1/2
プロローグ
「す……好きですっ」
彼は一瞬、驚きの表情のまま動きを止めた。
「それは、恋愛的な意味でかな? それとも友達としてかな?」
「れ、恋愛的な意味で」
「僕のことが、かい?」
彼女は真っ赤な顔をしたまま頷いた。
「そりゃまた随分な変わり者だね」
彼はさも可笑しそうに笑った。
「でも、こんな僕だって、好きと言われて不愉快な気分になったりはしないさ」
彼女の表情は心なしか緩んだ。
「そ、それじゃ、あの、付き合っては……くれませんか?」
「それとこれとは、また違う話でしょ。君と付き合って、僕に何かメリットでもあるのかい?」
「メリット……」
彼女は押し黙ってしまった。
「アハハ。君、かわいいねぇ」
そんな彼女を彼は愉快げに眺めていた。
「そんじゃあ、仕方ないなぁ」
彼は彼女の耳元にそっと口を寄せた。
「僕を本気にさせてよ」
そう囁くと、彼はスッと体を引いた。
「じゃ、そういうことで。ばいばーい」
ひらひらと手を振りながら、彼は飄々と歩み去って行った。