16
カイト様からお品書きを受け取り、目を通します。
(メニューは、お団子、お饅頭、大福、どら焼……。)
お品書きにはどれも前世で馴染みのある和菓子ばかりが載っていました。
お品書きには、和菓子の名前の横にどのような菓子であるかの説明も書いてあります。
やっぱり、私の知っている和菓子みたいです。
「えぇと、どれにしましょうかね。迷いますね。」
「意外に種類があるからな。確かに迷うよな。」
「カイト様は決まりましたか?」
「ああ、この"ダイフク"という菓子を注文するよ。ダイフクって、何だか変わった名前で面白いし。」
「大福ですか。」
(なかなか通なお菓子にしましたね。)
「シオンさんは何にするんだ?」
「せっかくなので違う物を頼んだ方が良いですよね。じゃあ……」
私はもう一度お品書きに目を通し……
「この、"どら焼"にしますね。」
前世でも良く食べていた、どら焼にしました。
ちなみにどら焼はこし餡派でした。
「ドラヤキ、か。よし、決まったな。」
「はい。注文しましょう。……えっと」
店員さんを探しますが、近くには居ないようです。
少し離れた場所で、忙しそうにしています。
「店員さんは近くに居ないですね。どうしましょうか。」
店内であまり大きな声を出すのは憚れますし、呼んでこようかなと思案していたら
「僕が店員を呼んでこようか?」
「いえ、カイト様はここでお待ち下さい。私が呼んできますよ。」
取り敢えず一番近い店員さんを呼びに行こうと立ち上がろうとしたその時、
「ご注文はお決まりですか?」
と、急に後ろから声をかけられました。
その声に振り向くと、そこには爽やかな笑顔の男性店員さんが居ました。年齢は15才位でしょうか?
赤髪赤瞳の美形さんです。
「……!は、はい。」
「ちょうど良かったな。えーと、」
カイト様は注文を伝え、
「はい。畏まりました。大福とどら焼ですね。」
店員さんはすらすらと、注文票に頼んだメニュー を書き込みます。
「それでは、少々お待ちくださいませ。」
店員さんは一礼して、注文票をキッチンへと持って行きました。
「あまり待たなくて良かったな。」
「……。」
「シオンさん?」
「……!あ、いえ。何でもありませんよ。」
「そうか?」
カイト様からの言葉にはそう答えましたが、頭の中は混乱中です。
なぜなら。さっきの店員さんは、どうみても私の記憶にある人物だったのですから。
着ている服が違うので(店員さんはみんな和装のような制服です)一瞬分かりませんでしたが、彼もヒロインさんの攻略者さんです。ヒロインさんの幼なじみです。
なぜここで働いているのでしょうか……。




