ネオ・ブリザードの午後8時半劇場 ④
それは、いつーも、何時もの日の事でした。
とある一軒家に、お婆さんがひとりで暮らしておりました。
ある日、お婆さんが居間でお茶を飲みながらくつろいでいると、長年愛用している黒電話がけたたましくなり響きます。
「はいはい、誰ですかいね?」
お婆さんはゆっくりと立ち上がり、腰を曲げながら電話に向かいます。
「もしもし? どちらさん?」
お婆さんが電話に出ると、相手の男はこんなことを言って来ました。
「もしもし? ○○さん? 実は今、なんやかんやで○○さんの還付金が返って来るんですよ」
それを聞いたお婆さん、良く聞こえないのか、こんなことを言って返します。
「あー……すいませんが……耳が遠くてのお……もう一度言ってくれんかのお……」
そう言われた相手の男。ちょっと口調を荒らげながらお婆さんに説明します。
「えーとですね! ですから! ○○さんの、還付金が、戻ってくるんですよ! 銀行で受け取」
「うー……すんませんが、電話が遠くてのお……申し訳無いが、もう一回説明してくれんかのう……」
お婆さんは、やはり良く聞こえないのか、相手の男が説明している最中に口を挟んでしまいます。
相手の男は、本性を口調に表すように、口が悪くなって行きます。
「だーかーらー!! ○○さんのね!! 還付金がー!! 戻ってくるんだってば!! 解る!?」
「あー……すみませんが、あなたとの心の距離も遠いみたいでのお……」
これを聞いた相手の男は、ついに怒り出し、お婆さんに食ってかかります。
「てめえ!! さっきから何様のつもりだ!? 良いからさっさと還付金を」
「あんたの言ってる事、良く解らんから、今から録音させて貰うわ」
「失礼しましたー」
相手の男はそう言うと、さっさと電話を切ってしまいました。
お婆さんは、受話器をそっと置くと、腰を曲げながら居間に戻り、お茶をすすります。
「ふー……還付金詐欺も大変じゃのう……」
……おしまい。