表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/40

心得


街を出て、ひたすら歩く俺とマリ。

いい天気だ。雲ひとつない…とは言えないが。


そのせいもあり、昨日と変わらずリルム平原は、その美しい様子を俺たちに見せてくれている。



「さて!それじゃ、街から少し離れたところで…!」


マリがおもむろに、腰に差した剣を鞘から抜く。


真っ赤な剣身に白のラインが入った長剣。ガード(刀で言うつばの部分)はまるで天使の翼のような美しい形をしている。


赤と白の軽装備を見に纏うマリが持つ剣として、完璧な見た目をしている。

俺はつい、剣を抜いたマリに見惚れてしまった。



しかし、それをマリは見逃さなかった。

目は離していなかった。間違いなく視線はマリへ向けられていた筈なのに。


その美しい剣先が、一瞬で俺の首に突きつけられた。

呆気に取られる俺に、マリが言い放つ。


「…一緒にいる人が誰であろうと、剣を抜いたらアンタも抜いて構えなさい。死ぬわよ。」



そう。ここは命のやり取りをする場所。

安全で法に守られた街とは違う。自分の身を守るのは、自分だけなんだ。


「もし信頼できる人が剣を抜いたら、近くに敵がいるかもしれない。もし信頼していない人が剣を抜いたら、その剣はアンタの首を飛ばすかもしれない。」


確かにその通りだ。

そう俺を強く注意するマリは、すでに冒険者リバーの顔をしていた。


「誰かが剣を抜いたら、とにかく構えて。何の理由もなく抜かれる剣なんて無いの。その一瞬が命取りになる。覚えておいて。」


わかった。と、俺は強く頷いた。それを見たマリの剣先が下がっていく。


今の、剣を喉元に突き付けられた映像が離れない。

これはしっかりと頭に刻んでおこう。その為にマリは俺に剣を向けてくれたんだ。




「宜しい!じゃあ早速、剣を抜いてみて。」


そう言われ、俺は剣のつかに手を掛け、鞘から抜こうとした。が、


「ストップ!すとーーっぷ!!」


生まれて初めての記念すべき抜剣を、マリに止められてしまった。



「そのまま抜いたら逆手になっちゃうでしょうが!アンタのは短めとは言え、短剣じゃないんだから!」


そう。俺は右手で右腰の剣を、左手で左腰の剣を抜こうとしていた。


「思ったより不器用ね…。両方同時に抜くなら、腕をクロスさせて抜きなさいよ…。」



マリに言われた通り、俺は両腕を交差させて抜剣した。

俺も男の子だ。長めの棒を、よく武器に見立てて遊んでいた。


その時の記憶を呼び覚ますように、一対の剣を顔の前で少し内側へ傾けてそれっぽく構える。



「構えは悪くないわね。ちょっと力が余分に入ってるけど、まぁいいでしょう。」


そう言うとマリは、腰を少し落として両手で長剣を構えた。



「この子は、『レーヴァテイン』よ。二刀流の剣術なんて知らないからアテにしないでね。これから、戦闘で使う色術をツウに教えてあげる。」


言うが早いか、急に剣を横に薙いだかと思ったら、鋭く踏み込んで何もない空を縦に斬る。


その刹那、鼓膜が破けるかと思うような爆発音と共に、マリが斬った場所から一瞬だけ爆炎が上がった。




「うわ!あっつ!!!?」


急に現れた爆炎に驚いたのもそうだが、一瞬だったのに異常に熱い。とにかく熱い。


それを見たマリはケラケラと笑いながら


「これが私の剣。色術を纏わせて、斬ると同時に相手を消し炭にするの。こうやって、自分の色術を剣に纏色して放つのが基本よ。」




ムリ無理むり。できる気がせんて。

剣を作るのに纏色はできたけど、今日初めて本物の剣を握った俺に急に言われても…



「出来ないと思ってるだろうけど、とりあえずやってみて!大丈夫だから!ツウならまずは、片方でいいから緑を剣に込めて、思い切り振ってみて!」


そう言われてもなぁ…と心の中で思いつつも、言われた通り実践してみる。


まずは右手の剣に緑を纏わせる。

イメージ…イメージしろ…


そして、十分に自分の中のイメージで緑を纏わせた右手の剣を、右上から袈裟に斬り下げた。



すると、俺が剣を振った音と共に、緑色で三日月状のものが前方に向かって飛んでいく。


俺が放った緑色の斬撃は、平原に生えた草を切り裂きながら、10mほど飛んだあとに霧散した。




「おぉ〜!それはね、緑使いの基本技だよ!」


マリのように一瞬で纏わせられた訳ではないが、ちゃんと出来ているらしい。


武器を作った時とは違う感覚だった。まるで、剣が俺に呼応して自ら色を纏っていくような。




「それは風の斬撃を飛ばせるの。それにしても…他の人のを何度も見たけど、倍以上の距離飛んでるよ!凄い!」


マリが感嘆の声を上げている。

そう言えば俺の色値は、他の人よりかなり高いってアズサさんが言ってたっけ。


何となく、何となくだが、色術というものを理解し始めた気がする。




「じゃあ、あとは目的の場所へ向かいながら色術の練習ね!剣を使わない色術の使い方も教えてあげる!」


そう言ってマリは自分の剣、『レーヴァテイン』を鞘へ収める。

それに倣い俺も、両手の剣を鞘へ。



「剣の名前かぁ…俺も付けたほうがいいのかな。」


俺は収めた自分の剣を触りながら独り言のように呟く。

それを聞いてすかさず、マリが忠告してきた。


「付けちゃダメよ。絶対ダメ。いい?自分の色術を込めて作った武器には、必ず名前があるの。シゲルから聞いてない?」


うん。聞いてない。

破桀紋はけつもんの件もあったし、武器のことを伝え忘れたのだろう。何ひとつ説明らしい説明はなかったからな。



「ツウがその剣を使いこなして、力を引き出せるようになったら自然と分かるようになるから。私のレーヴァテインもそうだったのよ。」



うおおお。何だその厨二設定。

ありがち。実にありがちだが…夢にまで見たようなファンタジーだ。堪らない。



「それじゃ行くわよ!自分の体に緑を纏色して!身体能力が格段に上がる筈だから。そのまま私について来てね!」


そう言うとマリは、白を全身に纏った。両脚はほのかに赤い。


俺も緑を全身に纏う。だんだんと纏色のイメージにも慣れて来た。



マリは俺が纏色したのを確認すると、前を向いて走り出した。凄いスピードだ。マリの足が付いた場所が少し焦げている。


俺はまた呆気に取られていたが、観察もそこそこに、もう既にかなり小さくなってしまったマリの背中を急いで追う。


少し緩めてくれているのか、すぐに追いつくことができた。

周りの風景が凄いスピードで自分の後方へ飛んでいく。



こうして俺たちは色術を使い、休憩を挟みながら目的地へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ