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混合世界は永遠に  作者: 黒空-kurosora-
異世界と現実世界
3/4

異世界の魔物

この混合世界での生活が始まって、一ヶ月と少し。異世界人の少女、アルフレアと共に暮らすことになった青葉 閃と青葉 唯の兄妹は今日もまた、新たな問題に直面することになった。

「どうしよう…」

唯は頭を抱える。

その理由は今朝聞いた話が原因であった。

今朝、二人はアルフレアを家に残して山を降りたところにある畑で農家の手伝いをしていた。

報酬として採れたての野菜をもらう時、こんな話を聞いたのだった。

「二人とも聞いたか?

なんでもこの辺、魔物が現れたんだとよ」

………魔物。

二人はまだ見たことがなかったが、その噂はギルドへ行ったりしている内によく聞いていた。

基本的に身体能力が現実世界の人よりも高い異世界人ですら、命を落とす危険性があるほど強力な存在であるという。

そんな存在が近くにいるとなると…。

「ここを出て行かなくちゃいけないかもしれないよな…」

という経緯で、彼らはこの問題をどう対処するか、頭を悩ませていたのだ。

そこでアルフレアはある提案を持ちかけた。

「マリーさんに?」

「うん、マリーさんに協力して、逆に依頼を出すことはできないかな?」

「報酬と引き換えに、か」

確かに。それはあまり考えていなかったがいい発想かもしれない。

……だけども。

「…でもいまギルドって人手不足なんだろ?

俺たちの依頼なんて受けてくれるのかな?」

閃はそのことが気がかりだった。

依頼自体は出せるだろう。それでも人手不足のこの時に果たして引き受けてくれるような人はいるのだろうか…。

閃たちは悩んだものの、取り敢えず今残ってるお金を報酬にして、ギルドに依頼を出してみることにした。



次の日、ギルド『エナジーフラワー』にて。

「ふむふむ、そんなことがあったのですか。

確かにそれは困りましたね…」

アルフレアの寝床を用意するために依頼をこなしていた閃たちはすっかりマリーと親しくなっていた。

「そうなんだ。人手不足な状態であることはよくわかってる。だけど頼めないだろうか?」

「もちろんですよ!閃さん達のおかげで、随分と助かりましたから!」

彼女は手慣れた手つきで依頼の紙を書いていく。その速さは相変わらずのものだった。

「…そういえば、混合世界…になって、色々困ってる人もたくさん増えたんだよね?

「そうだな」

アルフレアの疑問に答える閃。

「折角報酬まで用意してるのにどうしてギルドでの依頼でやってきた人たちは依頼を受けようとしないんだろう?」

その疑問にマリーは。

「…多分、警戒してるんだと思います。

私たち…異世界人と呼ばれる人たちは見知らぬ土地に好んで行きたがりません。

もちろん理由があるのですが、それはまた別の話で…」

3人はその理由が何なのかも少し気になったのだが、取り敢えず話の続きを聞くことにした。

「つまり、現実世界と閃さんたちが言っている世界は、私たちから見れば『異世界』になります。そんな世界と融合してしまったんです。

異世界人の中でも特に危険を冒さずに依頼を遂行する人たちからすれば、今のこの世界は警戒せざるをえません。

だからではないでしょうか?」

異世界人の意外な習慣を知ることができた閃たちは依頼の紙をギルドの看板に貼り出して家に戻ろうとした。

「あ、ちょっと待ってください!

ちょっと危険かもしれないですが、もし早期に解決を望むならもう1つ方法がありますよ!」

閃たちはその方法が気になったため、再びギルドのカウンターへと戻っていった。



「閃さんと唯さんは私たちと比べると身体能力に関しては劣ります。

現実世界の人たちはついついそこから『魔物は自分たちには到底敵わない存在』と思われがちなんですが、意外とそういうわけではないのですよ」

「そう、なのか?

つまり俺たちでも魔物は倒せる存在だと?」

あまりの意外な言葉に首を傾げる閃。

マリーはそのまま言葉を続けて。

「はい。確かに正面から向かえばもちろん勝ち目は薄いですが、工夫次第では何とでもなります。魔物にも人間と同じく好き嫌いがあります。匂いだとか環境だとか。

それを狙っていけば現実世界の人たちでも倒せると私は思います」

「…閃、どうする?

私たちで解決できるかもしれないけど…」

「うーん…」

閃としてはそれもいいと思った。

だが、彼が良くても、唯やアルフレアに何かあったらと思うと中々その選択は選びにくいものだった。

「私はそれでいいと思うけど?

今の場所以外アテがあるわけでもないし」

そう、仮にここを出て行くとしても、閃たちに行く場所があるわけではないのだ。

それを悟った彼は、戦うという選択を選んだ。



「それで、どんな魔物だったんですか?」

マリーは小さな紙にペンを持って、閃たちに魔物の特徴について問う。

「うーん、確か、4足歩行の獣って聞いたぜ。

あまり大きくはないけどすばしっこいんだとか」

「なるほど…」

マリーはそう言って、すらすらとペンを走らせた。今度は文字ではなく、絵を描いているようだった。

マリーの手際はやはり良くて、その絵はどんどん形をなしていった。

「今の情報で推測されるのはスティールウルフだと思われます。

盗賊のように素早く動くことからそう名付けられているとか」

「強さ的にはどうなんだ?」

「問題ありませんよ、油断さえしなければ現実世界の人たちでも十分に対処できるレベルかと思われます」

その言葉を聞いて、3人は俄然やる気が湧いてきた。

「それで、どうやって倒せばいいんだ?」

「罠です」

「……罠?」

アルフレアたちは呆気ない対処法に思わず言葉を反復してしまう。



その日の夜、閃たちは半日ほどかけ、罠を張り巡らせることに成功する。

その罠とは…。

「そうなのか?」

「スティールウルフは知性が高いと言われているウルフの中でも比較的、知性が高くないので、ある程度しっかり罠を張れば騙されてしまうんですよ」

マリーに聞いた有効的な罠で、スティールウルフを撃退する、それが目的だった。

閃たちが張った罠はトラバサミというものを使ったものだった。

現実世界でも狩りなどに用いられるトラップ。

ゲームとかでも時折登場するのでトラップの中では比較的ポピュラーなものだろう。

偶然ではあるもののマリーが幾つか所持していたため、譲り受けた。

「スティールウルフってここら辺が危険だと判断したらまた違う場所にいく習性があるんだっけ?」

アルフレアはその後マリーに聞いたスティールウルフの習性を再度確認する。

「そのはずだ。トラバサミに引っかかってそのまま逃げ出してくれるのが一番効果的なんだけどな…」

それほど予想通りに上手くいくのだろうかと閃は考えていたため、一応最低限の武装をしてスティールウルフがやってくるのを待っていた。

すると、どこからか足音が聞こえてくる。

おそらく、ではあるが人のものではない。

茂みから姿を現したのは、マリーが描いたスティールウルフの絵と瓜二つの姿をした獣だった。

「…来た」

そう呟いてスティールウルフが罠に引っかかるのを待つ。

実はトラバサミにはスティールウルフの好む匂いがする液体を塗っている。

上手くいけば…。

トラバサミが動く音がする。

引っかかった。獣が呻く声が森中に響き渡る。

その音に反応し、引っかかったスティールウルフの仲間たちが次々と姿を現していく。

「閃!」

「ああ!作戦通りに行こう!」

閃たち3人はそれぞれが異なる方向で走り出す。

それに釣られるように、スティールウルフの仲間たちはそれぞれの方向へと追いかけていく。

「…というか速っ!?」

記憶喪失で魔物のことに関しても疎くなっているアルフレアも、魔物自体と相対するのが初めての閃たちも甘くみすぎていた。

元々の考えでは一匹が引っかかり、寄せ集まってきたウルフたちを設置したトラバサミの位置まで誘導し撃退するという考えだった。

ウルフの動きが速いことも聞いていたが、何とかなるだろうとタカをくくっていたのだ。

つまりどういうことかというと。

元々異世界人のアルフレアですら追いつかれそうなほどのスピードでウルフは向かっているのだ。

当然現実世界の閃たち兄妹がそんなウルフたちに逃げ切れるわけもなく、その距離は徐々に縮まっていった。

だが、そんな絶体絶命ともいえる状況で閃は少し頬が緩み。

「…けど、予想外ではあるが想定内だ!」

そう言って彼は急に方向転換を始める。

急スピードで走り抜けていたウルフたちは閃が曲がった方向に合わせて曲がろうとする。

しかし、曲がろうとするその瞬間に。

足元にあるトラバサミが作動する。

バネを利用したこの罠で、ハサミという名を冠するようにウルフの体を挟み込む。

「よし!敢えて近い距離でトラバサミを設置しておいてよかった!」

一方唯やアルフレアも同様の方法で何とかこの辺り一帯に生息するすべてのスティールウルフの撃退に成功する。

後日、この作戦のことをマリーに話すと、なんて無茶なことをと、こっぴどく叱られてしまったが、そのことも含めて現実世界の人でも魔物を倒すことはできる、ということを知ることができた。



その夜、浴室にて。

「あー、不安もなくなったし。

しばらくの間くらいは普通の生活をしたいな」

閃はここ数日の続出した問題を振り返りながら、自分の身体にお疲れと言いながら湯船に浸かる。

「…アルフレア、か。

流れで俺たちとこの世界で過ごそうとは言ったものの。

彼女は一体どこから来たんだろうか…」

まだその素性に謎が多いアルフレア。

彼女自身に記憶がないのだから仕方ないとすれば仕方がないのだが。

自らの髪から滴る水が落ちていく音だけが響き渡る中で、閃は思想に耽る。

「…まぁ何もわからないんだから考えても仕方ないか。

とりあえず一緒にいて。何か思い出せそうなことがあったらちゃんと聞けばいいさ」

そう言って彼は思考を止める。


それから数分が経った後、浴室のドアから音がする。

「唯ちゃんも寝ちゃったし、そろそろ私も風呂入らないとね。髪ベタベタになっちゃうし」

………。

数分前の思考を止めたとはまた別の状態に陥っている。

止めた、というよりこれは思考停止、だろう。

浴室の中にアルフレアが入ろうとしてきた。

当然、浴室なのだから衣服をまとっているわけではない。

そして思考停止しかけてしまっている閃にアルフレアも気付いてしまい、お互い少しの沈黙と硬直状態に陥ってしまった。

…その後、2人の叫び声が室内に響き渡ったとか、渡ってないとか。

久しぶりの更新です。

オチがラノベにありそうな感じですね。

とりあえず当初の予定通り、暫くはキャラを知ってもらうことも兼ねて1話完結型のお話が続くと思います。

「暁月の栄光歌-グローリア-」の方も実はこっそり進めてたりします。

まぁ今はこんせかや幸せを掴むためになどの方に力を入れているので、やはり更新ペースは遅いと思いますが、そちら含め。

全部見てくださると嬉しいです。

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