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掌編小説集7 (301話~350話)

山向こう

作者: 蹴沢缶九郎

四方が山に囲まれた小さな村に、四人の若者がいた。ある日、一人の若者が山を指差し言った。


「なあ、あの山の向こうは一体どうなってるんだ?」


生まれて一度も村を出た事のない彼らが、そんな疑問を抱くのは当然であり、山向こうが未知の世界である彼らに、その疑問が答えられるはずもなかった。

各々が山を見つめる中、誰かが提案した。


「わからないのであれば、行ってみれば良いではないか…」


それは至って単純、全く以てその通りの発言に、その場の誰も異論を唱える者はいない。


「よし、ならば実際に出掛けてみよう…。しかしどうだろう、皆で同じ方角に出向いてもつまらなくはないか?」


「うむ、確かにそれは言える。山向こうの景色が全て同じとも限らないからな…。では、皆ばらばらの方角に行こう。そして、皆が山向こうで見た光景を、一週間後、この場所で話すとしよう」


話は纏まり、それぞれが東西南北、それぞれの方角へと旅立っていった。

それから一週間が経ち、北の方角から戻った若者は、「山の向こうには高い壁がそびえ、それ以上先には進めなかった」と、拍子抜けした様子で言い、南の方角から戻った若者は、「絶えず同じ光景が続き、諦めて帰った」と、がっくり項垂れた。

東の方角から戻った若者は、鳥に姿を変えて何かをさえずり、西の方角に向かった若者は、とうとう村に戻る事はなかった。


世の中には敢えて知らなくていい事もあり、知らない方が幸せに暮らせる場合もあるのだ。

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