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用意してあった軽食をいただいた私達は、食休みをした後、祖父と祖母と一緒に出かける事になりました。
出かけるといっても、この別邸があるのは大きな街ではないのでいつも散歩がてらに徒歩で町を散策しています。
この町は土壌が良いのか、農業が盛んです。
(別邸の一区画にはこの土壌を生かした小さな菜園があります。)
今日は顔見知りの方が経営する大きな果樹園に行く事になりました。この果樹園の果物はお金を払えば持ち帰る事もでき、私は何回か来た事があります。
「あそこの果物は本当に美味しいからね。採りたてなのもあるけどさ。」
「そうですね。王都で売っている果物と比べ物にならない位新鮮で美味しいです。」
「今は何の果物がなっているのかしらね?」
「うーん、何だろうね。季節柄、林檎や葡萄かな?」
祖母の質問に、祖父は唸ってから答えます。
ちなみにこの世界は果物類はもちろん、食べ物すべて前世の世界の食べ物と同じ名称です。
これは本当に助かりました。
「さ、着いたよ。」
雑談しているうちに、あっという間に果樹園に着きました。
そして果樹園に入るために受付に向かいました。
「あら、こんにちは。お久しぶりですね。」
受付には、人好きのする笑顔を浮かべた女性が居ました。この女性はこの果樹園の主の娘で、いつも受付をしています。
「こんにちは。今日は四人で果物狩りをしに来たよ。」
「ありがとうございます。そちらのお嬢様方もお久しぶりですね。父も喜ぶと思いますよ。」
「ふふ。こちらこそいつもセトおじ様に優しくして貰って嬉しいです。」
「セトおじさま、フィリアも好きです。」
セトおじ様とはこの果樹園の主さんです。子供好きらしく、子供のお客様が来たときは果物を採るのを手伝ったり、甲斐甲斐しくお世話をしてくれます。
私も昔からとても優しくして貰っています。
「そう言って貰えるとこっちも嬉しいです。……さ、受付完了しましたのでどうぞ、お入り下さい。」
「はーい。」
「では、行ってきますね。」
「はい。行ってらっしゃいませ。」
受付の娘さんに笑顔で見送られ、果樹園の中に入りました。
「うわぁ、やっぱりすごーい。」
「ええ……。すごいですねぇ。圧巻です。」
目の前いっぱいに果物の木が並んでいます。
果物の木は季節ごとに別々の区画に植えられていて、所々果物がなっていない木もあります。
なので、果物がなっている木が並んでいる場所まで歩いて行きます。
程なくして着いた先にあったのは、祖父の予想通り林檎や葡萄の木でした。
そしてそこには、セトおじ様も居ました。
「……ん!?これはこれは伯爵様、こんにちは。お久しぶりですね。それに小さなお姫様方も。」
セトおじ様はにっこり笑って挨拶してきました。
セトおじ様はとてもフランクな方で、しかも別邸の菜園はセトおじ様監修の元で作られたらしく、(セトおじ様は農業のプロです。)祖父とは友人のような関係だそうです。
「今日もたっくさん採っていって下さいね!」
「はい!フィリア頑張ります!」
「うんうん。じゃあ、何かあったら呼んで下さい。そっちで出荷用の林檎を採っているので。」
「はい、分かりました。」
私はセトおじ様の言葉に頷くと、早速果物狩りを始めました。
私は果物をもぐのが好きなので、頑張りますよ!




