破桀紋
「よし!そろそろ本題に入るか!お前さんの武器、俺が作ろうじゃないの!」
ニヤリとイカつい顔を歪め、シゲルさんが如何にも職人らしく腕まくりの仕草をする。
袖無いのに。
まぁそこは雰囲気だろう。野暮なツッコミはすまい。
「まずは、利き手でこの棒切れを握ってくれ。」
そう言ってシゲルさんは、さっき準備していた金属の棒を差し出してきた。
言われた通り、シゲルさんから受け取った棒を両手で握る。
「その棒に、お前さんの色術を纏わせるんだ。それに応じてその棒が形を変える。お前さんの色術にあった形にな。」
なるほど。色術を纏わせるのか。
……ってどうやるんだろう。
棒を握ったまま、支部長の色術指南を思い返す。
…だめだ。あの時の研修にそんな説明はなかった。
棒を握り、それを見つめたまま動かない俺を見てシゲルさんは
「お前、纏色のやり方知らないのか…。」
と、困った顔をして核心を突いてくる。続けて
「客から聞く話によると、"色術はイメージ"らしいけど…俺は色術使えねぇしなぁ。」
と、せめてもと言う感じでヒントを教えてくれる。
色術はイメージ…色を纏わせる…
考えてても仕方ない。やってみるか。
先ずは自分の周りに色を認識。
自分の周囲にある空気を可視化させるように、意識を集中…
目を閉じて、周囲に意識を張り巡らせる。自分を中心に、ドーム状に結界を張るように。
そしてその結界内にある色をありったけ集め、手から握っている物へと流していく。
…そのままどれくらいの時間が経っただろうか。数倍、数十倍にも時間が引き伸ばされるような感覚を覚えながらも、集中は切らさない。
否、全力で集中している時にこそ、そういった感覚が生まれる。そしてそれに呼応するかのように、両手で掴んでいる手元の棒切れが形状を変えていく。
………ぃ……
……ぃ!
「…おい!もういいぞ!」
その声に驚き目を開けると、俺はシゲルさんに肩を揺らされていた。
「凄い集中だったな。それに、お前の色術…俺でも、空気が変わったのがわかった。そんなのは初めてだ。」
自覚は全くないが、恐らく作製工程でいろんな人の色術を見ているシゲルさんが言うなら、そうなんだろう。
今のところ比較対象が無いからなんとも言えないけど…色値高いってアズサさんにも言われてたし、もしかしたら少しは期待しても良いのかもしれない。
「そうなんですか…自分ではよく分からなかったですけどね…。」
と、ひとまず当たり障りない返答をする。
「それより、手元。見てみな。」
そうシゲルさんに促され、手元を見ると
「剣…?」
先程まではただの金属の棒切れだったものが、手の中で剣に変わっていた。それも、二本の剣に。
大きさや長さは、二本ともよくゲームやアニメで見る片手剣そのもの…よりも少し短いか。柄の部分や鍔は、シンプルに装飾されている。
色は黒…っぽく見えるけど、少し違うような。
黒っぽい剣が二本。…なんかなぁ。何がとは言わないが、いっそのこと黒いコートでも装備するか。
「へぇ、二本とも黒か。通り名を付けるとしたら、さしずめ『黒の剣」
「ダメです。」
慌ててシゲルさんの言葉を遮る。なんて危ない発言をするんだ。
何がとは言わないが、俺がソロじゃなくて良かった。
「おっし、じゃあ最後に剣貸してみな。俺が仕上げして完成だ。」
そう言われ、一対の黒剣を渡した
そしてシゲルさんは受け取った剣を研ぎ、磨き、武器としての輝きを、命を吹き込んでいく。
「お、おい…これ。見てみろ。剣を磨いてたんだが…何だこれ。」
急に、シゲルさんが声を上げる。何かひどく憔悴しているようだ。
金床へ近づくと、その上に置かれた自分の剣は、形などは違わないものの、仕上げ作業によって大きく様変わりしていた。
先ほどよりも強く輝きを増し、重厚感のある金属の黒色の刀身。
そして刃の部分は、怪しく光る濃い紫色に変わっていた。
色もそうだが、大きく違ったのは
「紋章…?」
柄の部分に浮かび上がった、謎の紋章。
砂時計に翼が生えたような形で、そこに剣のようなものが二本刺さっている。
それをみてシゲルさんは大粒の汗をかきながら、こう漏らした。
「破桀紋だ…」




