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炎城寺紅子の炎上  作者: 秋野レン
シーズン4 集結、五輪一族
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第4話 紅子のスマホデビュー①

 炎城寺邸に帰宅した紅子は、早速スマホの初期設定にとりかかった。もちろん、実際に手を動かすのはイルカである。


「あんたのスマホはアンドロイドなんでしょ。ⅰPhoneも分かるの?」


「ご心配なく。困った時はイルカにお任せ、これはIT界の常識です」


 イルカはⅰPhoneを充電しながら炎城寺邸のWIFIに接続する。続いてIDを作成し、Twiterやライン、動画サイトや掲示板などのアプリをインストールしていった。


「とりあえずスマホの定番アプリは一通り入れておきますよ」


「だったらあれも入れといてよ。えーと、ほら、インスタントなんとかって写真のSNS。有名なんでしょ?」


「インスタグロムですか」


「それそれ、インスタ。あんたもどうせやってんでしょ」


「やってませんよ」


「え、なんで? あんたTwiterもYOUTUMEも2ちゅんねるもやってるのに、なんでインスタだけやってないのよ? なんか理由あんの?」


「別にそんなの自由でしょうが。インスタやってないからってなんか問題あります? そのことであなたに迷惑かけましたか? そんなふうに煽っても全然効いていませんよ?」


「なにキレてんのよ」


 SNSカースト上位のインスタに対して、Twiterユーザーは敵意と劣等感を抱いている……という俗説が真実かどうかはともかく、イルカはインスタが苦手らしい。


 結局、陽キャ御用達アプリのインスタはインストールされないまま、初期設定は完了となった。


「はい。これでOKですよ」


「よしよし。んじゃ、とりあえずイルカ、あんたが使い方のお手本見せてよ」


「お手本ですか。それでは、Twiterでスマホの購入報告でもしましょうか」


 イルカはTwiterアプリを開いて、紅子のアカウントからツイートを入力し始めた。


「スマホのキーボードは、このようにタッチしてその後四方向のいずれかにスライドさせて入力を行うのです。初心者は両手で入力した方がいいかもしれませんね」


「フリック入力ってやつね、知ってる知ってる。……にしても、あんた文字打つのめちゃくちゃ速いわね」


「お嬢様も一日十二時間スマホをいじれば、一年でこうなれますよ」


「なりたくないわよ」


 などと言ってるうちに、イルカ作のツイートは投稿された。


 

 炎城寺紅子@Red_Faire

『とうとうスマホ買っちゃいました! 十八歳にして初のスマホデビュー(汗)』


 炎城寺紅子@Red_Faire

『機種はもちろんⅰPhoneです。ANDR0IDだとオタクに思われちゃうし……(汗)』



「あんたって(汗)好きよね」


「つい癖で」


 投稿したツイートには、すぐ反応があった。紅子のTwiterはフォロワーが一万人を超えているのだ。ただ問題は、そのフォロワーのほとんどが紅子のファンではなくアンチだ、ということなのだが。



『アンドロイドだとオタクに思われるとはどういうことでしょうか。大変不愉快な発言です』


『アンドロイドスマホは実質的なスペックではⅰPhoneよりずっと上だってこと知らないのかな? 自分の無知を宣伝してるだけの自爆ツイートだね』


『まあ頭の悪い君にはアンドロイドOSの拡張性を使いこなすことはできないもんね。賢者だけが使えるアンドロイド、バカでも使えるあいぽん(笑)』


『こういうアンドロイドを馬鹿にする人は、ⅰPhoneも使ってほしくない』



 案の定、アンチ達はここぞとばかりに紅子(本当はイルカだが)の失言に絡んできた。


 煽り耐性ゼロの紅子は当然、光速で反応して怒りだす。


「むきー! こいつらまたわたしに喧嘩売ってきた! リアルでは何も言えない臆病者のくせに、ネットでだけはいきがりやがって! 殺してやるわ!」


 もう百回は繰り返したお馴染みの光景である。


「イルカ! こいつら煽り返して泣かしてやってよ!」


「ふふ。そう言うと思いまして、すでに罠をしかけておきました」


「えっ?」


 イルカはにやにや笑いながら再びツイートを投稿した。



 炎城寺紅子@Red_Faire

『なんだか読解力のない馬鹿が勝手に暴れてるなあ……。わたしはアンドロイドが悪いなんて一言も言ってないんだけど……(汗)」



「は……? なによこれ。あんたアンドロイド使いはオタクだって、あのツイートはどう見ても悪口でしょうが」


「いえいえ。お嬢様、よく見てくださいよ」


 イルカは、先ほどのツイートの『ANDR0IDだとオタクに思われちゃう』の部分を指した。


「…………?」


「ほら、もっと近くで見ると分かりますよ」


「ん……? ……ああっ……! これ、アルファベットの『オー』じゃなくて数字の『ゼロ』じゃない! これじゃ『アンドロイド』じゃなくて『アンドゼロイド』だわ!」


「その通り。これがトラップです。アンチ達はまんまとひっかかりましたね」


「おおおおっ! なるほど! すごい!」



 炎城寺紅子@Red_Faire

『わたしは“アンドゼロイド”っていう架空のスマホの話をしただけなのに、馬鹿が勝手にアンドロイドスマホと勘違いしただけなんだよなあwww』


 炎城寺紅子@Red_Faire

『あれれー? 拡散希望のタグつけてリツイートしてた人、なんで消しちゃったんですかーーー?wwwwwファアアアーーーーーwwwwwwww」



『アホらし』


『勝手に喜んでろ』


『幼稚園児かよ』


『付き合ってらんない』



「おお、効いてる効いてる。まんまと釣られた馬鹿共が、負け惜しみほざいて逃げていきやがるわ。はっはっは」


 アホらしかろうがなんだろうが、アンチ達が紅子 (イルカ)の目論見にはまってしまったことは否定しようがない事実である。彼らは居心地悪そうに、捨て台詞だけ残して去っていった。


「よしよし、さすがレスバ王ねイルカ。褒めてつかわす」


「ふふふ。この程度、わたしにとっては朝飯前ですよ」


 にやにやと笑う二人。こういうところでは気が合うのである。


 以上でイルカによるチュートリアルは終了ということで、いよいよ紅子自身がスマホを操作する番となった。

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― 新着の感想 ―
[一言] さすがにこの回はイルカさんが勝手に絡み返して発狂してるようにも見えます。イルカさん、どうしてこんなことに……。
[一言] これ勝ち判定なんだw
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