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炎城寺紅子の炎上  作者: 秋野レン
シーズン5 史上最大の戦い
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第5話 人狼ゲーム⑤「火蓋切る」

 七枚の役職カードは、すぐに六郎太の手によって回収された。


「さて、今配られたカードは各自、自分のものしか分からんわけだが、七枚の構成は教えておく」


 六郎太は手元のカードをふたたびシャッフルして、テーブルの上に表向きで並べていった。


「『人狼』が二枚。『村人』が四枚。『騎士』が一枚じゃ。『騎士』は当然村人チームに属する」


「え……」


「はあ!?」


 紅子以外の六人にざわめきが走った。


「能力持ちは『騎士』だけ!? 『占い師』も『霊媒師』もなしですの!?」


「こんな役職構成聞いたことないわよ。そもそもゲームとして成立するの、これ」


「スーパーアルティメットエキスパートルールじゃからの。シンプルなルールほど難しいというわけじゃ」


「それにしても『占い師』がいないとは。完全にノーヒントで『人狼』を見つけ出せということですか」


「そこが一番の見どころじゃ。お前たちの推理力、すなわちプレイヤースキルに期待しておる」


「また横文字使って若者ぶってるし」


 人狼初心者の紅子には、彼らが何を言っているのかさっぱり分からない。


「何を言ってるのかさっぱり分からないって顔してますね、お嬢様」


 イルカが察してくれた。


「そうよ。初心者を置いてけぼりにしないでちゃんと説明しなさいよ」


「まー、つまりですね。人狼ゲームって、普通ならもっと特殊能力をもったカードがいろいろあるんですよ。ほら、そっちの額縁の中に残ってる『占い師』とか『霊媒師』とか。これらは能力により『人狼』を見つけ出すヒントを得られるんですが、今回のルールではそういう要素が一切排除されている。純粋に、自らの推理だけで『人狼』を当てないと駄目ということですね」


「ふーん。だったら人狼チームが有利ってことなの? あ、別にわたしが人狼だとかそういうことは全然ないんだけど。マジで」


「そこはお前たちの頭次第じゃ」


 六郎太が答えた。


「プレイヤーが全員凡人なら、確率的に人狼チームが圧倒的有利じゃろうな。が、そんなチャチな計算を吹き飛ばす頭脳戦を、お前達なら見せてくれるだろうと思っておる。というか五輪グループを継ぐ気なら、それくらいの才能は見せてもらわんとな。ふぉっほっほ」


 なかなかに挑発的な言い方であった。


 そして五輪一族の血統は、挑発を受けるほどに燃えるのだ。


「『騎士』ってのはなんなの?」


「『騎士』は夜フェイズにて一人プレイヤーを指定して、『人狼』の襲撃から守ることが出来る。『人狼』が狙ったプレイヤーを『騎士』が守っていたら、そのプレイヤーは死ぬことなく次の日を迎えられる。ただし『騎士』は自分自身を守ることはできん」


「ふーん……」


「紅子、他に質問はあるか?」


「いや、大丈夫。完全に理解したわ」


 実際のところ、紅子の頭ではあまりはっきりルールを理解できなかったが、やってるうちに分かるだろうと考えたのだ。


「ぶっちゃけあまり理解できなかったけど、やってるうちに分かるだろうって考えてますね、お嬢様。大丈夫ですよ、分かんないことがあったら、わたしがその都度解説してあげます」


 イルカが、またいちいち察してくれた。


「皆、役職の構成は分かったな? お前たち七人の中に『人狼』が二人、『村人』が四人、村人チームに属する『騎士』が一人おる。村人チームは『人狼』を見つけ出し、人狼チームはその追求をかわし、お互いの陣営を殲滅した方が勝ちとなる」


 六郎太が話をまとめる。


「最初のターンの夜フェイズは日付が変わった直後、今夜0時から開始する。その次の昼フェイズの投票は明日の夕方6時に行う。その夜0時にまた夜フェイズじゃ。それ以外の時間は自由。集まって相談するのも良いし、部屋で一人じっくり考えるのもかまわん。各自、好きにせい」


「え、そんなに時間かけるの?」


「リアルの時間経過と合わせてゲームを進行させるわけですか」


「うむ。この大勝負、普通の人狼ゲームみたいに十分そこらで終わらせてはつまらんじゃろ。盛り上げるための演出じゃよ。このルールでは、ゲームの決着まで大体三日くらいじゃな」


「凝ってますねえ」


「そんな演出のために、こんな島に何日も拘束される身にもなってほしいんだけど」


 美雷の文句を無視して、六郎太は続ける。


「ちなみに途中で脱落したものは、この島の反対側にある別館に移ってもらい、ゲーム終了まで待機じゃ。当然ゲーム中の人間と連絡をとることは禁止。そのためにスマホや通信機器のたぐいはすべて預からせてもらうからの」


「別館ですか。あそこは十年くらい前に使われなくなって、ずっと放置されてると聞きましたよ」


「そうじゃ。だから別館はここと違って大分ボロっちいぞ。よい暮らしがしたいなら、脱落しないよう頑張ることじゃな。はっはっは」


 六郎太は愉快そうに笑い、手を叩いた。


「さて、説明は以上。何か質問は?」


 誰も口を開くものはいなかった。


「よし、それではゲームスタートじゃ。最初のターンは日付の変わる今夜0時から開始する!」


 かくして、史上最大の戦いは火蓋が切られたのだった。


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