表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/69

第五十九話 Happy Birthday

 生まれてきてくれてありがとう

 出逢ってくれてありがとう


 キミという存在があるからこそ"今"のオレがあるんだよ

☆百合


 俺と羽柴は屋上へ向かう。一歩先を歩いていた羽柴が屋上前のドアの前で足を止める。

「百合君、ドアを開けて」

「ああ」

 ドアを開けると電飾で飾り付けられた空間が広がっていた。

「ハッピーバースデー、百合君」と羽柴は小さめのケーキの箱を手に持っている。

「覚えていてくれたんだな……ありがとう」

「開けてみて」

 自分が誕生日の主役かのように嬉しそうに目を輝かせる羽柴。

 箱を開けると小さなホールケーキが入っており、ケーキは周りを苺で囲まれ、二羽の青い鳥が手書きのハッピーバースデーと書かれたプレートを口で支えていた。

「なんか芸術的なケーキだな、こんなケーキをもらったのは初めてだよ、ありがとう」

「気に入ってくれた? よかった~あとこれはプレゼント」

 プレゼントは羽柴が普段身につけているネックレスと同じ翼のマークがついたキーホルダー。

「これって……」

「これね、オレが掘った型を使って作った手作りのキーホルダーなんだ。気に入ってもらえるかな……」

 羽柴は少し不安げな表情をしている。

「ありがとう、気になっていたんだあの翼のやつ」

「え、そうなの? 早く言ってくれればよかったのに」

 羽柴は俺にくれたものと同じキーホルダーをポケットから出す。

「実はお揃いで作っちゃったんだ……嫌だったかな……」

「別にかまわないよ」

「へへ、ありがとう」と羽柴は照れ笑いをする。

「あ、そうだ~折角屋上に来たことだしメインの星を見ないとね~」と羽柴は電飾と電灯を全て消す。

 俺たちは仰向けになり夜空をみる。

「やっぱり、冬の空は澄んでいて、星がどの季節よりも綺麗に見えるね」

「そうだな、俺は冬の季節が一番好きだ」

「星が綺麗に見えるから?」

「それもあるけど、プレアデス星団もよく見えるようになるし……あと……」

「確かにスバルが一番よく見えるのはこの時期だね。……あと?」

「……雪も降るし」

「え? 雪?」と羽柴は一瞬驚き「百合君、雪が好きなの? 子供みたいだね」とクスクスと笑う。

「うるさい……そんなんじゃない。雪の降る空とか空気とか雰囲気とか匂いとか結晶とか……」

「うんうん、わかるよ。百合君はたまにしか起きない自然が運んでくるものが好きなんだよね。偶然に起こりうることに魅力を感じるんだよね」

「まあ、そういう感じだ……」

「偶然か~。オレたちがここの高校に入ったのも~アンバト部ができたのも~みんなが揃ったのも偶然なのかな~」

「そうだな、偶然とかすごいものだな」

「……偶然じゃなくて必然だったらよかったのにな」

「それは……羽柴自身の願いか」

「さて、どうでしょう」

「自分から言っておいて……なんだそれは」

 羽柴は言葉が少ない俺の言いたいことをすぐ理解してくれる……俺は羽柴のことをどこまで理解しているのだろうか……出来ているのだろうか……。


 それにしても……今日の誕生日は今までの誕生日の中で一番嬉しい。俺の誕生日はクリスマス近くだからいつもサンタやチョコの家がのった、印刷された『ハッピーバースデー』が書かれたプレートが置かれたケーキしか貰ったことしかなかった。プレゼントもいつもサンタの絵がかかれた赤い包装紙。親も友達もそんなどうでもいいことは気にならないからサンタがついたものをくれていたのだろう。もらえるだけでもちろん嬉しいし感謝している。けど、本当は……我侭ではあるけど、クリスマスより誕生日がメインで祝って欲しかったと子供の時は思ったものだ。サンタは嫌いじゃないけど正直、誕生日の邪魔をするライバルに思っていた。子供っぽい感情かもしれないけど自分の誕生日がサンタに奪われるのは子供心に嬉しくはなかった。だって、友達は誕生日用の包装紙にケーキは手書きの誕生日プレートがのっているのだからいつも羨ましく思っていた。まさか今になって理想の誕生日が来るなんてな。


「あ、流れ星!」と羽柴は流れ星を指差す。

 流れ星は見えたと思うと願う時間もなく、スっと消滅していった。

「綺麗だな、願い事はできたか」

「あ~また願い事を言う間もなかった。でも流れ星が見られただけでもラッキーだしいっか。百合君は願い事できた?」

「……どうだろうな」

「え~どっちだよ。もう一回、流れ星こい!」と羽柴は両手を大きく空に向かって広げる。俺も真似して片手を空に向かってあげる。


 俺の願いは……

 もし可能なら羽柴と一緒にアンバトの試合に出てみたい……。

 あの時から羽柴からもらいっぱなしのものを……お返ししたい。

 そしてたくさんの感謝の気持ちを言葉にしてちゃんと伝えたい。


 ありがとう、俺のヒーロー。





★葵


 オレの願いは……

 百合と一緒にアンバトのチーム戦に出ること……。

 一緒に青春したいな……もっともっとたくさん話もしたいな……。

 あの時からの……ありがとうをいっぱい伝えたいよ……。


 ありがとう、オレのヒーロー。



 そして……

 生まれてきてくれてありがとう。

 出逢ってくれてありがとう。

 キミという存在があるからこそ"今"のオレがあるんだよ。

お読みいただきありがとうございました!

次回もよろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ