない世界。
床も、壁も、天井も、存在しているのか分からないほど全てが真っ白な世界。
狭いのか、広いのか。奥行きも全く感じられない。
そんな世界に、俺は佇んでいた。何故かはわからないが、これは間違いなく夢だと頭が確信している。
何もないし、何も起きない。早いところ目を覚まして…
こんな明晰夢が、前にもあった気がする。
あれはリルムの街に来て最初の夜だった。
あの時は、真っ白な何も無い世界で、謎の声に語り掛けられ、紫の人型のモヤが…
違う。その前に声の主に、色術の世界を見せられた。あれが俺にとって初めて見た色術…。
色の溢れる世界。
そこから話が始まった。
なら、今回も…
俺はもうあの時とは違う。誰かの手を借りなくても色術を扱える。
何も無い、真っ白な夢の中の世界で、俺は色術を展開した。
美しい、世界の様々な色が自分の周りに浮かぶ。
色術を扱えるようになって何度も見た光景…ではなかった。
普段目にする光景よりも、色の量が多い。光り方も違う。全ての色が眩い輝きを放っている。
「よう!久しぶりだな!もうここまで出来るようになるとは、感心感心。」
見慣れない色術に驚いていると、急に、俺と俺の色術だけの世界に響きわたる誰かの声。
「こうやって面と向かって話すのは初めてだよな。俺はシルヴァってんだ。よろしくな。」
前に見た夢。あの時に語りかけてきた紫のモヤ。
その正体はなんと五紫傑の一人、破傑シルヴァその人だった。
「あの時と口調が全然違う!」
“我の名は…”とか言ってたろアンタ。そんなにフランクな感じじゃなかったぞ。
「あの時はまだ、ツウは色術使えなくて俺のことも見えなかっただろ?ちょっと雰囲気出してみようかと思ってさ。良かっただろ?」
シルヴァはとても嬉しそうに笑った。
目の前にいるシルヴァは、背丈も年齢も俺とそう変わらないように見える。無垢な少年といった感じだ。
この少年が、破傑…?
「あ、今疑ってるでしょ。分かるけどさ。…じゃ、これでどう?」
呼吸の変化もモーションも何もなく、シルヴァがそう言った瞬間、俺の色術が全て奪われる。
真っ白な世界が一変した。
赤、緑、青、白、そして紫。俺とシルヴァの周辺だけではない。
その一つ一つが見たこともないような輝きを放つ。圧倒的な光景だった。
更に俺は驚くことに、気がつくと膝から崩れていた。
目の前のシルヴァは涼しい顔だが、まるでこの世の終わりを感じさせるような凄まじい威圧感を放つ。
これが、『破傑』
身を持って思い知らされた。
今まで出会った人の中でも遥か上に飛び抜けた、文字通り桁違いの存在。
「あ、ごめん!そこまで驚かせるつもりはなかったんだ!」
シルヴァはそう言って膝立ちの俺の前に座る。
「でもそんなに驚く?輝色はさっきツウも展開できてたじゃん。」
輝色…?
聞き慣れない単語に困惑する俺。その表情を見て
「そっか…まだ輝色が使えるのはここだけなんだね。ま、ツウならすぐに向こうでも使えるようになるから!またその時にね。」
シルヴァはそう言ってウィンクした。
調子狂うなあ…。
「今回呼んだのは、別件でね。ツウの剣、あるでしょ。それ、もともと俺が使っていた剣なんだ。」
そう言って俺の剣を腰の鞘から勝手に一本抜いた。
「変わらないなぁ…こいつも。久々だ。まさか双剣になっているとは思わなかったけど。」
シルヴァは俺の剣を右手でヒュンヒュンと振って見せた。
しかしそれは、とても自分の剣を懐かしんで振っているようには見えなかった。マリのような、自分の一部のように扱う姿とはまるで違う。
どう見ても剣筋は素人だ。
「お、怪しんでいるそこの君。今回はこの剣の使い方を教えようと思って呼んだのよ。これは最初の指南。」
シルヴァは少しタメを作り、言葉を繋ぐ。
「俺ね、見ての通り。剣、使えないんだ。」
頭の周りにハテナマークが舞い踊る。何を言っているんだコイツは。
この状況だと、お巡りさんとお医者さん、どちらを呼ぶのがより寛容だろうか。
そんなことを考えていると、不思議な光景が目に映った。
シルヴァの右手にあった筈の、剣が無くなっている。
そして相変わらず涼しい顔のシルヴァは、空いた右手の人差し指を立て、くるくるとゆっくり回している。
その指が刺す先へ視線を動かすと
シルヴァの右手にあったはずの俺の剣が、指の動きに合わせ
空中に浮かんでくるくると回転していた。




