ある日の物語
僕は朝いつものように朝食を済ませて制服を着て「行ってきます」と言わずに家を出た。いつもはまだどこかで顔を出していた夏が今日はどこにも見当たらなかった。腕まくりをした腕の肌を冷たい風がくすぐる。季節外れのセーターを鞄から出して腕に通した。やっぱりセーターもくすぐったかった。そして僕はイヤホンを耳にして駅に向かった。
着いた駅はいつもよりも騒々しかった。幾らかのサラリーマンが改札の手前で耳に携帯を当てなにか話している。僕はその様子を横に改札を通った。ホームには不自然な位置で止まっている特急列車、急いで何か確認している駅員の人。遠くからいくつかのサイレンの音も聞こえた。今までこんなことは一度もなかった。
僕の使っている駅は隣駅に比べるとこじんまりとした造りで、
特急列車は止まらないはずだよな、何かあったのだろうかと考えを巡らせていたがスピーカーの音が遮った。
「ただ今当駅で人身事故が発生しました。その影響でーー線上り列車は一時運転を見合わせています。お忙しいところ大変申し訳ありません、、、」
正直、めんどくせぇと思った。そして遅刻しないかどうか心配になった。携帯で友達と連絡を取りながら電車の列のおばさんの後ろに並んだ。やっぱりセーターをしていても寒いな、と思った。
10分後だろうか、まだ携帯をいじってた僕の前の特急列車が動き出した。ぎこちない音を立てて動き出した列車が通り過ぎ時おばさんから小さな悲鳴が聞こえた。僕も息を詰まらせた。よく見えなかったが、そこには何かを引きずったであろう赤い跡、散らばった赤黒い固まりがあった。頭の中が真っ白というのはまさにこのことを言うのだろう。僕の手から携帯が滑り落ちた。イヤホンも抜けそのまま地面に落ちてしまった。落ちた携帯が僕の止まっ
た思考の歯車を再び回転させた。真っ白だった頭の中を小学生が書いた絵のように周りのいびつな風景に色が足されていく。完成した絵に少しずつ修正を加えながら僕はやっと落ち着きを取り戻した。
自殺だった。通過する特急電車に自ら身を委ねたらしい。向かいのホームの片隅にはまだブルーシートではなく真っ白な布を被せてある何かがあった。その真っ白な布がどこまでも真っ白でまた頭の中に吸い込まれそうになった。なんとか重力に逆らっている僕に誰かが話しかけた。
「私警察のものなんですけど、一部始終を目 撃した方を探していまして、、、
少しでも目撃していないですか?」
いえ、僕は呟いた。
「そうでしたか、、」
そしてその警察の方はまた同じように他の人に声をかけた。
まだ僕の頭は眠っているのだろうか?ぼーっと立っていることしかできなかった僕は運行再開したというアナウンスに気づかなかった。やっとやってきてた電車もぎこちない音を立てながら止まり、扉が開いた。電車の中はいつもと同じように、携帯をいじっている人、新聞紙を広げ熱心に読んでる人、友達とヒソヒソ話をしている人で溢れてた。
初投稿です。文学に興味があり描き始めてみました。まだ人生の経験も浅く、世のことなど何もわからない男子高校生が実際に経験したある出来事を境に少し成長した?物語です。
ぶっちゃけ自己満です。でも一人でも多くの人に見てもらいたいなと思います。感想など送ってくれると嬉しいです。