第五十三話 消えた葵
人はかっこつけたがる
特に好きな人には
だからこんな姿……
キミにはみせたくなかったよ
☆百合
羽柴を置いて階段を降りる。何度も振り返りながら歩いたが羽柴が顔を上げることはなかった。
羽柴にどう接したらいい。わからなくて、傷ついた羽柴を一人置いてきてしまった……。やはり……羽柴のところへ戻ろう……。手をギュッと強く握り、振り返り階段を上がろうとすると「百合君、何処へ行くんだ」と響空君の声が聞こえ立ち止まる。
「響空君、ちょっと屋上で休憩しようかなと……」と羽柴がいる方へと向かう。
「今はやめたほうがいいんじゃないか」とそっと肩に手を置く響空。
「あ、片付け優先したほうがいいか、ごめん」と教室に向かおうとするとが響空が俺の手首を掴む。
「いや、そうじゃなくて」
「え、なに?」
「葵のところに行ことしたんだろ」
「……」
「さっきの話、少し聞いていた」
「……」
「百合君に用があって、付いて行ってた」
「……そうだったんだ」
「今は……葵一人にしておいた方がいいと思う」
「そう……だよな……」
目から涙が溢れてくる。響空は俺の頭を自分の胸に押し付ける。響空は言葉にするタイプではない。響空なりに心配してくれているのがわかった。少しの間、響空の胸で泣いた。
「響空君、ありがとう」
「ああ。綺麗な夕焼けだ」
「そうだな」
太陽が沈み、夜なる前の奇跡のような数十分、マジックアワー。赤とオレンジの温かい色と藍色と白の冷たい色のグラデーションがみせる昼と夜を繋ぐ空。そこに一羽のカラスが飛んでいく。強く吹いていた風はもう落ち着いている。
「そろそろ、教室に戻るか」
「そうだな。響空君、本当にありがとう」と言うと響空は頭を優しく撫でる。
教室の片付けは空が暗くまで続いたが羽柴が戻ってくることはなかった。片付けが終わり羽柴がいた屋上への階段や屋上にも行ってみたが姿はなかった。
学園祭明けの次の日。空は灰色一色で、ザーザー降りの雨。
今日は羽柴は休み。
そして次の日も学校に来なかった。
寮の部屋を訪ねてみたが学園祭があった日から部屋には戻っていないそうだ。どこへいったんだろう……羽柴がいなくなって数日が経つ。
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