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和菓子を食べ終えた私達は店が更に混雑してきたこともあり退店する事にしました。
ちなみにお菓子は店頭販売もしているので、家族へのお土産にする為にいくつか和菓子を購入しようとしたのですが、
『当家が本日のお支払をさせて頂きますね。』
とカイト様のお付きの従者さんのお言葉により、お土産までもお支払をして頂く事になりました。恐縮です……。
再びイール家の馬車に乗った私は、我が家へ送り届けて貰うことになりました。
カイト様の向かい側に座り一息ついたところで、カイト様が話しかけてきました。
「今日は急に連れ出してごめんね。疲れた?」
「いいえ、大丈夫ですよ。こちらこそ、珍しいお菓子が食べられて良かったです。それにお土産まで買っていただいて、ありがとうございます。」
「どういたしまして。まあ、今日の支払いは父様が出したようなものだけどね。」
私が感謝を述べると、カイト様が苦笑しながら答えました。
「それはそうですが……カイト様の時間を割いてまで連れて来てくれるというだけでも、カイト様のお心遣いを感じましたよ?」
「そうかな?心使いっていう程大層なものじゃないけど、喜んでもらえたならこっちも嬉しいよ。あ、あのさ……」
「はい、何ですか?」
「また今度、外に誘っていいか?シオンさんが良ければ、だけど……。」
カイト様は少し照れながら聞いてきました。
(あのカイト様が照れてます!?……一応、デート?のお誘いなのでしょうか?)
美少年の照れです。こう言っては何ですが、とても可愛いです。口には出せませんけどね。
「はい。また今度、お暇が出来たら誘って下さいね?今日はお菓子屋さんでの食事だけでしたけど、街を見て廻るのも良いですよね。」
と、笑顔でカイト様にお返事しました。
「そうだな。街を廻るのも良いな。」
「はい。次のお出かけも楽しみですね。」
二人でニコニコしながら頷きあっていると、
「シオン様、ローゼット邸に到着致しました。」
と、御者さんに声をかけられました。
そして馬車が止まり、扉が開きます。
「お手をどうぞ。」
「ふふ。ありがとうございます。」
まずカイト様が外に出て私の手を取り、降ろして下さいました。
そのまま手を引かれ、玄関までたどり着きます。
先に連絡が来ていたらしく、玄関で我が家の執事頭のナイツが待っていました。
ちなみにナイツは父が若い頃から仕えていて、私にとっては優しいお爺ちゃんのような人です。
「お帰りなさいませ、シオン様。」
「ただいま戻りました。」
「カイト様も、シオン様を送って来ていただきありがとうございました。」
「ああ。」
穏やかな笑みで迎えてくれたナイツは、カイト様に向かって感謝の言葉を述べました。
「あっ、ナイツ。実は今日、御宅に伺うだけでは無くてお出かけもしたのですが、その時にカイト様が我が家へのお土産を買って下さったのです。」
手に持っている和菓子入りの袋をナイツに渡しました。
「それはそれは。カイト様、お気遣いありがとうございます。」
「いや、このくらい。……それじゃあ僕はこれで失礼するよ。」
「あら、少し寄って行きませんか?」
「嬉しいけど、今日は遠慮しとく。」
私からの提案にカイト様は首を横に振って答えました。
そしてカイト様はイール邸へ帰って行ったのでした。




