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炎城寺紅子の炎上  作者: 秋野レン
シーズン2 宿命の対決
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第4話 不人気動画の作り方④

「ってわけだから、今日のライブ配信はすこしは期待できると思うわ」


 翌日、みい子の生放送を五分前に控え、自室のパソコンで視聴待機していた紅子は、イルカにあらましを説明した。


「………なんてことを」


 イルカは言葉にならない、という風に頭を抱えた。


「は? どうしたのよ、イルカ」


「みい子の動画をTwiterで晒すなんて……とんでもないことをしましたね、お嬢様」


「晒す、じゃなくて宣伝よ。なによ、あんたは宣伝なんてみっともないからやらない、とかいう芸術家気取りなわけ?」


「そういうわけじゃありませんが」


「内容はいいのに人に知られず埋もれていく……っていう、惜しい作品がこの世には山ほどあるのよ。まあ、みい子の動画は内容もゴミだけどさあ。少なくとも何も宣伝しないよりは……お、始まったわね」


 昨日と同様、折り紙を持ったみい子の姿がモニタに現れた。


 その横にはコメント欄と、現在の視聴者数を表すカウンタが配置されている。

 

 『視聴者数:1022人』

 

「え、視聴者数が千人!? 凄いじゃない!」


 一人しかいなかった昨日と比べて驚くべき数字であった。


 

『えと、こんにちは、みい子です。今日は、なんだか、すごく沢山の人が来てくれて、びっくりしてます』

 

『みい子ちゃん!きた!』

 

『かわいい!』

 

『ロリかわいい!』


 

 みい子が喋りだすと、それに呼応して千人のオーディエンスから大量のコメントが寄せられた。昨日までは無名の泡沫アイドルだったみい子は、一夜にして人気者になったようだ。


「うんうん、よかったわねみい子」


 紅子は感無量である。


 しかしイルカは冷ややかに反論した。


「まだ良かったかどうかは分かりませんよ」


「はあ? どういうことよ」


「見てればわかりますよ」


 

『えーと、昨日のコメント欄では、みんなから沢山のリクエストをもらいました』


 

「うんうん、よかったわね」


 

『一番多かったリクエストは、みい子に学校の水着を着てほしいってお願いでした』

 


「うんうん、よか…………は?」


 紅子の顔がひきつった。

 


『えっとでも、ごめんなさい。水着は学校に置いてきちゃいました』

 

『えええーーー』

 

『なんでーーー』

 

『みい子ちゃんの水着見たかったのにーーー!』

 

『あ、でも、二番目に多かったのはランドセルを背負ってほしいというリクエストでした。こっちは大丈夫です。うんしょっと……』

 

『ふおおおおーーー!』

 

『誘拐したい!』

 

『みい子ちゃん最高!』

  

『それじゃあ、折り紙はじめます。まずリクエストは、象さんですね。見ててください! うんしょ、よいしょ……』

 

『みい子ちゃんのお手てぷにぷにで可愛い!』

 

『みい子ちゃんが俺の象さんをいじってるぞ!』


 

「なんなのよこいつら!?」


 堪りかねて紅子は叫ぶ。


「こうなるんじゃないかと思いましたよ」


 イルカがため息を付いた。


「こいつら、みい子にセクハラしてるだけじゃない! なんでこんなバカな男ばっか集まってんのよ!?」


「そのバカを千人集めたのはお嬢様ですよ。この視聴者達は、お嬢様のTwiterから誘導されて、みい子の動画を見に来たんですからね」


「なによ! わたしのせいだっていうの!?」


「そらそうでしょう。この視聴者達、明らかにお嬢様のTwiterに粘着してる荒らしと知能も言動も同レベルじゃないですか」


 ブロックしたら負け、の精神でTwiterをやっている紅子のアカウントは、SNS界隈でも最低最悪レベルの厄介者の巣窟と化している。


「宣伝すること自体は悪くないですが、その前にもう少し自分のフォロワーの民度というものを考えないと。まあ、みい子の動画を荒らしたかったというなら、見事な戦術と感心しますけどね」


「んなわけないでしょ! あーもう、早くこのバカ共を止めないと!」


「どうやって止めるんです?」


「コメントで呼びかけるに決まってるでしょ!」


「無駄だと思いますけどねえ」


 

『いい加減にしてください。あなた達のコメントはみい子ちゃんへのセクハラです』

 

『みい子ちゃん、もっと前かがみになって!』

 

『小学生相手にそんなこと言って恥ずかしくないんですか? それとも大人の女性に相手にされないから小学生を狙ってるんですか?』

 

『みい子ちゃんのスク水見たかったなあ』

 

『おい聞けよロリコンども! 糞コメすんなって言ってんだろ!!!』

 

『水着がないなら体操服はないかな? そっちでもいいよ』

 

『もっと真面目に折り紙見ろよ! 今みい子ちゃんがカエルさん作ってんだろうが!』

 

『みい子ちゃん萌えー』

 

『おい!!!』


 

「こ、い、つ、らああああーー! わたしのコメントをガン無視しやがってーー!」


「コメントの流れが速すぎて、誰にも読まれてませんね。まあ読んだところで聞く連中でもないでしょうし……あれ?」

 

 その時、みい子チャンネルの画面に異変が起こった。

 

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