王都、王城とマリ
ここは夕暮れに照らされる王都中央街。
リルムとは比べものにならないほど栄えた街並みは、老若男女行き交う昼の顔と、欲望渦巻く夜の顔が混在している。
そのカオスな喧騒を行く人々の装いも、非常に個性豊かなものだ。
「はぁ…。王都は何回来ても慣れないわねぇ…。」
リルムを早朝に出発したマリは、夕方に王都に降り立っていた。
魔物も何度か出たが、王都への整備された道のりでは特に強力な相手はおらず、盗賊などのごろつきも少ない。特に手こずることもなく一蹴してやった。
無理を言って当日に王都行きの荷馬車に同乗させてもらったが、知り合いとはいえ少しでも護衛料を取っておくべきだっただろうか。
相手は商人。もしも次に同じような事があった時、他の商人にも今回のことが伝わっているだろう。足元を見られるのは明白。
「イヤな前例を作っちゃったなぁ…失敗した。」
名実ともにプラチナの二つ名持ち冒険者が、軽率だった。支部長に怒られるのは面倒だが、仕方がない。
さっさと用事を済ませて宿に行こう。この時間のこの街は、ギラついていてあまり好きじゃない。
マリは,これから夜を楽しまんとする男達に声を掛けられつつ…それを無視しながら重い足取りで目的地へと向かった。
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「どうも、こんな時間に悪いんだけど王様いる?というか、急用だから呼んでもらえるかしら。」
マリは王都の最奥にある、小高い丘の上に建つ王城の前にいた。
とてもマリらしく媚びない言い様で、扉の両脇に立つ兵士二人に声を掛ける。
「誰だ貴様は!そんな事が罷り通るわけがないだろう!帰った帰った!」
それはそうだろう。貴族でもここの王族でもない娘一人が、アポも無しに王に謁見ができるはずもない。今回のような緊急の要件でなければ。
「あぁもう面倒臭いわね!マリが来たって言えば分かるから!」
そう聞くや否や、門番の兵士たちは顔を合わせた。なにやら驚いているようだが…。
「し、失礼いたしましたマリ様!謁見の間の方へお越しください!」
どうやら話は伝わっているようだ。こういう時のために、前から話を決めておいたのは正解だった。
兵士が王城の扉を開いた。敬礼をして城へ迎え入れる兵士二人への挨拶もそこそこに、中へと歩を進める。
めざすは謁見の間。覚悟を決めよう。
いや、もう既に覚悟は決めていた。あいつと出会ったあの日に。
さて、この世界の命運を分ける話をしに行きますか。




