終章 君も誰かのヒーロー
君のコトバ一つが
君のコウドウ一つが
君の存在そのものが
誰かに影響をしている
君も誰かのヒーロー
そして……
たくさんのありがとうを
★葵
数日後。空は雲一つない晴天。桜は満開で花びらたちが優雅に舞い踊る。鶯や鳥たちは気持ちようさそうに歌を奏でている。
今日はアンバト部のメンバーで学校近くの土手にある大きな桜の木の下で花見をすることになっている。オレと百合は飲み物を買う担当になっており、二人で買い物を終え花見会場へ向かう。
「百合、アンバト部に入ってくれてありがとう」
「ああ。本当は、もう少し前から考えていたんだが……色々とタイミングがというか……」
「あはは、そっか。でも入ってくれて本当に嬉しいよ。オレもずっと誘いたかったんだけど勇気というか、オレもタイミングがかもだけど……」
「葵が何度か誘ってくれていたから、そこで頭を縦に振ればすんだことなのにな……」
「オレもそこで様子を伺っていないで、強引にでも引っ張ればよかったなと思うよ。なんだかんだで、臆病というか……引っ込み思案なオレたちです」
「そうだな」
「そういえばさ、気になっていたんだけど……あの試合……なんで後半戦から参戦してくれたの?」
「ああ、あれは……前半戦の葵の様子が気になって……あの時はいつもと様子が違っていたから。でも、出たいって今更過ぎてと思っていたら……柊が交代しようって言ってくれたんだ。柊はああ見えて色々と見ているんだな。そして感謝している。もちろん柊だけじゃなくて、葵にもみんなにも……」
「そうだね、オレもみんなに感謝でいっぱいだよ。恩返ししていかないとね。そうだ……ずっと言おうと思っていたんだけど……。オレね、百合に初めて会ったのは去年のアーチェリー競技の個人戦なんだよね」
「それを言うなら、俺はお前を初めて見たのは二年前だぞ」
「え? どういうこと?」
オレたちはお互いが見た試合について語り合う。
「そっか、それはなんかすごい話だね」
「そうだな。お互いがお互いをか……奇跡のような話だな」
「オレの状況がそんなだったのもあって、百合がアーチェリーをしている、風を纏っている姿に一目惚れしたんだよ。百合って存在がオレの好きなことを思い出させてくれて、好きなことを再認識されてくれて、もう一度アンバトをやろうって思うきっかけになったんだ。そう、その時に百合はオレのヒーローになったんだ」
「俺も葵のアンバトをしている姿を見て憧れた。葵のアンバトを笑顔で楽しむ姿を見て、俺の好きを自由に楽しもうって思ったんだ。俺にとっては葵がヒーローだ」
オレたちは照れ笑いをしながらハイタッチをする。
誰かは誰かの影響を受けている。それは偉人の残したコトバだったり、芸能人の何気ない会話のコトバだったり、アーティーストの音や歌詞に込められたコトバだったり、漫画や小説、ドラマやアニメのキャラクターたちが言ったコトバやコウドウだったり、偶然に通り過ぎた見知らぬ人のコトバやコウドウだったり、家族や友達のコトバやコウドウだったりと色んな人から色んなものを受け取っている。
誰かは誰かのヒーローで、誰にでもヒーローはいて、意外にも自分が誰かのヒーローだったりする。
誰かに与える影響は……存在そのものだったり、行動だったり、言葉だったりと色々だけど……誰にでもどんなことも影響というのはしていて、それが大なり小なりと未来を変えたりする。偶然なのか必然なのか……それとも奇跡なのか。それに気が付くことができたら世界は大きく変化するに違いない。
自分に必要なキッカケは足元にたくさん落ちていてそれをみつけて拾っていくとその小さなキッカケが自分のプラスになっていく。誰がか言った言葉も誰かがおススメしてくれたモノもなんとなく耳に入って気になったら色々と手を出してみると未来は変化していくものである。
お互いの昔話をしながら花見会場に到着する。
ブルーシートだけ場所を陣取っており、まだ誰も到着していない。
「あ~天気もいいし、風も温かかくて、鳥の囀りは美しくて、色んな花の匂いもして、桜は満開で綺麗だし、今日は本当にお花見日和だね」と大の字になって手も足も伸ばしきる。
「ああ、いい陽気だ」
百合はオレの横に座って空を眺める。
「百合も寝転んでみなよ~いい景色が見えるよ」
「そうなのか」
百合も寝転び空を見上げる。
百合はその景色に感動して満々な笑みを浮かべる。
「……おい、そこのバカっぷる。いつまで二人の世界をつくっているんだ」
柊は眉間に皺を寄せ、オレと百合の顔を冷めた目で見下ろす。
「柊、お前はいつも……。柊も寝転んでみればわかるよ」
「……」
「いいからやってみなって」
柊も渋々寝転ぶ。
「……綺麗だ」
柊は綺麗な景色に感動したのか笑顔が溢れる。
「うふふ、みんなで日向ぼっこですか? 気持ちよさそうですね、わたしたちも寝転びましょうか」
「たまにはこういうのもいいかもな」
菖蒲と柾も寝転ぶ。
「も~シュウシュウってば僕を置いていくなんてひどいよ~。って、あれれ~みんなでお昼寝してるの~僕もお昼寝する~」
蘭は元気よく仰向けに寝転ぶ。
「お~気持ちよさそうっすね~」と朴も寝転ぶ。
「お、みんな揃ったね! 見てみて~桜の木にね、オレンジ色の鳥が止まってるんだけど、すごくいい声で鳴くんだよ。桜の木の隙間から見える青空とオレンジの鳥が鮮やかで綺麗な景色じゃない? 桜の花びらも舞ってるしさ、なんていうかまるで天国みたいな景色じゃない」
穏やかな風が通り抜ける。
オレの感想が面白かったらしく、一斉に笑いだす。
「途中まではよかったのに……天国って……」と百合は腹を抱えて笑う。
「葵、お前は天国にいったことがあるのか」と柊は真剣な顔で問いかけてきて。
「え、いったことあるんすか? すごいっす! こんな感じだったんっすか?」
朴は言葉をそのまま純粋に信じ好奇心でいっぱいと言う子供のようなキラキラした眼差しを向ける。
「お前らな~。モノの例えとかってわからないかな……。オレは真剣に……」
「ああ、わかっているよ、葵。みんなといるこの瞬間がこの景色が最高だってことだろ」
「百合……。そう……オレ、みんなと過ごしている今が本当に楽しくて幸せだって思っている。みんな、本当にありがとう。一緒にアンバトをやってくれて、一緒に居てくれて、一緒に手を繋いでくれて……本当にありがとう」
「こちらこそ、ありがとう……葵」
オレの伸ばした右手に手を重ねる百合。
「ありがとう」
オレの伸ばした左手に手を重ねる柊。
「ありがとうございます」
オレの伸ばした右手に手を重ねる菖蒲。
「ありがとう」
オレの伸ばした右手に手を重ねる柾。
「ありがとぉ~」
オレの伸ばした左手に手を重ねる蘭。
「ありがとうっす」
オレの伸ばした左手に手を重ねる朴。
大きな風が吹き、桜の花びらが舞い踊る。
お読みいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願い致します!




