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悪役令嬢は可愛いものがお好き  作者: 梓弓
第一章
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20

カイト様とのお出掛けから数日後。


「シオンお姉様とお出掛けしたいです!」


とフィリアがお願いしてきたので、久しぶりにお出掛けをすることになりました。


どこに行こうか迷っていると、


「最近お祖父様に会っていないし、お祖父様のお家に行くのはどうかしら?」


と母に言われました。


母がいうお祖父様は、父方の祖父の事です。

(母方の祖父の家は東の国なのでかなり遠い為、なかなか行けません。)


「確かに、それはいいですね。……フィリアちゃんはどう?」


「はい!お祖父さまのお家に行きたいです!」


母の提案に、フィリアも賛成のようです。


「そうと決まれば、お祖父様にご連絡しておかなければならないわね。……ナイツ。お願いできるかしら?」


「はい、奥様。承りました。」


「宜しくね。」


母は近くに控えていたナイツに、私たちが訪問しても良いかを祖父に連絡するように頼みました。



ナイツが祖父の家に連絡したところ、祖父は大喜びで、どうせなら泊まって行きなさいと言ったそうです。


母は


「せっかくだから、お祖父様のお家にお泊まりしてきたら?」


と私達に言ってきました。


「はい!お祖父さまのお家にお泊まりしたいです。シオンお姉さま、良いですか?」


「もちろん、私も賛成ですよ。一緒にお泊まりしましょうね。」


「じゃあ、決まりね?」


という訳で、私とフィリアは祖父の家に泊まりに行く事になりました。


そしてお泊まりの為の準備もできたので、馬車に乗り込みます。


「ふたりとも、気をつけて行ってらっしゃいね。お祖父様にご迷惑をかけちゃだめですからね?」


「はい。気をつけて行ってきます。」


「はい!お母さま。行ってきます。」


「ふふ。あ、そうだわ!お祖父様への手土産の事を言うのを忘れていたわね。」


私達の返事をニコニコしながら聞いていた母が、急に思いついたように言いました。


「お祖父様への手土産、ですか?」


「ええ。お祖父様のお家に行く前に、買っていって欲しいの。お金はきちんとお付きのメイドに渡してありますから。」


「はい、分かりました。それで、何を買うのですか?」


「それはね……」




(まさか、ここでお祖父様への手土産を買う事になるなんて……)


私の目の前にあるお店はあの、カイト様と行った和風喫茶でした。

(確かに、お持ち帰りでお菓子は買ってきましたけど……。)


母が言うには、


『たまには手土産も変わったものを持っていった方が良いでしょう?』


との事です。


意を決して店の中に入りテイクアウト用のお菓子を買う為、お菓子が並んでいるショーケースのある場所まで行きます。


「わあ、見たことがないお菓子がいっぱい!」


「ふふ。そうよね。」


フィリアは、目をキラキラさせながらショーケースに陳列されたお菓子を見ています。


「……うーん。どれが良いのかしら?たくさんあって目移りしちゃいます。」


「ええ。どれも美味しそうですからね。迷っちゃいますね。」


ふたりで悩んでいると、


「お客様、何かご入り用ですか?」


と、後ろから声をかけられました。


「……!」


そこには以前と変わらない、和装の制服を着ているのソールさんが立っていました。


(うっ。なんというエンカウント率なのでしょう。見目がとても良いから、接客をしているのかしら?)


「て、手土産です。」


「手土産として、こちらのお菓子をご所望なのですね?」


「は、はい。」


「お祖父さま達へのお土産なのです。」


「そうでしたか。……分かりました。」


私達からの言葉に、ソールさんはひとつ頷きます。

そして、


「こちらの商品はいかがでしょうか?」


ソールさんが指し示したのは、ミニサイズのどら焼やお饅頭、羊羮などが入ったセットでした。


「この商品なら、色々な味も手軽に楽しめますよ?」


「……そうですね。フィリアちゃんは?どうかしら?」


「私もこれで良いです。それに小さくて可愛いですね!」


フィリアはニコニコしながら答えました。

確かに、これなら色々食べられて良いですしね。


「じゃあ、これでお願いします。」


「はい。畏まりました。」


ソールさんはショーケースの裏に行き、包装済みのお菓子セットを持ってきました。


「こちらで宜しいですか?」


「はい。それで大丈夫です。」


「それでは、お会計させていただきますね。」


ソールさんはニッコリ笑って会計のレジへと促します。

フィリアには先に戻るように告げ、フィリアは馬車へと戻って行きました。


そしてメイドさんに支払いを頼み、無事に祖父達への手土産を買う事ができました。


「お買い上げありがとうございました。生ものですから、お早めにお召し上がり下さいね。」


「はい。分かりました。」


「……あの。」


「え?はい。なんでしょう?」


馬車に戻ろうとした時、ソールさんに呼び止められました。


「今日はお忙しそうですが、この次はまたうちの店でゆっくりしていって下さいね。」


「……ええと、はい。今度来た時は、ゆっくりさせていただきますね。」

(急に呼び止められてびっくりしました。)


「……実は前回ご来店いただいた時に、お客様がとても美味しそうに当店の菓子を召し上がっていらしたのが見えたもので。」


「っ!」

(ソールさん、見ていたのですか!?)


「私も一応料理人見習いなので、とても嬉しかったんです。」


「そう、なんですか。」

(やっぱり料理人志望だったのですね……)


「あっ!申し訳ありません。お引き留めしてしまいましたね。……またのお越しをお待ちしております。」


ソールさんは、はっと気づいて謝罪し、私達に一礼して去って行きました。



私は心中穏やかにならないまま馬車に乗り込み、お祖父様のお屋敷へと向かったのでした。


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