GA-06◆「中古の時代」
■中古の時代
West Heaven(西方楽土)が崩壊した後、エルス──正しくはエーリック大陸上の民族の流れは、東方を目指しました。大災厄に見舞われ、大地と時間すら捻れた彼の地を背後に封印し、山脈を越え、ステップを渡り、肥沃であろうと噂される大陸東部に向かったのです。そして、最初の大きな民族の流れが、周囲を高い山脈で囲まれた広大な土地に根を下ろし、そこに国家を建設しました。これが、神聖スール帝国(Holy Suel Empire)──この時代の片方の雄の起源です。迫り来る災厄から漸く逃れたとはいえ、その悲惨な記憶はその後も長く国民の心に影を落とし、漸くこの影響が薄れてきたのは第三代神聖皇帝の御代になってからのことでした。
BC5000からの一千年間は、神聖スール帝国は特に相対する相手もなく、平和に国造りに邁進しました。West Heavenを模した巨大な都、聖都が国の中央に建設されたのもこの時代です。神聖帝国の威光は国の隅々まで届き、国民は繁栄を謳歌していました。
その繁栄に、かげりが出来てきたのはBC3500頃からです。北の山脈(スールハート山脈)の向こう側のステップ地帯に遊牧民が集まり、徐々にその中で力を持った族長が氏族を纏め始めたのです。最初、繁栄の絶頂にあった神聖帝国は、これらの動きに見向きもしませんでした。己が力の慢心の始まりでしょうか、“この国に敵う者無し。この国の民は特別”という選民思想の兆候が、徐々に国の指導層と民の間に顕れるようになってきました。
BC3000、北のステップ地帯で初めての王国が誕生しました。一人の若い族長が遊牧民の氏族ほぼ全てをまとめ上げたのです。その若者の名は龍王・漠羅爾、漠羅爾古王朝の始祖でした。彼は、ドラミディ大洋沿岸に都『大都』(今の恵久美流公国首都の場所)を創ると、瞬く間に国の体制を整えていきました。そして、龍王・漠羅爾が没する迄に、神聖スール帝国の北には強力な新国家が誕生していたのです。