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本日は、カイト様のご自宅のイール邸にお邪魔しています。
「……という訳でお兄様とお姉様が学園都市に行ってしまわれたんです。」
「そうか。兄君と姉君はもう高等学校に入学する年齢になったんだな。寂しくなるな。」
「はい。お兄様とお姉様にはかなり溺愛されていたと自負出来るので、余計ですね。」
「そ、そうか。溺愛……。」
言い切った私に、カイト様はちょっと引いています。
「まあ、長期休暇には帰って来るそうですし妹も居ますから。妹の名前は、フィリアといいます。私の3才下です。今度ご紹介しますね。」
「ああ、宜しく。シオンさんの妹君はいずれ僕の妹にもなるし、僕のことも知って貰わないとね。シオンさんの兄君と姉君は居ないから今は無理だけど。」
「……そう、ですね。」
カイト様が余りにもさらりと言ったので、一瞬詰まってしまいました。
カイト様が当たり前のように私との結婚を見据えて言っているのが何だか気恥ずかしいですね。
前世は未婚でしたし。
「それはそうと、シオンさん。まだ時間は取れるか?」
「ええと……?」
「天気も良いし、外に出掛けない?連れて行きたい所があるんだけど。」
「私を連れて行きたい所、ですか?」
「ああ。」
唐突のお誘いに驚いている私に、カイト様は笑顔で頷きました。
「はい、大丈夫ですが……どちらに連れて行って下さるのですか?」
「それは着いてのお楽しみだ。」
私からの質問に、珍しくニヤリと笑ってカイト様は答えました。
カイト様のお誘いに乗った私はイール家の馬車に揺られ、その目的地へと向かったのです。
そして程なくして着いたのは、
「これは……和風の、建物?」
思わず目を見開いてしまいました。
昔の日本家屋のような建物が、周りの洋風な建物の中にポツンと一軒だけ建っているのですから。
「ワフウ?」
「あっ、いえ。何でもありません。」
「まぁいいけど。とりあえず、中に入ろうか。……お手をどうぞ。」
思わず口にした"和風"の言葉に反応したカイト様を誤魔化し、カイト様の手を取って建物の中に入りました。
「……わぁ、すごい。」
(やっぱり中も昔の日本家屋っぽいですね。た、畳までありますよ。和風喫茶店のようなものですかね?)
「これは東の国の技術で、東の国は昔こんな風な家だったらしい。今は、こちらの西の国のような建物も多いそうだけど。」
「……東の国、ですか。」
(そういえば、東の国はお母様の故郷だった気がします。)
「ちなみにここでは珍しい東の国の菓子も食べられるみたいだ。」
「!」
「……どう?食べてみる?」
「はい、食べてみたいです。」
「よし。じゃあ、そこに座ろうか。」
カイト様は私の肯定に満足したのか、機嫌良く私を席へと案内しました。
(和風のお菓子は楽しみですが……カイト様は私を餌付けしたいのでしょうか?)
と内心思いながら、物珍しそうにお品書きを見ているカイト様を見つめるのでした。




