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イノサンスフェンリル  作者: 泉 燈歌
第0章 生誕迷走編
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分析

 うーみゅ。

 目が覚めちった。


 ……二度寝しよ。


 ぐぅ。


「起きて」


 あぁ、ようやく意識が薄れて楽しい夢が見れそうだというのに愛しの母上様のお声が天から降ってまいりました。寝起きにそのお声は脳が痺れちゃう。


 ……俺はいたって平常ですよ?


「起きて」


「あ、い」


 三度目がないくせに余裕を与えず連続で呼びかけてくるのが俺の母上様なのでさっさと起きる。


 怒らせると怖いんだよ。


 怖いのは母上様じゃなくてその隣にいる狼なんだけどね。

 愚図は死ぬしかないとでも言わんばかりのスパルタだもの。


 ちなみにこの狼、父上様である。


 なんの冗談かと言いたいが、残念ながら事実らしい。


 しかもフェンリルという神獣らしい。

 名前はロキ。


 これを知ったとき俺は「獣姦生まれかぁ……ハード過ぎてちょっとついていけんわ」と嘆いたが、ロキは発情期に限り人化できるから獣人同士の子供とさして変わらないと母上様に慰められた。


 そうだよな。

 サイズが違いすぎて「ひぎぃ」じゃ済まないことになるよな。ファンタジーだから意外といけるのかもしれないが。自分の身体で試すのは嫌だし。


 母上様は絶滅した白狼と絶滅寸前の銀狼のハーフらしい。

 それで父親が神獣とか、俺ってライガー以上の希少種じゃないか。

 世界にひとりだけの血統か。

 俺が末代になりそうだ。

 これから家族が増えれば別だろうがな。


 ……それはそれでちょっと、ねぇ? 幼児とはいえ中身は別物ですし? いや、妹とか弟とかほしいなーとは思うけど。発情期の周期とかも知らないけどさ。


 で、俺の名前は『フェリ』。

 男の子だったら『フェン』だったんじゃないかなぁ、と予想できるくらいには安直なネーミングセンス。でも嫌いじゃないよ、そういうの。母上様が名付けてくれたみたいだし。




 初めて外に出てから半年くらいが経った。


 相変わらず俺は巣穴の近くを駆け回るくらいしかできないけど、主食が変わってから身体のパワーというかなんというか、エネルギーの桁が上がった気がする。

 生肉だけどな。ビタミン取るためには仕方のないことよ。獣人になったせいか平気で血とか飲めるし。歯も鋭いからお肉を切り裂くのも簡単よ。

 まぁ、ファンタジーのラストダンジョンか世紀末かってくらいのバケモノ共の肉なんだけどな。

 我が家の大黒柱は最強です。


 かといってこのままただ飯を食らわせてもらうだけじゃいかん。

 いつかは独り立ちしないといけないだろうから。

 てか、いますぐ放り出されてもおかしくないくらい父親から愛情を感じないからね。


 まず異世界で生きていくために必要なのは情報だ。

 なにも知らないんだから当然世界を知る必要がある。


 では、どうするか。

 こういうのにはよくあるだろう?

 鑑定という名の全てを見通すチート能力が。生物無機物関係なく暴いちゃう万能の力が。


 うん。

 でもね。

 なかったよ。

 俺にはそんな便利なものは生まれつき身に付いてはいなかったよ。


 だからつくったった。


 まず、オーラで戦闘力を測ればいいじゃんと思いついたのがだいたい半年前。

 オーラがよくわからなくて一週間で挫折したのは良い思い出。

 『凝』なんてなかった。


 じゃあ便利な魔法とか魔術でそういうのはないものかと考えた。

 母上様に魔法の常識とかを聞いたけどそんなものはないらしかった。


 前世、と言っていいのか微妙だが、記憶のない、知識と謎の経験からなにかアイディアが浮かばないものかと必死にシュミレーションしたり試行錯誤したり思考したり思案したり色々と考えた。

 結果。

 対象の雰囲気とか姿勢とか自然昇華魔力量とか年季とかを『なんとなく』読み取って数値化することに成功した。


 よくわからないって?

 大丈夫だ。

 俺にもよくわからん。


 初めて父上様を『分析アナライズ』して驚いた。


【ロキ ♂   神獣     Lv.2200?】


 レベル高いって話じゃねぇよ。4桁とかおかしいだろ。ディスガイアですかそうですか。

 

 ちなみに母上様はこんな感じ。


【フューリ ♀   白狼・銀狼     Lv.64】


 てか名前と性別と種族とレベルしかわからんのかい!

 もっと細かく視ようとするとロキに睨まれるし、てかなんで視るのばれるんだ? あと、たぶんいまの俺が無理したら脳の処理限界を超えて廃人まっしぐらじゃないかな。

 せっかく会得したというのに不便だわ。


 つい先日、暇を見て巣穴の近くを通りかかったうさぎのレベルは374だった。

 いくらなんでも高すぎないか。

 母上様がただのうさぎにも負けるとかないわー。


 これはおかしいと思い、他の小動物のレベルも視たが、どうやら動物や魔物の類は10倍表記になっているのではないかということが推測できた。

 つまり母上様は魔物基準では640くらいだということ。

 それがどの程度強いのかはわからないが、弱くはないだろうと思う。


 てか人間でロキと同等の存在っているのか?

 レベルの上限は知らないけど、神獣は伊達じゃないのだろう。

 時々狩ってくる大物もレベルが1500とかザラだし。


 俺はというとなぜか自分のレベルは視えないのでどの程度強いのかわからん。

 小動物とはいえレベル3桁に喧嘩売ってデッドエンドは困る。

 身体能力は1歳迎える前に前世での常人を軽く超えちゃってるけどこの世界ではそれが普通だったりするかもしれないし。

 魔法を使ってみたいが母上様は魔法が使えないしロキは無視するし。


 ロキってなんなんだろうか。

 コミュニケーションって大切だよ?


 それに、母上様はいつからここにいるんだろうか。

 家族は? 友達は? 故郷は?

 どうしてロキといるんだ?


 それを訊くタイミングは、まだ来ない。


細かいことは気にしない。それが私クオリティ。

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