視認と使役
それから少ししてマリが戻ってきた。
シゲルがマリの剣の手入れをしながら、ここまでの事情を説明する。
武器に浮かび上がった破桀紋のこと、そして色術のこと。
それを聞いたマリは、そんなに驚く様子もなく、まるでそれを予想していた、とでもいうような表情で、大きなため息を一つ吐いた。
「で、ホームに戻って報告、本当にツウが紫持ちなのか確認するってことねぇ。」
ここまでの話を伝えたシゲルは、そうだ。とヒゲを蓄えた顔を縦に振る。
それを見たマリは、また一つ大きくため息をついて
「あのねぇ、確認ったって、ホームで色術でも展開させるつもり?本当に紫だったとき大騒ぎよ?」
この口ぶりからすると、色術の種類を確認する術が無いのだろう。
ステ板とかリバープレートとか、その辺の技術はあるから識別くらい出来そうなものだが…
「あれ?ってことは色術の数はステ板でわかるけど、何色を使えるかってとこは曖昧なの?」
それを聞いてマリは、うーん、と少し考える仕草を見せた。
「色術が使える人は、『色が視える』ってのは知ってるわね?」
それは支部長との研修で聞いている。
マリの問いに対して頷いた。
「じゃあ隠色を解くから、私が纏ってる色を視てみて。」
マリは、ふっ、と一つ小さく息を吐いた。すると、一瞬でマリの周囲の空気が変わった。
ビリビリと重く、マリの体の周りがオーラを纏っているように歪み、揺らいでいる。
俺は色を視るために、マリが纏っている色へ意識を集中させる。
少しずつ視えてきた…赤、白…青や緑もある。
青と緑がマリの周りでゆらゆらと揺れ動いているのに対して、赤と白はまるで纏うように激しく周りを回っている。その二色は数も遥かに多い。
俺の目の前で赤と白を纏わせ、相対したマリは…何故か美しくもあり、少し怖かった。
そんな感想がつい口に出ていたようで、マリは色術を解く…というか、隠色で隠しただけなのだが。
纏っていた色が霧散して消えていく様は、『解く』という表現が正しいように見えた。
「今は、敢えてわかりやすく赤と白を大きく纏わせてたけど…他の色もあったでしょ。」
俺はマリの言葉に頷く。おそらく、色術が視えることと、色術を使うことは別だと考えるべきなのだろう。
「まぁ紫持ちは、全色扱えるっていう正しく異色の色術。全色一気に纏わせる事もできるから、すぐに分かるんだけどね。」
なら何故、今確かめないのか…
と、疑問に思った俺にすかさず
「何で今やらないのかって顔してるけど…はぁ。できないでしょう。あんた。」
やれやれ…と呆れ顔でマリが俺に言い放つ。
武器造りで纏色がやっとだった俺に、さっきのマリのような芸当は…到底無理だった。




