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昼食を終えて一息つき、そろそろ帰る時間になりました。
祖父と祖母、そしてギルバートさんが玄関まで見送りに来てくれました。
「シオン、フィリア。また時間が空いたらおいでね
。」
「はい、お祖父様。また来ますね。」
「今度はエクスやマリーも一緒に来れたら良いわねぇ。」
「そうですね。今度は学校がお休みで、お兄様とお姉様が家にお帰りになった時にお誘いしてみます。」
「フィリアも、次はエクスお兄さまとマリーお姉さまとも一緒に来たいです。少ーし寂しいので……」
フィリアは少ししゅんとしているので、
「そうよね。いつも別邸に来る時はお兄様とお姉様も一緒に来てましたものね。」
と言って、フィリアの頭を撫でました。
「……はぃ。でも、シオンお姉さまと二人だけでも楽しかったですよ!」
フィリアは私に頭を撫でられながら上目遣でにっこり笑いかけてきました。
そんな私達を微笑ましく見ていたギルバートさんでしたが、
「……あ、」
何かを思い出したのか、はっ、とした様子で呟きました。
「ギル殿?どうかしたかい?」
「えっと……実はですね、お渡ししたい物があるのですが」
「渡したい物?」
「はい。これなのですが……」
と、ギルバートさんが懐から出してきたのは小さなカードでした。
「貴重な家族団欒にお邪魔してしまったお詫びに、こちらをお納めしていただきたいのですが……」
「……それはノワール商会の優待証?私も以前貰った記憶があるな。」
「はい。なのでこれはシオン様にお納めいただきたいのです。ノワール商会の系列の店を良く利用していただいているようですし、良ければお使い下さい。」
ギルバートさんは私の目の前にやって来て、優待証だという小さなカードを渡してきました。
「えっと、ありがとうございます。使わせて貰いますね。」
「はい。ちなみにその優待証の簡単な説明ですが、その優待証を見せれば店舗ごとに様々な優待が受けられます。例えば、購入していただいた商品が割引されたり、優待証をお持ちの方専用の個室が使用できたり、などです。」
ギルバートさんはニコニコしながら優待証の説明をして下さいました。
「き、貴重な物をありがとうございます、ギルバートさん。」
「いえいえ。あっ、長々お引き留めして申し訳ありませんでした。」
「こちらこそ、丁寧に説明していただいてありがとうございました。」
(子供の私達にまで丁寧に応対していただける方なんて、中々いらっしゃらないですよね。)
そして話も一段落したところで、私達は馬車へと乗り込み帰途へとついたのでした。




