門番の仕事
俺とマリは、様々な店舗やたくさんの人の往来のある街のメイン通りを歩き、ついに平原へ出る門に到着した。
門とは言うものの、特に往来が制限されている訳ではないようだ。大きな木製の門扉は、その口を大きく開けて商人やリバーの出入りを優しく見守っている。
「あ、シュウ!やっほー!」
マリが、いかにも門番です、と言う出立ちの青年に声をかける。昨日俺がここに来た時にも立っていた人だ。
金髪ツンツン、すらっと背が高く、表情の明るい好青年。なかなかのイケメンだ。
「お、マリじゃねぇか。仕事か?」
と、シュウと呼ばれる門番の青年が、マリの左腰に携えた長剣を一瞥する。
「剣を持ってるってことは…デカい仕事か?気をつけろよ。」
ううん、と首を横に振るマリ。
「今日はガルムなの。パーティを組んでの記念すべき初仕事よ!」
それを聞くと、シュウは驚いた顔のまま俺の方へ視線を移す。
シュウは俺と目が合った後、俺の腰に不慣れに差さった左右一対の剣に視線を移し、また俺と目が合い、ニヤッと笑う。
「へぇ。あのマリともあろう者が、男連れて仕事ねぇ。しかもパーティ結成と来たもんだ。こりゃ、今日の晩飯は赤飯かな。」
ニヤついた顔でマリを茶化す。というか赤飯、あるんだ。
「残念でした。下衆なアンタが想像してるような関係じゃないわよ。夜までには帰るから。」
聞くからに呆れた声で、マリはシュウに言い返して門をくぐっていく。
それをシュウは、ごゆっくり〜、と手をヒラヒラさせて見送る。
俺も軽く会釈をし、マリに続こうとすると
「幸運を祈ってるぜ。俺は、俺たち門番は、ここでお前らが帰って来るのを信じて待ってる。行ってこい!」
と、声を掛けてくれた。シュウの心からの言葉。
軽口も叩けなかったほど緊張していた、俺の身体の震えが止まった。
門番は、ただ門を守っているだけじゃない。
ここから外の世界に飛び出していく人たちと、またこの門で再会できることを心から祈ってくれる。
こんなに心強いことはない。その想いに応えて、また必ずここに無事戻ってこよう。
俺はシュウへ向き合い、力強く頷いた。
マリの後を追って街から外へと踏み出す。
ここは、俺たちが必ず帰ってくる場所。
今度、シュウをメシにでも誘ってみよう。
そんなことを考えていると
「早く行こうよ!置いてっちゃうわよ!」
俺は慌てて、マリを追いかける。
昨日もマリを追いかけてこの門をくぐった。
でも今日の俺の足取りは、何故か昨日よりも軽く感じた。




