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イノサンスフェンリル  作者: 泉 燈歌
第0章 生誕迷走編
12/35

鑑定

ほぼ説明回。

「あ~さ~、あさだよ~。朝ごはん食べて、街に行くよ~」

「フェリちゃんはいったいなにを言ってるのかしら?」

「……さあ?」


 ちっ。

 同郷とはいえ、そこのネタが通じないとちょっといじけちゃうぜ?

 まぁ、かく言う俺なんてそもそも元となる人間がいないんだけど。


 そんなユーモア溢れる俺ことファーストフェリちゃんがバーナまでの実況をいたしますぜ。


(……ファースト。自棄になってない?)


 気のせいだろ。

 たぶん。

 ……きっと。


 ………………おそらく?


(ん、無理はしないでね?)


 はいはい。

 心配してくれるのは嬉しいよ。


「ねえ、フェリちゃんは鑑定系スキルにはいくつかの種類があるって知ってる?」

「んーん。初耳」


 脈絡のない突然のマーサンの問いに首を横に振って答える。


 母上様のデータベースにはその手の情報はなかったしな。

 てか、そんなものはなんでもわかる鑑定スキルとしてひとつにまとめちゃいかんのかね?


 といったことをマーサンに訊いてみた。


「はぁ……そうね、まずはそこから勉強しないといけないのね」


 溜息を吐くほどのことですか。

 とはいえ世間知らずだという自覚はあるので大人しく勉学に励む所存であります。


(真面目にね?)


 へいへい。

 サードちゃんの命令は絶対でありますよ。


「じゃあ今日は基本的なことから教えていくわよ。まず一般常識として広く知られているのは、上位スキルである生物鑑定、その派生で下位スキルに位置するのが動物鑑定、人物鑑定、魔物鑑定、魔獣鑑定ね。そして生物鑑定と対を成す物質鑑定、その下位に当たる植物鑑定と鉱物鑑定、ちょっと変わった派生スキルとして武具鑑定やアイテム鑑定なんてものもあるわ。これがこの世界での一般的な鑑定系スキルね」

「一般的ってことは、マーサンたちのは違うの?」

「いいえ、私とスーサンはそもそも鑑定系スキルを持ってなかったわ。ヤーサンはここに落ちた時から物質鑑定持ちだったけどね」


 ヤーサンがデザイナーだからか?

 いや、そもそもデザイナーをジョブとしていいのかよくわからないが。

 でも素材の良し悪しがわからないことには仕事にならないだろうし。


「ちなみにヤーサンの職は防具職人に分類されてるわよ」

「ふーん」


 職でいいのかよ。

 たぶんその辺りの用語の元ネタはあの有名な最終幻想だろうが。


 スーサンとマーサンは……役職が特殊なんだろう。

 スタイリストとカメラマンって戦闘では当然、生産でも役に立つとは思えないし。


「スーサンはレベルが30に上がった時に人物鑑定を会得できたって言ってたけど」


 スタイリスト……人を見極める職、になるのかねぇ?

 元々素質があって、レベルが上がった際にタイミング良くスキルとして形になったとも考えられそうだけど。


 ゲームと同じように検証班とかいるのかね。

 そういう人たちがもしもいるのなら、応援したい。

 あの手の作業はできない人間にとっては苦行でしかないからな。他の誰かがやってくれるのなら援助は惜しむべきではない。


「勇者として召喚された人の中には人も魔物も、武器やアイテム……果ては大気まで、それら全てを鑑定できたって話もあるけど、ここ50年はその手の万能鑑定持ちの話はないそうよ」

「やっぱり勇者はチートなの?」

「チートもチート、私たちみたいな不幸なトリップ組からして見たら雲の上の存在よ!」


 どうやらトリッパーはこの世界では基本的に弱い部類に入るそうだ。


 転生組で良かったと喜ぶべきか。


 でも転生するってことは幼児期間があるってことで、その間に命の危機に遭うと抵抗空しく死んじゃいそうだよな。2歳を前にして並の人間相手なら負けない俺みたいなふざけた存在は別にして。


「テラーズにはどれくらいの人がいるの?」

「正確な人数は機密で私たちみたいな下っ端には公開されてないの。転生、トリップ、召喚と、その来訪種類を問わないで計算すると一ヶ月に数人はこっちにやってきてるらしいけど、こっちに適応して5年以上生きていられる人はその半分くらいだと言われてるわね」

「うはぁ……」


 死亡率高すぎィ!


 そう考えるとこっちに来てもう数年は生き残っているこの3人衆は結構優秀なんじゃないか?


「テラーズが死ぬ一番の理由が、自惚れね。異世界に来て魔法なんかを使えるようになると自分が物語の主人公になったと勘違いする人が多くてね。言って聞く人はそもそも身を弁えてるし」

「あー、なんとなくわかるかも」


 無双は夢だよな。


 戦場でいくら無双できたところで人間社会であっさり毒殺されそうな気もするけど。

 HPやVITと毒耐性は別もんだろうし。


 ……いや、少しは関係するのか?


 まぁ、そんなことはどうでもいい。

 いま気にしてもどうなるものでもないし。


「『無双したけりゃRPG持ってこい』っていうのがうちの組長の言葉よ。向こうじゃそんなに意識しなかったけど、こっちのファンタジーにはピッタリな名前よね、RPG」

「破壊の杖、ね」

「あら、フェリちゃんってばゼロ世代なの?」

「……ノーコメントなの」


 あれはM72 LAWだという細かいことは突っ込まないが。


 冗談を交えつつ、テラーズのこともいくらか聞いておく。


 そして。唐突に、ベルフェリ様が目を覚ましそうな気配。

 ベル様は低血圧だから朝は弱いはずなのに今日に限ってなんでこんな早くに起きられるんだ?


 まぁ、理由はなんであれ、さっさと動かないと後が怖い。


「スーサン、朝ごはんの時間ですよー」


 お勉強タイムを中断し、ぐったりうつ伏せに寝ているスーサンを足蹴りして起こす。


「ぐぅ……」

「二度寝は許しまへんでー」


 げしげし。


「痛っ!? いまのは呻き声だっての!」

「知らない! ほらほら起きて起きて! ハリーハリーハリー!」


 がすがすと乱暴に蹴り急かす。

 腹が減った俺は暴君になるのだよ。

 だが、ベル様はもっと怖いぜ?


「今日の朝食はなんでしょー?」

「聞いて驚け見て二度驚け! 今日はなんと……パンとシチューだ!」


 昨日の晩と同じじゃねぇか!

 随分自信ありげに言うからどんなもんだと期待してたから驚いたわ。


「ふっふっふー。これを見るといい!」

「んぅ?」


 マーサンが鍋の蓋を取るとそこにあるのはシチューはシチューでも、


「ビーフシチュー?」

Exactly(イグザクトリィ)(そのとおり)!」

「驚いたっ!」

「でしょでしょ!」


 さっきからテンション高めのマーサンにも驚くが。

 だって、朝だぜ?

 なんで朝っぱらからそんなに元気なのさ?


「さあさあ、冷めないうちに召し上がれ~」

「いただきまーす!」

「……いただきます」

「俺の……分も、残して……ぐふっ」


 スーサンはまだ回復しきっていない様子。

 あれ。もしかしてヤーサンって意外と強いのか?


 ともあれ。

 楽しい美味しい朝食はスーサンの分を残して食べ終わった。


 さて。


 そろそろ運動したいな♪


次回こそはまともな戦闘シーンを……書けるかなぁ。

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