第五十八話 Christmas
子供の頃は良い子にしていれば
サンタクロースからプレゼントが
もらえると思っていた
少し大人になって
サンタクロースは誰からプレゼントを
もらえるのだろうと考えるようになった
だからオレは
サンタクロースがほしいものを
プレゼントできる人になりたいと思った
★葵
二学期最後の日、部室でクリスマス会を行うこととなった。
「今日は待ちに待った~クリスマス会だよ~」
サンタが持っていそうな大きな袋を持って元気よく部室に入ってくる胡蝶蘭。
華奢な女の子にしか見えない蘭は自分のことを理解してなのかサンタ風のミニスカートワンピースと黒のタイツを履き登場する。
蘭は新人戦の後にアンバト部のマネージャーとして入った新入部員である。新人戦の模様が校内新聞部に特集され、アンバト部が二次元部やコスプレ部と勘違いした……元被服部一年の蘭はユニフォームのサンプルを持参し入部してきた。断る理由も特になかったので雑用をやってもらいながら、作りたいというユニフォームを制作してもらっている。ユニフォームに関しては柊と討論していたようだが柊がまるめこまれた形で蘭のアイディアのみで作られることとなったようだ。どんなものができあがるか正直、少し心配ではあるが……。
「はい! クリスマス会なので~先ずは雰囲気作りの為にみんなでコスプレしよ~」と蘭は大きな袋からサンタ衣装を取り出す。蘭以外のメンバーは蘭のテンションについて行けずポカーンとしているが、蘭は気にせず一人一人にサンタ衣装を配り始める。
「はい! まず~ナオっちには、サンタの衣装」
朴にはごく普通のサンタクロースの上下の服が渡される。
「お! いいっすね! すぐ着替えるっす」
朴は嬉しそうにサンタの衣装を受け取り、着替え始める。
「シュウシュウはね……これ!」
柊にはトナカイの着ぐるみパジャマが渡される。
「なぜ、俺はトナカイなんだ……」
柊は根っからの主人公気質のためサブキャラであるトナカイの服を渡され動揺している。
「だって~手足がスラーっと長い感じのトナカイってかっこいいと思うんだよ~。これはね、シュウシュウにしか着こなせないんだよ~」と蘭はウインクをする。
トナカイの着ぐるみパジャマは着ぐるみだけあり手足が短い見た目をしているが蘭はそれを柊なら柊しか着こなせないと言わんばかりに話していることに感心してしまう。そして蘭はわかっているのだ。柊が単純で褒めればよいことを……。
「そうか。俺にしか……。うむ」と言って柊は着替えはじめる。
おい……柊。なんでお前はいつもそう単純なんだ……それはどう見てもお笑い要員だろう。
「あやちゃんはね、ウサ耳のサンタさんで。ま~くんはね、トナカイ耳のサンタさん。ユリリンはね、雪だるまサンタさんだよ」
菖蒲の服はうさ耳サンタではなくウサギの着ぐるみパジャマにサンタの帽子を被せたものだし、柾の服は白髭付きのサンタ上下にサンタの帽子からトナカイの耳が生えているし、百合の雪だるまはサンタ要素無しの真っ白な着ぐるみパジャマだし……蘭のチョイスはなんだろうか……。
「うふふ。可愛いですね。ありがとうございます」
菖蒲はニコニコ笑顔で受け取り着替えはじめる。
「なんでサンタとトナカイをコラボしたんだ……。これはキメラなのか? 意味がわからない……」
柾はバカ真面目過ぎるため人間にトナカイの耳が生えたと想像しているようだ。いや、これはただの衣装であって、キメラとかそういうものじゃないからな。百合は……無表情で雪だるまの着ぐるみを広げている。
「で、アオくんには……これ~」
百合とお揃いの雪だるまの着ぐるみを渡される。
「ほう。百合君と同じ雪だるま……ですか」
「うん、だって二人は仲良しこよしだし~お揃いがいいかなって思って~」
「はあ……それはお気遣いどうも」とさすがのオレも苦笑いをしてしまう。
百合の方を向くと……冷めた目でオレを見ている。
「えっと……折角だし着ようか」と百合に声を掛けてみるが「俺は着ない……」と少し怒った顔で目を逸らされてしまう。
「ユリリン、大丈夫だよ。可愛いよ~似合うよ~」と蘭は声のトーンをあげて言うと「大丈夫の意味がわからない……」と声のトーンをさげた百合が汚いものを持つかのように二本の指で雪だるまの着ぐるみをブラブラさせている。
「まあまあ……クリスマス会なんだし、せっかく用意してくれたし着替えて楽しもうよ~、ね?」
蘭は百合の両手を握り上目遣いで目を潤ませ見つめている。
「……俺にはその手は通じない」
「まあまあ、今回だけ! オレからもお願いだよ」と百合を説得することにする。
オレは今回だけお願いします! と何度も頭を下げる。
「仕方がない……」と百合はしぶしぶ雪だるまの着ぐるみを着る。
みんなの着替えが終わりスーパーで買ってきた惣菜、菖蒲が作ってきたホールのクリスマスケーキを広げクリスマス会をスタートさせる。
「やっぱクリスマスと言えば~マライアキャリーの『恋人たちのクリスマス』だよね~ということで音楽流すね~」と蘭はスマホで音楽を流しはじめる。
「その曲も有名だし好きだが、クリスマスソングといえば、やはり! ワム!の『Last Christmas』じゃないか」と柾。
「ま~くんは王道のが好きなんだね~みんなはどんなクリスマスソングが好き?」
「わたしはSEKAI NO OWARIの『silent』ですね」と菖蒲。
「僕も好き」
「俺はback numberの『クリスマスソング』っす」と朴。
「その曲も好き! でもナオっち、意外!」
「俺はTani Yuukiの『メニークリスマス』が好きだ」と柊。
「うんうん! いいよね~。でも、シュウシュウも意外な感じ」
「わかる、わかる! みんなが選んだ曲もすごくいいけどさ! オレはやっぱELLEGARDENの『サンタクロース』が一番好きだな」
「あ、俺も!」と百合が手を上げる。
「え? 百合君も? エルレの曲、知っているの?」
「親がよく聴いていたから。あの不器用なサンタがなんかいいよな」
「そうそう! 大好きな人に千個のプレゼント用意するところなんか可愛いなって。でもステキでカッコイイなって。でも最後のプレゼントのところね、いいよね」
「サンタなのにプレゼントほしがっちゃう、というか本当は大好きな人からのそれがほしかったんだなってあの感じが愛おしい」
「ね、ね。細美サンタ、可愛いか! ってなる。でもその気持ちはよくわかる」
「は~い! ペアルック着て二人の世界をつくらないでくださ~い! ということで、そろそろ~プレゼント交換しな~い?」
蘭は自分が用意したプレゼントの袋を高々と上げてアピールをする。
「そうだね、やろっか」
各々、用意したプレゼントを手元に用意する。そして輪になりシャッフルしたプレゼントを時計回りに回していく。
「プレゼントの中身はどんなかな~どんなかな~」
蘭は楽しそうに歌いだす。今回は蘭の歌が終わったところでプレゼントを受け取るというルールらしい。
「先ずは~僕からね。これは~誰からのかな~」
蘭の袋には握力を鍛える筋トレグッズやバランスを鍛える筋トレグッズなどが入っている。
「それは、僕からのプレゼントだ」
柾はプレゼントに自信があるのか得意げな顔をしメガネをクイッと上げる。それに対して蘭は……期待外れすぎたのか目に光がなく死んだ魚のような目をしている。まあ蘭はマネージャーだし、筋トレより美容に興味がありそうだものな。
「う~ん……僕は華奢のままでいいんだけどな~大事にお部屋に飾るね」
部屋に飾るって……やはり使う気はないんだな。
柾は蘭にプレゼントが喜んでもらえず落ち込んでしまう。
「じゃあ、次は俺が開けるっす。何が出るかな~」
朴の袋には忍者のコスプレセットと手裏剣が入っている。
「どうだ? 気に入っただろ?」と柊は自信満々にニヤけている。
「かっこいいっすね! 今すぐ着替えるっす」と朴は嬉しそうに忍者コスに着替えはじめる。
「喜んでもらえたようで、俺も嬉しいぞ。では、俺も中身を確認しよう」
柊の袋にはアーミーの上下の服とおもちゃの銃が入っている。
お前ら……中身が単純すぎるだろう。
「柊、どうっすか? アーミーセット、気に入ってもらえたっすか?」
朴は目をキラキラと輝かせ柊を見つめる。
「……」
柊は真顔でアーミー服を広げたまま動かない。
なんだ? 柊……気に入らなかったのか?
「たまにはこういうのもいいものだな。俺も着替えよう」
柊は嬉しそうに目を輝かせて着替えはじめる。
そうか……気に入ったのか。
「それでは僕も中身の確認を……」
柾の袋の中には可愛い手作りのお菓子と手作りの和風の小物入れが入っている。
「気に入ってもらえるといいのですが……」と菖蒲は手を合わせ不安そうな表情をみせる。
「音春君のプレゼントなんて一番の当たりじゃないか! ありがとう、嬉しいよ。あと、この小物入れは早速使わせてもらおう」
「喜んでもらえて光栄です、ありがとうございます」と菖蒲は天使のような笑顔で微笑む。
「それでは、わたしもプレゼント開けさせていただきます」
菖蒲の袋の中には蘭が手作りしたクマのキーホルダーが入っている。
「あ、それね~僕が愛をこめて~手作りしたんだよ。可愛いでしょう」
「はい、とっても可愛いです! 通学用カバンにつけさせていただきますね」
「あやちゃん、ありがと~大好き~」と蘭は嬉しそうに菖蒲に抱きつく。
「あとは俺たちだけ……というか残りのもお互いのモノか」
「あ、本当だ……。えっと、じゃあオレが先に開けていい?」
「ああ」
オレは百合からのプレゼントを開ける。中身は家庭用のプラネタリウム。百合らしいプレゼントだ。というか、百合も単純なような……いやいや! すごく嬉しい!
「百合君らしいプレゼントだね。オレも星が好きだから嬉しいよ!」
「ごめん、今までプレゼント交換とかやったことなくて。何を用意していいかわからなくて……色々と考えたけど、結局……自分がいいと思ったものを用意してしまった」
「あはは、百合君、オレもだよ。オレもプレゼント交換とかやったことなくてすごく悩んだよね。オレのプレゼント……気に入ってもらえるといいんだけど……」
オレのプレゼントの中身は万華鏡と手作りのブレスレットだ。プレゼント交換を今までしたことがなく色々と考えた結果……光源や覗くたびに景色が変化する万華鏡と光源で色が変わって見えるアレキサンドライトを使ったブレスレットを作ってみた。筋トレグッズにするのが無難かとは思ったが他のメンバーも同じことを考えるだろうと思い、オレらしいプレゼントを考えてみた。正直、相手のことを考えるのではなく自己満足に近い感じにはなってしまったのだが、その方がオレらしさは伝わるだろうと思った。偶然にも百合に渡って嬉しいな。
「羽柴らしいな。ありがとう」
百合にはきっと説明しなくてもこのプレゼントを選んだ理由は伝わっていると思う。
百合はブレスレットを身に付ける。
「本当に仲がいいな……」と柊はオレと百合の間に入り肩を組む。
「お前と朴も仲良く趣味のシェアをしてるじゃないか……それにペアルックみたいにお互いの服を着ている感じになってるし、どうせ同じものが家にあるだろ。結果、ペアルックですよね?」
「ふん。俺と朴は男と男の熱い絆で結ばれている」
「オレと百合君も同じ感じなんだけども……まあそんなに暑苦しくはないけど」
「どの辺が同じだ? 全然違うだろ」
「もう……めんどくさいな」
柊は思い込みが激しいところが玉に瑕だよな……。
よし、面倒になってきたし無視しよう。
蘭は空気を読んだのか手をパンっと叩き、注目を集める。
「そうだ! ケーキ! ケーキ! あやちゃんの手作りケーキ早く食べたいよ~」
「おい、葵。話はまだ終わってないぞ」と柊は絡んでくるが「はいはい、蘭。ケーキ持ってきてくれる」と柊を無視することにする。
「ラジャー」と蘭は八等分にケーキカットし、ケーキを食べ始める。
他の食べ物も食べ終え、雑談を楽しむメンバーたち。
「百合君、ちょっと星を見に行かない」
「ああ」
オレと百合は屋上へ向かう。
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