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イノサンスフェンリル  作者: 泉 燈歌
第0章 生誕迷走編
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養子

 どうも。フェリです。

 1歳を前にして3歳児並みの肉体と小学生並みの身体能力を有し、さらには思考と記憶を読み取る悪魔の如き力を持つ激強幼女ことサードフェリちゃんです。これでも最強ではないのがこの規格外な世界。


 ロキの追跡と探査から逃れるためには私は労力を惜しみません。

 まさか自分で封印具を造ることになるなんて昨日までの私じゃ考えもしなかったでしょう。神獣としての能力はほとんど失ってしまいましたがこれで神力を辿られることはないでしょう。

 神力がなにかはわかりませんが。魔力とは違うのでしょうかね。あ、あと霊力とか妖力とか仙力とか他にも色々あるみたいです。どうなってんでしょうねこの世界。


 ロキに捧げたあの人は生き残れるかな……。

 記憶を読み取った限りでは処女だったようですし、罪悪感が半端無いです。

 でもそうしないとロキが治まらないだろうから。


 代わりに、私は彼女の家族を助けることを決めました。


 どのみち人間とはどうにかして関わって助けてもらわないとこの身体ひとつで大自然を生きていくのは無理ゲーですし。いえ、やろうと思えばできなくもないでしょうけどそれはちょっと……ね?

 それで人間に辱めを受けるくらいなら死にますがね。てかただの人間相手なら容赦なくミンチにしてやりますがね。

 まぁ、大丈夫でしょう。

 幼児に興奮する変態なんてそうそうお目に掛かれないでしょうし。


(フラグ乙)


 黙らっしゃい。


 お。

 村が見えてきました。

 木の柵で囲っていますが、これで魔物や魔獣の侵入を防げるんでしょうか。

 ……ほうほう。

 どうやら魔除けの結界の役割を果たしているようです。低俗で低脳な相手ならそこそこ効くのでしょう。


「っ!? そこのきみ、止まれ!」


 門番がいます。

 村への入り口はひとつだけなので防衛は楽そうです。逆に言うと逃げ道もひとつだけ、ではないのかな? 隠し通路とか非常口とかあるのかしら。


「きみ、ひとりかい?」

「はい」

『……怪しいな』


 でしょうね。

 これでスルーしていたら門番として失格ですよ。


「両親や、誰か保護者は一緒じゃないのかい?」

「死んじゃったの」

「……そうか。『かわいそうに……』村長のところまで案内するよ」

「あい」


 なんて言うのかね。

 どうしてこう、疑うことをしないのでしょうか。

 ……思考がブロックされている?

 いや、制限?

 レベルに合わせて拡大可能?


 なんのこっちゃ。


 村の人口は百人にも満たないようですね。建物も木造ですし。ど田舎なんでしょうね。


 村の中でも一際大きな建物に連れて行かれます。

 大きいといっても地球での普通の一軒家くらいのものですが。


「村長、子供を保護したんだが、後を任せていいか」

「おぉ、ご苦労じゃった。仕事に戻ってよいぞ」

「それじゃあな」


 手を振り門番は来た道を戻っていきました。ずうっとあんなところで突っ立ってて暇じゃないのでしょうか。休みはあるのでしょうか。あれはあれで尊敬に値します。


「さて、お譲ちゃん。どうしてひとりでこの村まで来たのかね」

「……お母さんが死んじゃったから」

「そうか……お父さんは、どうしたんじゃ?」

「お父さんは……」


 肩の傷をちらっとだけ見せます。これ以上を見たければそれ相応の対価を求めますので。うっふん。

 ……察してくれたようです。


「どうやってここまで来たんじゃ?」

「……んー? 歩いて?」

「どこから来たんじゃ?」

「森? 山?」

「むぅ……そうか」


 嘘は言っていません。

 子供だからという無意識下でのフィルターで納得してくれる人類に危機感を覚えます。今回はそのお陰で都合良く話が進んでいるのでいいことなのですがね。


「お姉さんに助けてもらったの」

「お姉さん?」

「これ」

「こ、これは確かフィーネの……」


 勝手に拝借した盗賊風の短剣を渡すとすぐに誰のかわかったようです。さすがは全員顔見知りのど田舎。迂闊に窃盗なんかできやしませんね。

 あの恩人はフィーネと言うのですか。

 ご冥福を……ってまだ死んだと決まったわけではないので、保留。


「それで、フィーネはいまどこに?」

「……わかんない。逃がしてもらったの」

「そうか……良い娘じゃったのにのぅ」


 あ、死んだことになりそうです。

 ちょっと胸がちくちく痛みますね。私は他人の不幸をそれほど喜べないただの小市民ですので。


「フィーネの家族に会ってはくれんかの」

「わかった」

「ついてきなさい」


 村長の後を付いていきます。

 ブルーな話に子供を巻き込まないでほしいものです。いえ、元はと言えば私の責任なのですけど。 


「ファイン、いるか」

「おう、どうした村長……と、あまり良い話じゃなさそうだな。あがってくれ」


 大男です。2mはなさそうですが私から見ると熊かと思っちゃうほど大きいです。

 ファ行の名前が流行っている世界なのでしょうかね。


(ただ単に名前を考えるのが面倒だという勝手な都合g――)


 頭の中でなにかがぐしゃっと潰れる幻聴が……。メタァ、な話は自重するべきなのでしょう。世界は平和と平穏を望みます。


「そうか……あいつは、最後まで俺の娘だったんだな」


 いつの間にか完全に亡き者として扱われていますねフィーネさん。泣いてもいいわ、これ。


「きみ、フェリちゃんだったか。うちの子にならないか?」

「う?」

「他に行くあてもないんだろう?」

「んー」


 親切心、なのでしょうか。

 サードアイのクールタイム中なので意図が読めません。制限しすぎたかも。


「フィールも妹ができたら喜ぶだろう、どうだ?」

「ん」


 フィールって誰さ、とは聞かずとも予想がつくので頷いておきます。

 それになんだかここで断るとなんだか嫌な展開になりそうな予感がするので。


 それからはトントン拍子に話が進み、とりあえず私はファインの庇護下に置かれる身となりました。


「明日からさっそく野草摘みを手伝ってもらう」

「ん」

「フィールの医療費を明後日までに用意しないといけないんでな」


 フィールはどうやら悪性の腫瘍に侵されているようです。スーラを潜り込ませて調べたのですから間違いありません。

 ついでに暴食で腫瘍だけを食べて取り除いておきました。ユニークスキルに掛かれば病魔だってあっけないものですね。大罪系がユニークの範疇なのか知りませんが。


 この時にファーストに言われて初めて気付きましたが、スーラの種族がディメンションスライムになっていました。食べたものとかどこへ消えていたのか気になっていましたが空間魔法だったんですね。次元なのに空間とはこれいかに。


「おやすみ」

「おー」


 藁布団……ひもじいです。

 この村はもうだめかもしれません。

 借金って家単位じゃなくて村ひとつの借金があるってことだったんですね。早まりました。


 さっさと都会に行きたいです。

 まずここがどこなのかを知る必要がありますがね。


 ……眠いです。


 今日は色々なことがありましたね。

 悲しいことしかないような。

 きっと気のせいです。


 明日は良いことあるかな……。

都合良く進むのは村人のレベルが低いため。それがご都合主義。

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