GA-07◆「新古の時代」
■新古の時代
神聖スール帝国と漠羅爾旧王朝――二つの全く文化が異なる巨大な勢力がぶつかるのは時間の問題でした。それでも、初期の頃は互いに商業的な交流は維持されていました。神聖スール帝国から漠羅爾旧王朝へ、両勢力を分けるスルハート山脈を越えて、幾つもの隊商が神聖帝国の帝都と、王朝首府を往復していました。しかしながら、既にこの頃から文化・習慣の違いから、小さなすれ違いは生じていました。それらは、全体の大きな流れの中では問題にならないレベルでした――あの惨劇が起こるまでは。
BC(Before Common Yearの略)100年。一つの漠羅爾隊商が、スルハート山脈を南北に抜ける峠道を北上しておりました。神聖スール帝国で荷を降ろし、代わりに漠羅爾旧王朝では好まれる嗜好品を満載した隊商の足取りは遅く、非常にゆっくりの移動速度でした。丁度神聖スール帝国の勢力圏を抜け、漠羅爾旧王朝の版図に入ろうとする頃に惨劇が起きました。巨大な龍に跨った黒衣の戦士が三騎、隊商を襲ったのです。短い、血生臭い戦闘の後、隊商は壊滅。動く者が居なくなったのを見とり、黒衣の戦士三騎はその惨劇の場所を去りました。
しかし、全滅したと思われていた隊商には、一人だけ生き残りがいたのです。最初の龍の火炎放流で吹き飛ばされて意識を失ったのが幸いし、惨劇を生き延びました。呆然として倒れた仲間の間を彷徨う内に、その者は煌めく剣の破片を見つけました。柄だけとなったその剣には、くっきりと神聖スール帝国親衛騎士団の紋章が刻まれていました。
[続く]