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今日取ってきた果物を使ったお菓子を祖母に作って貰ったり、ジャムを一緒に作ったりして、その日は過ぎていきました。
そして翌日。
例の、祖父の友人であるギルバートさんが訪ねて来ました。
「おはようございます、ローゼット様。」
「おお、おはよう。ギル殿。良く来てくれたね。」
「おはようございます、ギルバート殿。」
ギルバートさんの挨拶に、祖父と祖母がにこやかに答えます。
ちなみにギルバートさんの容姿は黒髪黒目の、東の国の方に多く見られるものでした。現代風で言えば、塩顔のイケメンさんってところですね。歳は20代半ばくらいでしょうか?
ただ、やっぱりこのギルバートさんというキャラクターは記憶に無いのですよね。
商会の長をしていますし、名前くらいは出てもおかしくは無いと思うのですが……。
「昨日は突然伺ってしまい申し訳ありませんでした。」
「いや、こちらこそ、昨日は申し訳無かった。ちょうど外出してしまっていたものでね。」
「はい。執事殿にお聞きしました。何でも、お孫様がいらっしゃったとか。」
「そうなんだよ。ああ、まだ挨拶が済んでなかったね。……二人とも、ギルバート殿にご挨拶しなさい。」
祖父は私達に促してきました。
「おはようございます。初めまして。シオン・ローゼットと申します。」
「おはようございます。フィリア・ローゼットともうします。」
「おはようございます。初めまして、シオン様、フィリア様。ギルバート・ノワールと申します。お二人のお祖父様とはお友達なんですよ。」
ギルバートさんは私達の挨拶に、目線を合わせて穏やかな笑みで返してくれました。
「そう。昨日話したと思うけど、ギル殿は私の友人だよ。趣味が同じアンティークの家具や雑貨の収集なんだ。」
「はい。私もアンティークの家具や雑貨などを収集するのが趣味なのです。」
「ギル殿とは以前、アンティーク雑貨の展示会に行った時に出会ってね。意気投合したんだ。」
祖父はとても機嫌が良さそうに話しています。
「最初はローゼット様と知らずにお話させていただいたのですが、お名前を聞いて驚いてしまいました。」
「最初は名前を伏せていたのだけれどね。名乗らない訳にもいかなかったからさ。」
「でも、名乗っていただいた後も変わらずこうしてお付き合いさせていただいてとても嬉しいです。」
祖父とギルバートさんは和やかな雰囲気で会話をしています。
「……旦那様、そろそろギルバート殿を中にご案内してはいかがかしら?」
「おお、そうだな。ギル殿。今日もゆっくりしていってくれよ。」
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます。……あ、お渡しするのを忘れていました。私の経営する店で売っているお菓子なのですが、良ければどうぞ。」
「まあ、ご丁寧にどうも……って、あら?」
「どういたしましたか?」
「これ、確か昨日シオンちゃんが持ってきてくれたお菓子の包装紙と同じじゃないかしら?」
祖母が受け取ったお菓子を包んでいたのは、確かに私が買った菓子セットの包装紙と同じでした。
「本当ですね。確か……"さくら"というお店でしたっけ?」
「はい、そうです。私の経営する店の一つなのですが、すでにご来店いただいているとは驚きました。良い店と自負しておりますが、東の国の菓子はお口に合いましたか?」
「はい。お店は私の婚約者さんに連れて行って貰ったのですが、東の国のお菓子、とても美味しかったです。なのでお祖父様とお祖母様に食べていただきたくてお土産に買わせて貰いました。」
「お口に合った様で良かったです。またご来店待ちしておりますね。」
「はい。また伺わせて頂きますね。」
私は、ほっとした様子のギルバートさんに笑顔で答えました。
その後ギルバートさんからオススメのお菓子を教えて貰いながら、私達は居間へと向かったのでした。




