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色術って何?


街を目指し、リルム平原の街道を歩く俺とマリ。

すっかり日も傾き、平原の草木は夕日で赤く染まっている。


「街にはあと一、ニ時間で着くと思うよ!」


そう言ってマリは、水筒を取り出してひと口飲んだ。その様子を見ていた俺に、「飲む?」と水筒を差し出してくる。


出会ったばかりの美少女が口をつけたものを分けてもらうという恥ずかしさ、嬉しさに鼓動がワンテンポ早くなる。



「ありがとう」と水筒を受け取り、マリに習ってひと口飲んでみる。それは非常に馴染みのある味と匂い。緑茶だった。


「これ、緑茶…?」


と聞くと、マリはとても驚いた様子で


「知ってるの?私がいた国でよく飲まれてた飲み物で、この辺の人たちには馴染みがなくてあんまり知られてないのよ。」



この辺の人じゃないからな俺。



「俺がいた世界の日本って国でよく飲まれてたんだよ。まさかこっちに緑茶があるとは思わな


「ちょっとまって。今『ニホン』って言った?」


マリが俺の言葉を遮った。日本を知っている…?


「ニホンっていうのはこの大陸の名前。詳しくは知らないんだけど、ここは昔ひとつの国だったらしいのよ。で、幾つかの国家に分かれた際に、その国の名前をとってニホン大陸って呼ぶようになったって。」



まさか小さな島国の日本が大陸と呼ばれる日が来るとは。

それにしても、緑茶といい日本といい、ここは俺の全く知らない別の世界って訳でもないのか…?


そう考えていると、マリが思いついたように


「街に着いたら、色々調べてみようよ!知ってるものとかもあるかもしれないし!」


ここでマリにあれこれ聞くよりそっちの方がいいか。詳しく知らないって言ってたしな。

とりあえず今は、街にたどり着くのが先だ。



「そうするよ。ところで、色術?ってのはどういうものなの?俺でも使える?」


元の世界でゲームやアニメは散々嗜んできているし、魔法には非常に興味がある。使えるものなら使ってみたい。



するとマリは、予想外の答えを返してきた。



「え?でも…さっきツウ、色術使ってたじゃない。」




俺が?色術を?

いつ?どこで?


どの男と勘違いしてるんだ!と問いただしたい気持ちをグッと抑える。


「ガルムに追われてた時に、少しの間緑で風を纏って爆走してたじゃん。ツウって緑使いじゃないの?」




ーーーーーーーー


もうすっかり日も落ち、見慣れた月が夜空に顔を出し、月明かりで平原を照らしている。綺麗な満月だ。


夜の街道を歩きながら、マリから色術について色々と聞いてみた。


色術とは、この世界に満ちた"色“を使役して発動する術のことで、赤・青・緑・黒・白の五色がある。


赤・青・緑は基本色と呼ばれ、それぞれ火や水、風を扱う。


黒は複合色と呼ばれ、基本色の3つを全て使える。


白は治癒色。回復したり、暗がりを照らしたりと色々と便利なことができる。差し詰め光魔法といったところか。



「で、私は赤と白使い!二色使えるのはほんとに一部しかいないのよ!」


そう言ってマリは大きめの胸を張って自慢している。


「どうやって使うの?あの時は無我夢中で逃げてたから無意識だったからさ…。」


そう俺が聞くとマリは


「こう、グググ〜ってやって、ボン!って感じ!」



何かを察する俺。これ以上マリに使い方を聞いても無駄だな。


色術かぁ。使えるようになるといいな。



「あ、ほら!見えてきたよ!リルムの街!」


そう言ってマリが走り出す。先に目をやると、リルムとやらの街の姿があった。


大きな壁に囲まれた街だ。モンスターが入り込まないようにしてるのか。そこそこ大きく、栄えているようにみえる。

起伏に隠れて見えなかったのか。結構近くまで来ていたみたいだ。


早く早く!と声が聞こえる。もうだいぶ先で俺に向かって手を振りながらピョンピョンと跳ねている。



この世界に来て初めての街。


とりあえず、異世界人なのは伏せておこう。厄介ごとは御免だ。

それに、当面の方針も立てないと。


マリともこの街でお別れか。またどこかで会えるだろうか…。


そんなことを考えながら、俺はマリの後を追って街に入っていった。

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