能力
眠気でところどころ文法が怪しいが気にしないでいただきたい。
5歳児並みの肉体と中学生並みの身体能力を有するファーストフェリだぜ。魔力量は普通の基準がわからんから知らん。キャラを決めかねているから口調がおかしいけど誰も指摘しないからちょっと寂しい毎日だ。
村に迎えてもらってからかれこれ半年が過ぎた。季節による気候の変化がなくてつまらないな、ここ。セカンドのベルフェリ様の怠惰が発揮されている日常だ。
母上様とロキがいた人生の最初と比べるとストレスがまったくといっていいほどない快適な生活だ。だからこそ野生が錆び付いて弱くなりそうなんだけど。
魔物や魔獣は滅多に見かけないから狩りもできない。これじゃあ身体が鈍っちゃうな。だからって全力で動いたら村人に驚かれるだろうから採取の合間にちょっとだけ魔法や気の練習をするだけに留めている。
空間魔法は結構早く習得できた。使い魔が使えて主人が扱えないだなんて情けないからな。
空間転移や空間保管庫しかまともに扱えないが、まぁ十分だろう。
ちなみに。
武器庫とか冷蔵庫とか野菜庫とか車庫とか火薬庫とか貯水庫とか分類別に複数の空間を作ったのはいいが、車両や火薬の類はここでは手に入らないので無駄になっている。冷蔵庫は便利だけど生肉の類が手に入りにくい現状あまり必要性がないのが悲しい。
武器庫は改良と改悪を繰り返して投石用として石や岩、目潰し用に砂も入るようになった。容量や中身がどうなっているのかなど疑問に思うが、今のところ無制限に入れた時の状態を保持して出現時の運動状態も自由に使えているので野暮なことは気にしない。
昨日なんて遊びで武器庫の自作王の財宝(普通の小石)を高速でガトリングをイメージして5千発ほど撃ったら岩盤にひびが入っていた。石はもちろん全て砕けて砂になっていた。
廃棄された鉄くずとかあればメタルストームができそうだ。戦車が相手でも押し潰せる……はず。ただの石でも相当魔力を消費するのでちゃんとした武器を連続で大量に撃ち出すのはもう少し成長してからでないと難しいだろう。
で、修行のため俺は小川のほとりで魔法の練習中なのだ。
「【LI -LOR】」
手に魔力を集中させ、呪文を唱えればあら不思議。炎の剣のできあがりだ。温度はそれほど高くないし実体もないから実戦向きではないが。銅の剣でも手に入れば魔法剣ができ……ないわ。生半可な剣じゃ溶けるだけだな。保護をかけると魔力消費量が倍増して燃費が悪くなるし。
そもそも魔法じゃなくて呪文なんだが、まぁ同じ括りでいいだろう。トゥルーワードなんてマニアックなものを知ってる人は……案外いそうだが、覚えてる人間なんてそうそういないだろう。
正確な呪文だと種類が少ないから自作しているが、イメージ次第でどうにでもなるので楽だ。
魔力の供給をやめると炎の剣は何事もなかったかのように消える。
「【LA -DAL-TO】」
川の一部が凍り、全長10m、幅5mほどの氷の竜巻が荒れ狂う。
近くに誰もいないことは確認しているが、これ以上大きいとばれる可能性があるので自重している。
これは20秒ほどで勝手に消える。予め込めていた魔力量によって規模や時間を調節できるのだ。その勘を掴むまでどれだけ失敗して自然破壊をしてきたことか。村の人間のレベルが低いから大して騒ぎにならないけど。
「……ふぅ」
額に掻いた汗を袖で拭う。
そもそもこのトゥルーワードは抑制されて本来の1割の威力で扱われることが前提の呪文らしいので制御していないとここら一帯を吹き飛ばしてしまうのだ。
消費が大きいというよりも呪文ごとにそれぞれ回数制限があるような感覚だ。その上魔力まで馬鹿食いしているので非常に非効率的な魔法である。
MPを使い切って寝たら最大値が増えるとかあればよかったのだが、俺にそんなものはなかった。そのうち戦闘人格も必要になると思うのだがそこは俺の管轄じゃなさそうだった。
「おーい! フェリ! そろそろ帰るぞー!」
「はーい!」
遠くからファインの声が轟いてくる。鳥たちが驚いてばさばさと慌しく飛び立つほどの大音声だ。
薬草や食用野草を入れた籠を背負い、村へと続く獣道を走る。もちろん歳相応の速度で。
1分も走れば林が途切れ、小さな広間になっている場所で佇んでいるファインの背が見える。ザ・父親って感じの大きな背中だ。「漢は背中で語る」を体現しているといっても過言ではない。
「ファイン」
「お、来たか。今日は川にでも行ってたのか?」
「うん。いっぱい採れたよ」
「おぉ、フェリは自然に愛されてるな!」
籠の野草を見せると頭を乱暴に撫でられた。力が強くて首が痛くなるのだがそれを言っても聞いてくれないことはこの半年でよくわかった。
本当は魚も捕りたかったのだが、初日に数匹捕ってから見当たらなくなってしまった。俺の存在に恐れて生活圏を移したのだろう。食べられない小動物なら割といるのだが。
「帰るぞ。明日は月に一度しか来ない行商人が来る日だから早く寝ないとな」
「はーい。お肉食べられるかなぁ……」
「燻製肉を持ってくるって言ってたから明日は久々の肉料理だな」
「わーい!」
肉に餓えているんだよ俺は。
ベジタリアンな生活は狼な俺には厳しいのだ。ロキが狩っていた奴らはどれも飛び抜けた力を持っていてその肉を食べるだけでかなり強くなれたしなぁ。母上様ことフューリのレベルが64までいってたのはそれが原因だったんだろう。
ファインの隣を歩き、村へと帰る。
俺の歩幅に合わせて歩く速度を変えているあたりかなり気遣いのできる男だと思う。
義姉であるフィールはまだ村から出られない。病気が治っても体力はなかなか元には戻らないからだ。野菜ばっか食べて肉を食わないからそうなるんだと肉食獣としての本能が嘲笑っているが、そもそも肉となる動物が人間以外いないのだからどうしようもないのだ。
虫を食べるのは最終手段だと考えていたが、村の婆さんにそれを聴くと「まずい上に毒がある」と教えてくれた。毒には耐性があるが、好きで摂取したくはないな。
フィールの治療費がなくなったのは家計的によかったが、借金は相変わらずである。そもそも作物は豊作でもそれほど多くはならないし、野草の類も捕り尽くせない以上限度がある。
つまり、割と詰んでいるのだ。村全体が。
ま、そんなことはどうでもいい。
そのうち独り立ちしてロキから逃げられる程度の力をつけるつもりだ。逃げられるのなら後はもう好き勝手に生きていける。
うまいもん食って、適当に戦えて、信頼できる仲間ができればそれでいいんだよ。番云々は俺じゃなくてサードが考えるべきことだ。そもそも俺が選ぶとしたら女だしな。男の娘は……うん、その時にでも考えよう。
それにしても腹減ったな。
……肉。
早く明日にならないかなぁ……。
日が暮れる。
少女の銀は、いつまでも変わらずに輝いていた。
ラダルトは意味のある単語を組み合わせて「良い感じの語呂ができちゃったよ俺ってば天才!」と陽気になっている時のノリでできあがった呪文です。
が。
公式にラダルトがあることに気がついたのはまさに書き終えた時。
所詮は浅学の猿知恵でしたね。ははははは。ちくせう。
あくまで古くてマニアックなネタ(未だに現役の方はごめんなさい)を気まぐれで引っ張りあげてきただけなので間違いがあるかもしれませんが、そこは生暖かく見守っててくれると嬉しいです。