始まり-2
阿久津 隼人は、日本生まれの高校2年生である。彼女どころか友達すらいない、いわゆるボッチだ。そんな帰宅部の少年は、学校が終わると寄り道もせず家へダッシュ。アニメを見て漫画を読みゲームするという、ニート予備軍と呼ばれてもしょうがない生活を送っていた。そして…
「気づけば異世界召喚って…もはやわけわかんねぇな」
出来の悪い夢でも見ている気分だが、頬をつねっても目は覚めない。
「ここがファンタジー異世界だとして、文明はお約束の中世風っとこか。見たところほとんどの建物は石材と木材で、機械類はなしと…」
異世界人とのコミュニケーションの可否と、物の価値観への認識について。異世界召喚されたと気付いた隼人は迅速に確認を行っていた。幸い、言葉は無事に通じたし、商いも『リッチ』という硬貨のやり取りなのは確認できた。
こういう状況の理解が早い点に関しては、アニメ・ゲームに毒された現代日本の若者で良かったとつくづく思う。異世界召喚なんて現象は、思春期の男子にとっては一種の夢であるといっても過言ではない。それゆえに…
「……武器の一つぐらいあってもいいじゃんかぁー!!」
理想が高かったからこそ、何もない現状に絶望していた。所持品は、スマホと財布のみで、装備も武器や鎧は見当たらず召喚前となんら変わりはない。アニメや漫画ではお決まりの、美少女召喚者がいる様子もなく、超能力が使えるようになったわけでもない。
隼人は思った。これは、自業自得だ。何の努力もせずに、嫌なことから逃げ続け、毎日を適当に生きていたことに、バチが当たったのだ。そして、決めた。
この世界に、これ以上期待はしない。