第七話 音春菖蒲
いつも笑顔のキミ
誰のお願いでも一つ返事で"OK"をだすキミ
キミはどんなに大きくて広いココロを持っているのだろう
★葵
すべての授業が終わり背伸びをしていると百合がオレの肩を叩く。
「今日も仲間集めか?」
「そうだね~! 今日は運動部じゃなくて文化部系を見て回ろうかと~。ね~百合君も付き合わない?」
「まあ、文化部なら。どんな部活があるのか少し興味がある」
百合は純粋な少年のようなキラキラとした笑顔をみせる。
百合は天文部に入ったらしいが星が好きなメンバーが揃ってはいるが皆が部室に集まっても各自、本を読んでいるか何か調べ物をしているかで活動というか会話などはないそうで珍しい星の観測や彗星が通るなどの一般人も興味があるようなイベントがある時、星についての語り合いがある時くらいしか基本参加していないようだ。そのため百合は帰宅部のように授業が終わると帰っていく。今日付き合ってくれるといったのはオレの様子がいつもと違うと感じて心配してくれているのだろう。
文化部の部室が並ぶ文化部棟を端から順番に回る。だいたいの文化部は席に座って個々に作業をしているという印象。公演系の吹奏楽部や軽音部などの部活は運動部のように激しい練習をしている様子だがスポーツに重ねるのは少し難しい。歩いているとテープから流れる音、パンっと畳を叩く音が聞こえてくる。音が聞こえてくる部屋に入ると一角に畳がひかれ、その上に正座をしてカルタ取りをしていた。テープから聞こえてくる音以外は静寂そのもので最初の一音でカルタをはらう。音の聞き分けと狙ったカルタを取る、先読みと俊敏な動き……。
これだ!!
オレたちはカルタ部の動きに目を奪われ、お互いに顔を見合わせる。百合もオレの思ったことと同じことを思ったようで百合は大きく頷く。とはいったものの非常に話しかけにくい雰囲気で部屋に一歩と足を踏み出そうとした瞬間、長い髪を一本にまとめた美少女のような綺麗な顔をした人がこちらに気が付く。背に入射光を背負い風で髪を靡かせる美少女男子。
「入部希望者ですか? それとも見学者ですか?」と天使のようなキラキラした笑顔で話しかけてくる美少女男子。
「えっと、見学者です。なんかカルタ取りというのを初めて見て……思わず見とれてしまって」
「そうなんですね! ありがとうございます! 是非、見学していってくださいね」
天使のような笑顔に天使のような優しい声。男子なのに綺麗すぎて少し見惚れてしまう。
「あなたは……羽柴君でしたよね。入学式の時に挨拶していた方」と口元で人差し指を立て、ウインクをする美少女男子。美少女男子くん……君は……アイドルか……。
「はい。一年一組の羽柴葵といいます」
「わたしは、同じクラスの音春菖蒲といいます。どうぞよろしくお願いします」
菖蒲は美しい正座をしてからゆっくりと頭を下げる。
「ご丁寧に……」とつられて立ったまま、深々と頭を下げてみる。
「え? 同じクラス?」
「はい、同じクラスですよ。羽柴君とも星咲君とも」
「あ、いつも眼鏡をかけて三つ編みをしている……」
百合は菖蒲のことを知っているようだがオレは知らない……。
「はい、それがわたしです。近視なもので普段は瓶底みたいな眼鏡をしています」
「あ~。……いたような気がする……」
「おい、羽柴……失礼だぞ」
「存在感が薄くてすみません」と菖蒲は苦笑いをする。
百合はオレの顔をじっと見ている……そうだ、本題を忘れていた。
「あ、えっと……実は……アンバト部に入ってくれるメンバーを探していて……突然の話ではあるんだけど音春さんをスカウトしたいなと……」
街で偶然出会った人を突然ナンパしたような状態。明らかに不審者そのものである。自分でも変なことをいったなと思い、少し恥ずかしくなり頭を上げられずにいる。きっとドン引きされただろう。そう思っていると……。
「面白そうですね! アンバトというものがよくわかりませんが、わたしに出来ることがあるようでしたらお手伝いしますよ?」
「え、本当ですか?」
「はい、でも少々お聞きしたいのですが……アンバトというものが存じ上げませんので、ご説明いただけると嬉しいです。あと、わたしにどのようなことをお求めになっているかも教えていただけますと……」
「あ、えっと……その……」
入部の了承を得たものの、具体的なことを実は考えておらず、しどろもどろになってしまう。オレが言葉に詰まっていると百合が代わりに話し出す。
「入部の件、検討していただきありがとうございます。詳しい内容に関しては後日また話しに来ます。というか教室で話します」
「はい! わかりました! よろしくお願いしますね」
百合は一礼をし、オレの腕を掴み教室を出ていく。そしてそのまま文化棟を後にする。
「おい、羽柴……まさか今まで何も考えずに部活を作ろうとしていたのか?」
百合は少しムッとした表情でオレの目を見る。
「人を……集めることだけに夢中になっていて、具体的にどうするかまで考えていなかった……あ、でも構想はあって……」
「アホなのか……先ずはアンバトの説明だろ? あとはどんな活動をするか明確にしないと伝わらないし、スカウトにいったとしてその相手に何をしてほしいかちゃんと伝えないと」
「ははは、本当だよな~オレ、本当にアホだ~」
「先ず、やらないといけないこと……焦っててすっかり忘れていたよね」
「そうそう~今更思ったんだけどさ~きっとみんな、アンバトがイマイチわからないと思うんだよね、だから先ずは募集ポスターを作ってプロモーションをするのがいいかなと~」
「そうだな、そこからやるのがいいんじゃないか。ってか、今更だな……」
「ポスターだけじゃわからないと思うし、実際のアンバトの映像を見せるべきだよね~」
「いい考えだが、どうやって見せるんだ?」
「ふっふっふ~それは楽しみにしててよ~」
「ああ」
「よ~しっ! やるぞぉ~~~~~!」
オレは空を見上げ両手を大きく広げる。空は相変わらず雲一つない晴天。応援の紙吹雪のような桜の花びらが舞う。
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