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私の波乱の誕生日パーティーから数日経ちました。
正式な婚約者になったカイト様は、
「婚約したとはいえ、お互いの事をまだまだ知らないからな。予定が合えば会いに来るよ。」
と、私に言ってきました。
ですが、婚約者とはいえ格上のお家柄ですので
「私も賛成ですが、カイト様ばかりに負担が掛かりませんか?」
カイト様に問いました。
「特に苦にはならない。同じ領内だしな。」
「それはそうですが……」
「そこまで気にするなら、お互いが行き来すれば良いんじゃないか?僕の家に招待するよ。」
「良いんですか?」
(原作のシオンへの無関心と比べて、カイト様の態度はかなり違いますね。ありがたいですが。)
カイト様からの言葉に内心驚いてしまいました。
「勿論だよ。君は僕の婚約者なんだから、何も気にする事はない。(将来は実家だし。)」
「そう、ですか?それなら遠慮なく、伺わせていただきますね。」
「ああ、楽しみに待ってる。」
私からの言葉に、カイト様はにっこりと爽やかな笑顔で答えました。
そして今日は、カイト様が我が家に来る日です。玄関でカイト様を迎えます。
「やあ、シオンさん。遊びに来たよ。」
「いらっしゃいませ、カイト様。」
「これ、お菓子のお土産なんだけどメイドさんに渡しておいて。後で一緒に食べよう。」
「はい。ご丁寧にありがとうございます。」
「シオンさんのお口に合えば良いけど。」
カイト様から受け取ったお土産を近くに居たメイドさんに渡して、カイト様を案内します。
サロンに着き、カイト様と向かい合わせで座ります。
程なく紅茶とカイト様からいただいたお菓子が運ばれて来ました。
お菓子は焼き菓子で、マフィンやクッキーなどでした。
「わぁ、どれも美味しそうですね。」
「ああ、早速だけど食べてみて。」
「はい、頂きますね。では、マフィンから。……!」
(美味しい!)
ふわふわでバターの香りもして、凄く美味しいマフィンです。思わず、顔が顔が緩みました。
「ははっ、その顔。シオンさんのお口にあったみたいだな。」
ちょっと緩んだ私の顔を見て、カイト様が笑っています。
(わ、笑われた……。恥ずかしい。)
「美味しいお菓子を食べたら、誰だってそうなりますよ!」
とカイト様へ少し抗議しますが
「良かった、良かった!ほら、クッキーもどうぞ。」
とカイト様にさらりと受け流され、クッキーを進められました。
「……頂きます。」
(う、やっぱり美味しいですね。)
「美味しい?」
「……美味しいです。」
「それは良かった。婚約者さんは甘いものがお好きなようだから、また今度他のお菓子を持って来るよ。」
クッキーを食べている私を見て、カイト様は満足そうに頷いています。
(カイト様って、こんな性格でしたっけ。もっとツンツンで俺様なお方だったような……。)
原作との性格違いに、ちょっと戸惑います。
そんなやり取りの後、お互いの事を少しづつ話し始めました。
そして趣味の話になり、
「カイト様の趣味は、読書と乗馬ですか。」
「読書は知識を得られるし、乗馬するときは父様と狩りもして弓の訓練にもなるからな。」
「そ、そうなんですか。」
(前世でいう、リア充ですね……)
「それで、シオンさんの趣味は?」
「私の趣味はカイト様と同じ読書と……粘土です。」
「読書は僕と同じ、だけど、……粘土!?」
やっぱりカイト様はびっくりしてますね。
「はい。粘土です。」
「えーと、粘土で何を作るんだ?」
「それはですね……」
困惑しているカイト様に、フェイクスイーツがどういうものかを説明しました。
すると、
「ふーん。最初は何で粘土?って思ったけど、確かに楽しそうだな。」
「はい、楽しいですよ!」
「君が言い切るなんて珍しいんじゃないのか?……僕、君が作った物を見てみたいんだけど。」
「作った物ですか?良いですけど……あるのは私の部屋ですよ?取ってきますか?それともついて来てこられますか?」
「シオンさんが良ければついて行って良いかな。」
「はい。カイト様が良いなら私は構いませんよ。」
「ああ。じゃあ、案内お願いするね。」
という訳で、カイト様を連れて私の部屋に向かったのです。




