色彩図鑑
零れた吐息に
色があるなら、
きっとそれは
宵闇のマントを
切り取ったような
重く積もった
漆黒でしょう
溢れた孤独に
色があるなら、
きっとそれは
大海の絨毯を
染めるような
何処までも深い
紫紺でしょう
触れ合った指先に
色があるなら、
きっとそれは
幽遠のカーテンを
揺らすような
誰にも届かない
翡翠でしょう
音のない赦しに
色があるなら、
きっとそれは
東雲の外套を
そっと掴むような
春の夢に似た
蘇芳でしょう
渇いた世界に
色があるなら、
きっとそれは
知らない言葉の
向かう先
色彩図鑑の
最後の一枚