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クロカンブッシュの小物入れが完成してから数日経ち、デコレーション部分がしっかり乾いたのを確認した私はカイトさんを呼び出しました。
「こんにちは、シオン。」
「こんにちは、カイトさん。急にお呼びしてごめんなさい。」
「いや、大丈夫だよ。予定は開けておいたからね。」
急に呼び出した私にカイトさんは爽やかな笑顔で答えます。
「ありがとうございます。ちなみに今日はカイトさんのお母様はご自宅にいらっしゃるのですよね?」
「うん、居るよ。母様にはシオンを連れて来るから予定を開けておいてって伝えておいた。母様もシオンに会えるのを楽しみにしているみたいだよ。」
「それなら良かったです。」
「あ、早速だけど……」
「はい、こちらですね。」
と言って私は手に持っていたクロカンブッシュの小物入れをカイトさんにお渡しします。
「……うん、綺麗に出来てる。これなら母様も喜んでくれるかな?」
「ええ。カイトさんが心を込めて作った物ですから、尚更喜んで下さいますよ。」
「そうだったら嬉しいな。」
小物入れを眺めなら照れた様に言ったカイトさんの年相応のその姿に、少し萌えてしまいました。
……と、そんな事を考えている場合では無かったですね。
「あ、カイトさん。そちらの小物入れなんですが」
「うん?」
「さすがにそのままお渡しする訳にも行きませんので、こちらに入れてお渡しするのはどうでしょうか?」
と私はクロカンブッシュの小物入れがちょうど入りそうな可愛い花柄の紙袋を差し出しました。
「元々何かの袋に入れて渡すつもりだったんだけど……、こんな可愛い袋を貰ってしまって良いのか?」
「はい。以前雑貨店で一目惚れして買ったのですが、今まで使う機会が無かったので……。」
「そうなのか?シオンがそう言うならありがたく使わせて貰うよ。」
カイトさんは私の差し出した袋を受け取り、型崩れしないように慎重に袋に小物入れを入れて封をして、大事そうに抱えました。
「さ、外で馬車も待っているしそろそろ行こうか?」
「はい。では準備してきますね。」
と言って私は一旦部屋へ行き出かける準備を手早くし、カイトさんの元へと戻りました。
「お待たせしました。」
「いや、全然待ってないよ。……じゃ、行こうか。お手をどうぞ?」
いつの間にか小物入れを預けていたらしいカイトさんはいつもの様にスマートに私の手を取り、馬車へ乗り込んだのでした。




