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第六十五話 オレのヒーロー

 ずっとずっと待っていたよ

 オレの手を取ってくれるのを

 

 ありがとう

 オレのヒーロー

★葵


「そういえばさ、葵。途中から心ここにあらずだったでしょ? チームの現状ちゃんと把握している? 自分さえなんて考えはチーム戦には向いてないし、リーダーがしっかりしていないとメンバーも全力で戦えないよ。これはあくまでチーム戦だからね。葵がいくら強くても意味なんかないよ。チーム戦を本気でやりたいならメンバーのこと考えないとね。だからダメなんだよ」と兄貴は冷たい視線を送りながらため息をつき、去っていく。


 チームの現状……自分のことでいっぱいいっぱいになりすぎてすっかり忘れていた……。


「百合君、ごめん……現在の状況を教えてくれる」

「ああ、状況は……こちらは葵がカラーを二つ受けて、菖蒲、柾がカラーを一つずつ受けている。逆に柚と潮にカラーを二つずつ当てているから、後半戦で柚と潮にあと一つずつカラーを当てれば二人は失格となる」

「柚と潮から二つずつカラーが取れたのは、二人が菖蒲や柾に攻撃を仕掛けた時に朴と柊が当てたって感じってことか」

「ああ、そういうことだ」

「はあ……オレは自分のことばかりで戦略も立てられずこの現状か……みんな、ごめん。本当にごめん」

「大丈夫ですよ、まだ後半戦があります!」

 菖蒲は荒い息をしながらも笑顔でガッツポーズをしてみせる。

「僕も音春君もまだまだこれからだ」

 柾も荒い息をしながらも微笑み、オレの肩を叩く。

「まだまだ暴れ足りないっす」

 朴は汗だくで息を荒くしながらも銃を構える。

「ここまで来たんだ……負けたくない」

 柊も汗だくで呼吸を整えながら、手裏剣を握り締める。

 みんなの様子を見ているとこの試合の激しさが感じられる。

 やっぱり兄貴たちのチームは強い。

「まだ後半戦があるんだ、今は反省会をする時じゃないだろ。後半戦に向けてどうするかを決めよう」

「そうだね、百合君の言う通りだ」

 待機場所に戻り後半戦の作戦を立て終えると、メンバー各々休憩を取り休んでいる。




 オレは先に試合会場に入りグラウンドに一人座り込む。

 空は雲一つない真っ青な空。太陽だけが眩しく煌々と光っている。心の空は黒い雲で覆われて今にも雨が降りそうだ。

 自分で見たもの、自分で聞いたもの、自分で受け取ったものをただ信じればいいだけなのに……なのに人の言葉を気にしてしまう。

 だいじょうぶ、自分を信じれば……。


 オレはこの試合で勝ちたいのか……

 なぜ勝ちにこだわる

 なぜ勝ちたい

 兄貴を見返したいのか

 百合に認めてもらいたいのか

 みんなと勝った気持ちを共有したいのか

 なぜだろう……

 どれかなのか

 全てなのか


 ああ……気持ちが迷子だ……


 オレは座ったまま空に手を伸ばす。目を閉じているのに涙が溢れてくる。


 人影が映り、オレの手に向かって手が伸ばされる。

 これは幻覚なのか……。

 その影はオレの手を優しく包み込む。


「葵、一緒に戦おう」

 その影の正体は……百合?

 アーチェリーを抱えた百合の姿がオレの目の前に……。

 やっぱり幻覚を見ているのか……ああ、もうここまで来ると重症だな……。

 願望が幻覚となって見えるなんて……。


 百合がオレの手を強く握る。

「葵……」

 ああ、苗字じゃなくて名前で呼んでくれている……嬉しいな。

「百合……待ってたよ」と百合の手を握り返す。

「俺にお前の背中を任せてくれ。葵を守るから」

 百合はそういって優しく微笑む。

 なんて都合のよい幻覚なんだろう。

「百合と一緒ならなんでもできそうだ。どこまででもいけそうだ」

「ああ、そうだな」

 掴んでいる手に温もりを感じる。

 これは夢なのに温度まで感じる?


「あと五分で後半戦を開始します」とアナウンスが流れる。


 これは現実なのか?


「いつまで座っているんだ? 葵リーダー」

 オレと百合の手の上に手を重ねる柾。

「みんなで力を合わせて勝ちましょう」

 柾の手の上に手を重ねる菖蒲。

「俺たちの実力みせつけてやろうっす」

 菖蒲の手の上に手を重ねる朴。

「俺たちの力はこんなもんじゃないだろ」

 ヘッドセットから柊の声が聞こえる。

「みんな~ファイトだよ」

 ヘッドセットから蘭の声が聞こえる。


 オレは一人じゃないんだ……そう……仲間がいる。

 そう……これは現実!

 一羽の鷲が鳴きながら風に乗って空高く飛んでいく。


「葵、行くぞ」

 百合がオレの手を引き、立ち上がらせてくれる。

 菖蒲、柾、朴、百合、オレの五人で円陣を組み、手を重ねる。

「よっしゃ~! 後半戦、気合入れて行こうぜ! 勝つぞ!!」と大きな声で掛け声を掛ける。

「おー」と他のメンバーもオレに負けない大きな声をあげる。

お読みいただきありがとうございました!

次回もよろしくお願い致します!

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