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危険なレベル上げ



ホームを出た俺は、その足で街を出て草原までやってきた。変わらずの大自然が、俺を優しく出迎えてくれる。



何かついでに依頼を受けて来ることも考えたが、マリとパーティを組んだ以上は変に単独行動は避けるべきだろう。


それに今の俺は、国の命運が掛かっているかもしれないほどの一大戦力だ。何かあっては大問題では片付けられない。



「とりあえず、一つずつ色術で出来ることを探って行こうかな。」



少し街から離れたところで、周りに誰もいないことを確認する。

問題はなさそうだ。街道から外れ、草原のど真ん中で色術を展開した。



赤、青、緑、白。自分の周りにその全ての色の粒が無数に展開された。


まずはその色を、一つ一つ指で手繰たぐるように動かしてみる。

すると、自分が動かそうとしている色だけがそれに合わせて思ったように動いた。



おもむろに青を一つ手元へ手繰り寄せ、纏色せずにそのまま握ってみる。



すると、ひんやりと冷たい感触が手のひらに伝わって来る。なるほど。



マリや支部長からざっくりと説明を受けた感じでは


赤は『炎、熱』

青は『水、冷気』

緑は『風、大気』


をそれぞれ司る色らしい。


白は特殊で、それっぽく言えば『聖なる力』。

黒は、基本のの三色をそれなりに卒なく扱えるオールラウンダーのようなものだ。



自分が展開している色を見たところ、黒はどこにも見当たらない。紫は全色使いと聞いているが、紫に黒は扱えないと言うことか。



俺のステ板には、扱える色術の数は『1』だった。だが実際は黒以外全て使役できている。

紫、という色術一つ。これで単色扱いってことか。



青と同じように他の色も一つずつ手に握って試す。

赤はじんわり暖かく、緑は空気の流れを感じ、白は…良く分からなかった。



「なるほど。これを身体に纏って色術として加工するのが『纏色』ってことか。」



手近にあった赤を右手に纏わせて炎に変えてみる。

この状態では、炎が自分の一部として扱われるような感じがする。見た目にはだいぶ熱いのだが、実際俺の手は全く熱くない。



「そして、これを自分以外の物体に近付けると…。」



火力を弱くしているためか、自分の足元に生えている草に近付けても燃えはしなかった。が、熱は伝わっているらしく、少しずつ黒く焦げていく。


自分の手から放たなくても発動しているというのは、マリに燃やされかけた時に自身で立証済みだ。



「よし、じゃあそろそろ実践的な練習、やっていきますか。」



ここからは色んな色を攻撃として、身体強化として、色々と試していく。


辺りを見渡すと、少し遠くにちょうど良さそうな大きさの木を見つけた。


まずは赤を足に纏色して、そこに向かって移動してみようと試みる。



「危なそうだし、白も入れておこう。怪我をしたら元も子もないしね。」


また独り言を漏らし、実践に移る。

足を蹴る瞬間に色術で爆発させ、爆風で推進力を得ようとしたのだ。


しかし、



「うおわわわわぁぁぁぁ!!!」



“ドゴォォォォォン”という轟音と共に、俺は吹っ飛んでいた。


緑を纏色して走っていた時もそうだが、色術自体が自分の身体に及ぼす影響はない。爆発に関してのダメージはなかった。


だが衝撃や肉体疲労は別だ。

衝撃が自身に影響して伝わらなければ、赤の纏色ではマリのように移動には使えない。


ただ加減を間違えたのである。




空中で少し回転しながら、低い軌道で木へとまっしぐら。このままでは激突は必至だろう。



何か、何か打開策はないか、と頭を猛スピードで働かせる。その結果、



「うらぁ!」



声と共に、飛んだ時と同じように手に纏色させた赤を爆発させる。体の回転や自分のスピードを相殺するような爆発力、力の向きで。



すると今度は上手くいったようで、一瞬の浮遊感と共に俺は推進力を失い、地面に落下した。



「あっ…ぶねぇ…。間一髪だな。」



俺はすでに、先ほど遠くに見えていた木の目の前まで来ていた。咄嗟に機転を効かせていなければ、叩きつけられていただろう。



そしてその木も良く見ると、ちょうど良さそうな大きさどころではなかった。

大木と言っても差し支えないだろう。かなり遠くから見ていた証拠だ。


ふと俺が飛んできた方向を見てみると、遠目に見えていた街道はすっかり見えなくなってしまっていた。



「この距離を一瞬で移動できたってことか…。考え様によっちゃかなり使えるな。」



加減を間違えなければ、の話だが。

実際、色術は俺の思っている以上に自由度が高いらしい。


『色術はイメージ』

マリやシゲルから言われた言葉を思い出す。


危険を孕んでいることは身をもって分かったが、上手く扱えばこれ以上ないほど強力な助けになるのは間違いない。



「少しずつ、だな…。」




今しがた受けたばかりの拭いきれない恐怖と闘いながら、俺は色術を少しずつ、控えめに。


恐る恐る大木に撃ち込んでいくのだった。

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